二月二十五日。
試験官をしなさい。
楽ならば簡単に金を稼げます。
もし苦でも哲学者になれます。
僕は富みたくないのです。
僕はソクラテスにもなりたくないのです。
僕は、貧乏な豚でいい。
僕の座右の銘は、座して死を待つより、出でて活路を見いだせ。だ。
活路活路。と、帰路につく。
帰路につく。
足取りが、重い。
僕には、活路がない。
生活手段がない。
就職先がない。
大学を卒業すれば。
ノーカラー。
そして。
そして、なにより。
生活目的がない。
人はパンのみにて生きるにあらず。
嘘だ。
人はパンのみにて生きる。
それも嘘だ。
人は。
空のみ。
トイレに行きたくなると困るから、ほとんど飲まなかった、ペットボトルのお茶を、飲み干す。
十七時を過ぎても、空はまだ、明るい。
日が段々と遅くなるのが恨めしい。
冬が遠くなっていく。
試験会場で、試験が終わって。
受験生は、僕を振り返らずに、みな去っていった。
合格にしろ、不合格にしろ。
彼らは、春に向かう。
冬のままでいさせてくれ。
蕾のままでいさせてくれ。
桜。咲くな。桜。散るな。
空は、まだ、明るい。
―――うーー夕方滅入るぅ。うーー夕方滅入る。
うーー気分がー夜に、深けーていくぅうう―――
スマホの着信音楽。
「日向さんだ」
くくっく。なに?
僕は声を出しちゃっているんだ?
嬉しくて? 待ち遠しくて?
違うさ。
ため息に似た、ひゅー。と。
いびきに似た、が。と。
ちょっと疲れた時に、出しやすい音なだけさ。
―――うーー夕方滅入るぅ。
『仕事で複数の携帯が必要だからさー、ちょっとでも、携帯代安くしたいんだよ
ー』と強引に僕と家族割を結んだ、日向さんだ。
うーー夕方滅入る。
元々は、上級生で。同級生になって、下級生になって。大学を満期退学して、再受験して。新入生になった、日向さんだ。
うーー気分がー夜に、
今回の試験官の仕事を中抜きのない時給で紹介してくれた。謎の島に、謎の荷物を運ぶ仕事を紹介してくれた、日向さんだ。
深けーていくぅうう―――
『知らせには、二つある。グッドニュースと、バッドニュースだ。俺の着メロ。バッドニュースをお前は聞いて電話に出るんだ。なら、俺からの知らせは、グッドニュースだ』
と、よく分からない理論で、着メロ(初めて聞いた時は、何の事か分からなかった。そんなことをたまに言う)を設定した、日向さんだ。
―――うーー夕方滅入るぅ。
スマホの画面を、上にスワイプ。
僕は応答する。誰からか、分かっているのに、
「たそがれ?」
試験官をしなさい。
楽ならば簡単に金を稼げます。
もし苦でも哲学者になれます。
僕は富みたくないのです。
僕はソクラテスにもなりたくないのです。
僕は、貧乏な豚でいい。
僕の座右の銘は、座して死を待つより、出でて活路を見いだせ。だ。
活路活路。と、帰路につく。
帰路につく。
足取りが、重い。
僕には、活路がない。
生活手段がない。
就職先がない。
大学を卒業すれば。
ノーカラー。
そして。
そして、なにより。
生活目的がない。
人はパンのみにて生きるにあらず。
嘘だ。
人はパンのみにて生きる。
それも嘘だ。
人は。
空のみ。
トイレに行きたくなると困るから、ほとんど飲まなかった、ペットボトルのお茶を、飲み干す。
十七時を過ぎても、空はまだ、明るい。
日が段々と遅くなるのが恨めしい。
冬が遠くなっていく。
試験会場で、試験が終わって。
受験生は、僕を振り返らずに、みな去っていった。
合格にしろ、不合格にしろ。
彼らは、春に向かう。
冬のままでいさせてくれ。
蕾のままでいさせてくれ。
桜。咲くな。桜。散るな。
空は、まだ、明るい。
―――うーー夕方滅入るぅ。うーー夕方滅入る。
うーー気分がー夜に、深けーていくぅうう―――
スマホの着信音楽。
「日向さんだ」
くくっく。なに?
僕は声を出しちゃっているんだ?
嬉しくて? 待ち遠しくて?
違うさ。
ため息に似た、ひゅー。と。
いびきに似た、が。と。
ちょっと疲れた時に、出しやすい音なだけさ。
―――うーー夕方滅入るぅ。
『仕事で複数の携帯が必要だからさー、ちょっとでも、携帯代安くしたいんだよ
ー』と強引に僕と家族割を結んだ、日向さんだ。
うーー夕方滅入る。
元々は、上級生で。同級生になって、下級生になって。大学を満期退学して、再受験して。新入生になった、日向さんだ。
うーー気分がー夜に、
今回の試験官の仕事を中抜きのない時給で紹介してくれた。謎の島に、謎の荷物を運ぶ仕事を紹介してくれた、日向さんだ。
深けーていくぅうう―――
『知らせには、二つある。グッドニュースと、バッドニュースだ。俺の着メロ。バッドニュースをお前は聞いて電話に出るんだ。なら、俺からの知らせは、グッドニュースだ』
と、よく分からない理論で、着メロ(初めて聞いた時は、何の事か分からなかった。そんなことをたまに言う)を設定した、日向さんだ。
―――うーー夕方滅入るぅ。
スマホの画面を、上にスワイプ。
僕は応答する。誰からか、分かっているのに、
「たそがれ?」



