アフタージャーニー

「さすがにキツいわ……」

 物足りない、格下。
 目を閉じると、突きつけられた言葉が耳鳴りになって襲いかかる。

 後ろから、誰かが駆け寄ってくる足音がした。

「……侑樹っ!」

 声の主が誰なのかぐらい、振り返らなくてもわかった。

「なんなんだよ。もう放っておけって言っただろ」

 振り返ると、こちらをジッと見つめる珠生の目は不安そうに揺れ、息は荒いまま。けれどもう、今夜は掻き乱されたくなくて、絞り出した声は、自分でも予想外に冷たかった。俺の言葉に、彼女は唇をキュッと噛みしめた。躍起になったのか、一歩も引かずこちらを見据える。

「侑樹の顔は、放っておいてって言ってない」

 ……これ以上、剥き出しの心を抉らないでほしかった。情けなさがジワジワと身体の内側から染み出していく。
 黙ったままの俺に、しばらくすると珠生がもう一度口を開いた。

「あのさ。もしかして……侑樹に夢を見せてって言ったの、悠愛さんなの?」

 終わらない今日という日の、トドメの一撃に頭が一瞬真っ白になった。
 逃げ場もない、咄嗟に何も返せない──そんな自分に苛立ちが募っていく。

 熱くなった喉の奥から迫り上がってきた「知るかよ。珠生には関係ないだろ」は、みっともない捨て台詞だった。
 
 沈黙が流れる。俺と珠生の間を通り過ぎていく川風は、きっと俺たちの境界線だ。互いの視線を感じても、これ以上は動けない距離でいい。それなのに何か言わなければ、俺のほうが壊れてしまいそうだった。

「じゃあなに。おまえが慰めてくれんの?」