アフタージャーニー

 廊下に出て、ショールームを兼ねた広いプレスルームに差しかかる。

 まるでハイファッションブランドの店内のようなそこは、今シーズンの人気アイテムがずらりと並ぶ。ユニセックスラインのサンプルもラックに並び──壁に埋め込まれたモニターでは、ムービーが繰り返し流れている。

 映像の中、夜明けの波打ち際を歩く侑樹と目が合った。

 グレーのセットアップの上に羽織った、オーバーサイズの白いシャツ。折り返した襟から覗くネイビーとシャーベットオレンジのストライプの裏地は、夜明けから抜き取った色みたいだ。

 ……こうやって形になったシーズンビジュアルと動画を初めて見た時、これが世界観なんだと、美しさに息を呑んだ。

 映像の中で侑樹が纏っている、この服の納期が遅れている。
 私が起こしたミスが、少しずつこのプロジェクトを侵食して──今、形になってしまった。
 
 完璧どころか、なにひとつうまくできていない。
 仕事も、あの日以来顔を合わせていない侑樹のことも。
  
「ダメだ……今は仕事に戻ろう」

 息が浅くなる。胸が苦しい。
 私は逃げるように、プレスルームを通り抜けた。