アフタージャーニー

「それって──献身じゃないよ」
 
 止めきれず口にしてしまった言葉に、侑樹が何か言いたげな目でこちらを見た。

「悠愛さんのためじゃなくて、自分のため……だよね? 献身じゃない、ただの罪悪感の塊だよ」

 わかっているはずなのに、苦しくて苦しくて。
 何かに救いを求めて、それでもどうしようもなく朝は来る。

 そんな夜を、侑樹は何度越えたんだろう。

 しばらく沈黙が落ちる。
 手に持ったグラスの中の氷が、小さく鳴った。 

「……そんなに冷静になれるなら、流されて軽々しく関係持つなよ」
 
 侑樹の顔が苦しげに歪む。
 そう吐き捨てた声は、まるで彼自身を責めているみたいで、胸の奥がヒリつく。
 
「私は、昨日の侑樹を見てたら……本当に、そばにいたいと思ったの、救いたかったの。ただ、それだけなんだよ……だって私は……」

 絞り出した言葉は掠れ、そこで途切れた。
 これ以上何か言ったら、全てが壊れてしまいそうだったから。

 侑樹は目を細め、私を見た。
 何かを言いかけて、ためらった唇を結ぶ。

 近くのサイドテーブルにグラスを置くと、静かに立ち上がった。
 その背中が、わずかに強張っていた。