アフタージャーニー

 部屋に戻った。
 乾いた喉を潤そうと、キッチンのシンクに手をついた拍子に──指先の力がスッと抜けた。

 グラスが滑り落ちる。
 パリンという鋭い音がして、床に破片が飛び散った。

「……っ!」

 身を屈め破片を拾おうとして、触れた指先が止まる。
 侑樹が使っていたグラスだった。

 壊してしまった。私の手で。
 割れたものは、もう戻らないのに。
 
 粉々になった破片に、キッチンの明かりが反射する。

 ……全部、私のせいだ。

 よかれと思ってやったことが、全部、裏目に出た。
 発注も、モデルのことも。あの夜、侑樹を放っておけなかったことも。

 なにひとつ、うまくいかなかった。

「もう、何もしたくない。何もかも、嫌だ……」

 力ない呟きが、床に落ちる。
 グラスの破片は、形を失ってなお、キラキラと光ったまま。