アフタージャーニー

 シックなカラーのチェック生地に大胆なレースを貼り合わせた、コンパクトなサイズ感のトップスと、ローウエストのバレルシルエットのパンツ。最近発売されたばかりのそれは、色で季節を先取りした秋の始まりにぴったりの人気のセットアップだ。

 私が着ている服と、同じだ。私はネイビーで、彼女はブラウン。

 でも、全く違って見えるのは、色のせいだけじゃない。ネックレスの位置とデコルテの開き具合、髪の流れも、彼女は全てが計算されていた。自分のよさを余すことなく引き出せる人ができる着こなし。
 
 今日の撮影は長丁場だから、動きやすいコーデにしよう。そう思って選んだ、色違いのこの服が急にみずぼらしく感じられた。胸の奥がきゅっと縮んで、目を逸らしそうになる。

「待って。どこかで見たような……あ!」

 けれど、なんだか引っかかる。
 ディレクター達に挨拶をする彼女の後ろ姿を見ながら、私は記憶の糸を手繰り寄せた。

「あの! 芹沢と申します。午後の撮影もよろしくお願いします……えぇと、その。以前バーにいらっしゃいませんでしたか? 実は私、あそこでSTEALさんのサンプルコスメいただいて……」

「初めまして、藤倉悠愛(ふじくらはるあ)と申します。あぁ……蒼樹くんのバーですよね? あの店、オシャレなお客さん多いし。サンプル置かせてもらってよかったぁ」

 答え合わせのつもりで声をかけた。直接お礼を伝えられてよかったと話すと、彼女も「何かのご縁ですね」と笑顔を見せてくれた。

「よく行かれるんですか? 蒼樹さんに聞いたら、昔からの知り合いって言ってたので」
「たまにですよ。やだぁ、なに喋ったんだろ……蒼樹くんは、近所に住んでた幼馴染のお兄さんで」

 クスクス笑う姿ですら、悠愛さんは隙がない。

「蒼樹さんが幼馴染のお兄さんって……え? 待って」

 私も笑って返そうとして、喉がヒュッと鳴った。
 近所に住んでいたとか、幼馴染のお兄さんとか。それならパーツがひとつ足りない。

「午後の撮影のモデルを務めます、侑樹さん入られまーす!」