アフタージャーニー

 誰かの声と共に、撮影スペースの入口の扉が開いた。
 早朝からの長丁場、誰よりも疲れているはずなのに。周囲に挨拶をする侑樹に、そんな気配は微塵もない。 

「あ、はーい。今行きます……撮影始まりそうなので、また」

 悠愛さんもスタッフに呼ばれ、私に軽く会釈すると歩き出した。
 ……侑樹の方へ。

「こんにちは、よろしくお願いします」

 声の主を、侑樹が振り向きざまに捉えた瞬間、彼の目が大きく見開かれ、表情が凍ったのがわかった。次の瞬間、何もなかったかのように「こちらこそ」と、挨拶を返す。

 ……悠愛さんの表情は、私からは見えなかった。

 私は侑樹のことを、ほんの少ししか知らない。
 彼に幼馴染がいた、ただそれだけのことだと思えばいい。

『幼馴染にさ……夢を見せてって言われたのに、何年も燻って……結局、消えた』

 なんでこういうことばかり、覚えているんだろう。
 よりによってこんな時に思い出すなんて、自分が嫌になる。

 夢を見せると約束した相手は、きっと悠愛さんだ。
 なのにどうして、そんな顔をするの。
 
 寂しさを閉じ込めた侑樹の瞳は、なにを見ているんだろう。

 ……私は、そこにいない。