時刻は七月三十日の十二時。花火大会翌日の正午だ。
「マタロウ! いるか! じゃまするぜ!」
勢いよく富谷マタロウ宅の門を開け放ち、小川は叫んだ。
平屋も、小川の勢いに押されるように、その後を追う。
「お前、それ、『磯野、野球しようぜ!』の中島くんのノリじゃ……」
玄関で呆れた顔で二人を見つめる生徒会長・富谷マタロウが眼鏡を光らせながらボヤく。
小川は小言を一切気にもせず、知った風にスタスタと自室へ向かっていく。平屋は一応、「お邪魔します」と一礼してから、家の中へ入った。
「なんだよ、小川。……ってかお前ら! ニンニクくさい!」
マタロウは、そう言って部屋の窓を全開にした。
「いや! さっき昼メシにラーメン食べてきたんだよな!」
小川が言い訳をすると、平屋は「うん」と頷く。
******
夏祭りの夜から、未知のLINEが既読にならない。
大人たちの警護のもと、未知は夏祭り会場を後にした。いつもの未知ならば、「もっと見たかった」とか「写真ください」とかすぐさまメッセージを送って来るはずなのだ。
それなのに、グループラインに上げた写真になんのリアクションもなく、個人ラインへも既読とならないのだ。疲れて寝たのかとも思ったが、その日の朝も何のリアクションもない。
なにかざわめくものを感じ、平屋と一緒に向かった警察署で、佐藤刑事からの言葉に頭から冷や水を浴びせられた。
未知がまだ帰宅していない――。
「君たちに、未知さんから連絡が来たら、すぐに伝えてくれ。
警察も全力で動いている。しかし、この件は他言無用だ。君たちも、下手に動くな」
厳しいその言葉に、二人は絶望した。
だが、小川ははがゆかった。このまま何もできずに時間だけ過ぎるのを待つことのほうがつらかった。
平屋も、自分が夏祭りを焚きつけたことで起きた最悪の結果に、ショックを隠せない。
警察署からうなだれて帰りながらも、二人はぽそりぽそりと話し出す。
「なあ、何かできることはないか?」
「……警察に、動くなと言われたでしょ」
「それはそうだ。……夏祭り会場に戻って捜査の邪魔をするなんてことはしちゃならない」
「先輩、何か含みがありますね。
つまり、それ以外の方法ならいいってこと?」
「何か浮かばないか? これまでのことで」
「未知は、何者かに連れ去られた。その手掛かりは、警察じゃない僕たちには探れない」
「俺たちが知ってるのは、未知が『ゲームの達人』の招待状を受け取っていたこと……それくらいだ。その招待状を受け取った奴から、なんとか未知にたどり着けないか?」
「招待状が誰に送られたかはこっちではわかんないんですよ。……いや、待てよ」
「どうした?」
「あの時、SNSで喜びの声を上げてた子たち……顔はスタンプで隠してましたけど、高偏差値の学校の制服を着てる子が多かったんです。K中学とかS付属中とか有名校の」
「ああ。『トップクラスの偏差値の奴らばっかりだ』ってお前言ってたな」
「そう。つまり、高偏差値の中学生が、同じ招待状を持ってる……可能性がある」
「高偏差値……」
「……高偏差値の友達。なんかアテ、あるんですか?」
高偏差値。
ならば、秀才といえば、うちの学校では、生徒会長のマタロウしか思いつかなかった。
二人はいつの間にか駆け足になっていた。
わずか血色の戻った二人の前に、ラーメン屋からのいい匂いがする。迷わず「腹が減ってはなんとやら!」と空腹を満たし、二人はここにいた。
******
「なあ、マタロウ、『ゲームの達人』の招待状のこと知ってるか?」
小川が真剣な顔で尋ねると、マタロウは悔しそうな顔で首を横に振った。
「知ってるよ。話題で持ちきりだったからな。でも、残念だけど俺のところには来てないぞ!」
そして、しぶしぶ、という感じで続ける。
「ただ、招待状をもらった奴なら知ってる」
「だれだよ!」
小川と平屋は、食い気味に身を乗り出す。
「夏休み前に、近隣の各学校の生徒会長が集まってシンポジウムがあったんだ。そこで隣の中学の生徒会長が、招待状をもらったって自慢してたんだよ」
「すげー、お前、そんなの行ってるのか」
小川が感心したように言うと、マタロウは少し得意げに胸を張る。
「まあな。
そいつ、いつも俺と模擬試験で県内の学年トップ争いしてるんだ。名前は小笠原。スマホで招待状を見せてもらったんだよ。確か……」
マタロウがスマホを取り出し、写真フォルダからその画像を探し始める。小川は焦れたようにマタロウの背中を叩いた。
「彼の連絡先は!?」
「その時、生徒会長同士でグループLINE組んだから、連絡先も知ってる。というか、どういうことだよ? 何かあったのか? 未知くんは?」
マタロウの率直な問いかけに、平屋は一瞬ためらったが、小川が口を開いた。
「……まあ、ちょっと大事件だよ。落ち着いたら話すから、とにかく、今すぐ小笠原くんと連絡を取りたい!」
「……分かった……」
マタロウは二人の状況をなんとなく理解したのか、黙ってスマホを二人に差し出した。
「お前たちの連絡先、彼に送っとくから」
******
小笠原 章(おがさわら あきら)君は、同じ市内の第二中学校三年生だった。
同じ市内で同じ学年で、富谷マタロウと双璧をなす秀才として、模擬試験のトップツーとして、二人の間では一年生の頃からどうやらライバル意識があったらしい。
小川と平屋は、マタロウから紹介された小笠原くんの家まで、バスを乗り継いで会いに行った。
家のほうは、いたって普通の家だったが、彼の部屋で彼と対面すると、彼は、まあ、ちょっとくせの強い、変わった子だった。
まず、今朝から鏡を見ていないであろう盛大な寝ぐせの付いたくせ毛。
色の褪せた紺色のTシャツに、同じく紺色のくたびれたスウェット。
部屋にかかっているハンガーもおんなじ色の服しかかかっていない。
そしてぎろりと大きな目で人を下からなめるように見る癖があり、その視線は、どこか挑発的で、それでいて探るような鋭さがあった。
部屋のほうも変わっていた。
いわゆるマンガ雑誌なんて一冊もなくて、ベッドの上にもなにやら難しそうな学術書。
机の上にも本。床にも積まれてあり本棚からあふれている状態だ。
窓際には中学生が持つには本格的な、大きめの天体望遠鏡が置いてあった。
見慣れたものと言えば、机の横のラックに置かれたボックス型の黒いリュックくらいだった。
そんな彼は学習椅子に座りながら、カーペットに直に座っている小川と平屋を、じろじろとぶしつけに眺める。
小川は、いつもの白Tシャツとデニムに、前がけのボディバック。平屋はくすみオレンジのオーバーシャツにカーゴパンツで、メッセンジャーバックからタブレットを取り出した。
なんとなく感じる威圧的なその目に、二人は委縮して正座していた。
「ふ――ん。富谷くんの友達にしては、リア充っぽいかな」
誰に聞かせるでもなく呟く。
小川が『ゲームの達人』の招待状について尋ねると、小笠原は、なぜマタロウに招待状が届かなかったのか、不思議がった。
「富谷くんも行けると思ってたから、がっかりだよ。優秀なのに、なんでだろうね」
まるで自分は優秀だから招待されるのは当然、という自負が見え隠れする。
「君は、そのゲームパーティーに行くのか?」
小川が尋ねると、小笠原はつまらない質問をするなというように即答した。
「もちろん。行くに決まっているじゃないか」
「なんでだ? 詐欺かもしれないとか、警戒しないのか?」
未知は警戒して参加を躊躇していたからだ。
「詐欺? そうは思わないね。
これだけ全国的に有名になっているサイトが、そんなことわざわざするとは思えないからね。まあ、主催が『ゲームの達人』の会社としか分からないけど。
そんなことはどうでもいい。僕が行く理由はただひとつ。……あの子に会えるかもしれないから」
小笠原は、そう言うと、わずかに顔を赤らめた。小川と平屋は、顔を見合わせる。
「あの子とは……?」
平屋が尋ねると、小笠原は、少し照れくさそうに答えた。
「ナイチンゲール……小夜啼鳥さん」
「え、あれ? もしかして、そいつって」
小川は、未知が使っていた学習アプリのハンドルネームを思い出し、驚きの声を上げた。
「彼女を知ってるのか!?」
小笠原は、かぶせ気味に声をあげる。
「知ってるもなにも、うちの部活の後輩だよ」
小川の返事も待たずに、
「そうなんだ!」と彼は嬉しそうに椅子から立ち上がって、饒舌に話し始めた。
「そのアプリは、登録者同士がハンドルネームでチャットできるんだ。それで、彼女とは、よくチャットで話すようになって、友達になったんだよ!」
「友達」と言って、小笠原は少し照れたように笑うのを、平屋は見逃さなかった。
そして、スマホの画面にナイチンゲール(小夜啼鳥)というハンドルネームが表示されたチャット画面を見せてくれた。
「俺のハンドルネームは、スパロウ。スズメだよ」
小川は、未知のスマホ画面を思い出し、驚きの声を上げた。あの異次元の点数を叩きだした奴だ。
「スパロウ……! トップランカーの!」
小笠原は少し自慢げな顔をした。
「それで、これは俺の予想なんだけど……」
小笠原は、少し声を潜めて続けた。
「このアプリに登録していることが、招待される条件なんじゃないかと思うんだ。だって、このアプリは、高偏差値の全国の優秀な中学生が使っているからね。
その中から、さらに優秀な子だけに招待状が送られる。そういう仕組みだと思う。だったら、アプリ登録していない富谷くんに招待状が届いていないのも納得だ」
小川は、小笠原の推測に、なるほど、とうなずいた。
「なあ、明日の集合は新宿バス乗り場なんだろ? 俺たちも一緒に乗り場まで行っていいか?」
小川がそう尋ねると、小笠原は「いいけど…」と少し戸惑ったように答えた。
「集合場所、そこじゃないぞ」
「マタロウ! いるか! じゃまするぜ!」
勢いよく富谷マタロウ宅の門を開け放ち、小川は叫んだ。
平屋も、小川の勢いに押されるように、その後を追う。
「お前、それ、『磯野、野球しようぜ!』の中島くんのノリじゃ……」
玄関で呆れた顔で二人を見つめる生徒会長・富谷マタロウが眼鏡を光らせながらボヤく。
小川は小言を一切気にもせず、知った風にスタスタと自室へ向かっていく。平屋は一応、「お邪魔します」と一礼してから、家の中へ入った。
「なんだよ、小川。……ってかお前ら! ニンニクくさい!」
マタロウは、そう言って部屋の窓を全開にした。
「いや! さっき昼メシにラーメン食べてきたんだよな!」
小川が言い訳をすると、平屋は「うん」と頷く。
******
夏祭りの夜から、未知のLINEが既読にならない。
大人たちの警護のもと、未知は夏祭り会場を後にした。いつもの未知ならば、「もっと見たかった」とか「写真ください」とかすぐさまメッセージを送って来るはずなのだ。
それなのに、グループラインに上げた写真になんのリアクションもなく、個人ラインへも既読とならないのだ。疲れて寝たのかとも思ったが、その日の朝も何のリアクションもない。
なにかざわめくものを感じ、平屋と一緒に向かった警察署で、佐藤刑事からの言葉に頭から冷や水を浴びせられた。
未知がまだ帰宅していない――。
「君たちに、未知さんから連絡が来たら、すぐに伝えてくれ。
警察も全力で動いている。しかし、この件は他言無用だ。君たちも、下手に動くな」
厳しいその言葉に、二人は絶望した。
だが、小川ははがゆかった。このまま何もできずに時間だけ過ぎるのを待つことのほうがつらかった。
平屋も、自分が夏祭りを焚きつけたことで起きた最悪の結果に、ショックを隠せない。
警察署からうなだれて帰りながらも、二人はぽそりぽそりと話し出す。
「なあ、何かできることはないか?」
「……警察に、動くなと言われたでしょ」
「それはそうだ。……夏祭り会場に戻って捜査の邪魔をするなんてことはしちゃならない」
「先輩、何か含みがありますね。
つまり、それ以外の方法ならいいってこと?」
「何か浮かばないか? これまでのことで」
「未知は、何者かに連れ去られた。その手掛かりは、警察じゃない僕たちには探れない」
「俺たちが知ってるのは、未知が『ゲームの達人』の招待状を受け取っていたこと……それくらいだ。その招待状を受け取った奴から、なんとか未知にたどり着けないか?」
「招待状が誰に送られたかはこっちではわかんないんですよ。……いや、待てよ」
「どうした?」
「あの時、SNSで喜びの声を上げてた子たち……顔はスタンプで隠してましたけど、高偏差値の学校の制服を着てる子が多かったんです。K中学とかS付属中とか有名校の」
「ああ。『トップクラスの偏差値の奴らばっかりだ』ってお前言ってたな」
「そう。つまり、高偏差値の中学生が、同じ招待状を持ってる……可能性がある」
「高偏差値……」
「……高偏差値の友達。なんかアテ、あるんですか?」
高偏差値。
ならば、秀才といえば、うちの学校では、生徒会長のマタロウしか思いつかなかった。
二人はいつの間にか駆け足になっていた。
わずか血色の戻った二人の前に、ラーメン屋からのいい匂いがする。迷わず「腹が減ってはなんとやら!」と空腹を満たし、二人はここにいた。
******
「なあ、マタロウ、『ゲームの達人』の招待状のこと知ってるか?」
小川が真剣な顔で尋ねると、マタロウは悔しそうな顔で首を横に振った。
「知ってるよ。話題で持ちきりだったからな。でも、残念だけど俺のところには来てないぞ!」
そして、しぶしぶ、という感じで続ける。
「ただ、招待状をもらった奴なら知ってる」
「だれだよ!」
小川と平屋は、食い気味に身を乗り出す。
「夏休み前に、近隣の各学校の生徒会長が集まってシンポジウムがあったんだ。そこで隣の中学の生徒会長が、招待状をもらったって自慢してたんだよ」
「すげー、お前、そんなの行ってるのか」
小川が感心したように言うと、マタロウは少し得意げに胸を張る。
「まあな。
そいつ、いつも俺と模擬試験で県内の学年トップ争いしてるんだ。名前は小笠原。スマホで招待状を見せてもらったんだよ。確か……」
マタロウがスマホを取り出し、写真フォルダからその画像を探し始める。小川は焦れたようにマタロウの背中を叩いた。
「彼の連絡先は!?」
「その時、生徒会長同士でグループLINE組んだから、連絡先も知ってる。というか、どういうことだよ? 何かあったのか? 未知くんは?」
マタロウの率直な問いかけに、平屋は一瞬ためらったが、小川が口を開いた。
「……まあ、ちょっと大事件だよ。落ち着いたら話すから、とにかく、今すぐ小笠原くんと連絡を取りたい!」
「……分かった……」
マタロウは二人の状況をなんとなく理解したのか、黙ってスマホを二人に差し出した。
「お前たちの連絡先、彼に送っとくから」
******
小笠原 章(おがさわら あきら)君は、同じ市内の第二中学校三年生だった。
同じ市内で同じ学年で、富谷マタロウと双璧をなす秀才として、模擬試験のトップツーとして、二人の間では一年生の頃からどうやらライバル意識があったらしい。
小川と平屋は、マタロウから紹介された小笠原くんの家まで、バスを乗り継いで会いに行った。
家のほうは、いたって普通の家だったが、彼の部屋で彼と対面すると、彼は、まあ、ちょっとくせの強い、変わった子だった。
まず、今朝から鏡を見ていないであろう盛大な寝ぐせの付いたくせ毛。
色の褪せた紺色のTシャツに、同じく紺色のくたびれたスウェット。
部屋にかかっているハンガーもおんなじ色の服しかかかっていない。
そしてぎろりと大きな目で人を下からなめるように見る癖があり、その視線は、どこか挑発的で、それでいて探るような鋭さがあった。
部屋のほうも変わっていた。
いわゆるマンガ雑誌なんて一冊もなくて、ベッドの上にもなにやら難しそうな学術書。
机の上にも本。床にも積まれてあり本棚からあふれている状態だ。
窓際には中学生が持つには本格的な、大きめの天体望遠鏡が置いてあった。
見慣れたものと言えば、机の横のラックに置かれたボックス型の黒いリュックくらいだった。
そんな彼は学習椅子に座りながら、カーペットに直に座っている小川と平屋を、じろじろとぶしつけに眺める。
小川は、いつもの白Tシャツとデニムに、前がけのボディバック。平屋はくすみオレンジのオーバーシャツにカーゴパンツで、メッセンジャーバックからタブレットを取り出した。
なんとなく感じる威圧的なその目に、二人は委縮して正座していた。
「ふ――ん。富谷くんの友達にしては、リア充っぽいかな」
誰に聞かせるでもなく呟く。
小川が『ゲームの達人』の招待状について尋ねると、小笠原は、なぜマタロウに招待状が届かなかったのか、不思議がった。
「富谷くんも行けると思ってたから、がっかりだよ。優秀なのに、なんでだろうね」
まるで自分は優秀だから招待されるのは当然、という自負が見え隠れする。
「君は、そのゲームパーティーに行くのか?」
小川が尋ねると、小笠原はつまらない質問をするなというように即答した。
「もちろん。行くに決まっているじゃないか」
「なんでだ? 詐欺かもしれないとか、警戒しないのか?」
未知は警戒して参加を躊躇していたからだ。
「詐欺? そうは思わないね。
これだけ全国的に有名になっているサイトが、そんなことわざわざするとは思えないからね。まあ、主催が『ゲームの達人』の会社としか分からないけど。
そんなことはどうでもいい。僕が行く理由はただひとつ。……あの子に会えるかもしれないから」
小笠原は、そう言うと、わずかに顔を赤らめた。小川と平屋は、顔を見合わせる。
「あの子とは……?」
平屋が尋ねると、小笠原は、少し照れくさそうに答えた。
「ナイチンゲール……小夜啼鳥さん」
「え、あれ? もしかして、そいつって」
小川は、未知が使っていた学習アプリのハンドルネームを思い出し、驚きの声を上げた。
「彼女を知ってるのか!?」
小笠原は、かぶせ気味に声をあげる。
「知ってるもなにも、うちの部活の後輩だよ」
小川の返事も待たずに、
「そうなんだ!」と彼は嬉しそうに椅子から立ち上がって、饒舌に話し始めた。
「そのアプリは、登録者同士がハンドルネームでチャットできるんだ。それで、彼女とは、よくチャットで話すようになって、友達になったんだよ!」
「友達」と言って、小笠原は少し照れたように笑うのを、平屋は見逃さなかった。
そして、スマホの画面にナイチンゲール(小夜啼鳥)というハンドルネームが表示されたチャット画面を見せてくれた。
「俺のハンドルネームは、スパロウ。スズメだよ」
小川は、未知のスマホ画面を思い出し、驚きの声を上げた。あの異次元の点数を叩きだした奴だ。
「スパロウ……! トップランカーの!」
小笠原は少し自慢げな顔をした。
「それで、これは俺の予想なんだけど……」
小笠原は、少し声を潜めて続けた。
「このアプリに登録していることが、招待される条件なんじゃないかと思うんだ。だって、このアプリは、高偏差値の全国の優秀な中学生が使っているからね。
その中から、さらに優秀な子だけに招待状が送られる。そういう仕組みだと思う。だったら、アプリ登録していない富谷くんに招待状が届いていないのも納得だ」
小川は、小笠原の推測に、なるほど、とうなずいた。
「なあ、明日の集合は新宿バス乗り場なんだろ? 俺たちも一緒に乗り場まで行っていいか?」
小川がそう尋ねると、小笠原は「いいけど…」と少し戸惑ったように答えた。
「集合場所、そこじゃないぞ」



