アフタージャーニー

 もう、過去の話だ。

 でも、夜のベランダに侑樹がいた頃──仕事の愚痴も、空回りした話も、全部受け止めてくれた。
 夜の川沿いに連れ出して、ただ隣にいてくれた。冗談を言い合って、少しだけディープな話もした。 

 完璧じゃない私を、一度も否定しなかった。
 私が私らしくいられたのは、あの時間だった。
 
 胸の奥が熱を帯びる。
 あの日、グラスは粉々に砕けた。
 それでも、記憶の破片だけは、キラキラと光ったまま。

「……思い出しちゃったな」

 私はもう一度、デスクトップの画面に向かうと、ゆっくりとキーボードを打ち始める。

『完璧じゃなくていい。肩の力を抜いて、自分らしくいられる服』

 これが採用されるかどうかは、わからないけれど。それでいい。
 チームの一員として、しっかり進んでいけばいい。

 一時間後。

「よし。できたっ!」

 私はできあがった資料をメールに添付すると、送信ボタンを押した。
 胸の奥が、少しだけ軽くなった。