アフタージャーニー

 小さく息を吐くと、未読のメッセージをタップする。
 久しぶりに見るハングル文字で書かれた長文のメッセージは、韓国の事務所からの連絡だった。
 
 グループの正式解散。
 契約終了に伴う清算金の手続き案内。
 
 メンバーそれぞれの今後について。

 韓国人メンバーの誰かは兵役へ、誰かは音楽業界の裏方へ。
 外国人メンバーの誰かは、もう連絡が途絶えている。

 何度も指で画面をスクロールしながら、ひとつひとつ確認した。 

 デビュー以外なにひとつ自分を証明できなかった日々ですら、今となっては実態のない幻みたいだった。けれど文字として突きつけられると、自分の一部が剥がれ落ちていく気がした。

유주, 정말 고마워요!(侑樹、本当にありがとうね)

 メッセージに綴られた言葉に、最後なんだと理解した。 

「……本当に、何もかも終わったんだな」

 俺はスマホの画面を暗くすると、ポケットに戻す。
 ちゃぷんと静かに波打つ水面に目を向けると、そこに映る明かりがゆっくりと揺れては消えていく。

 ……ライトが消えた後の世界は、想像以上に静かだった。

 夢は終わった。
 だからもう、俺は二度と夢を見ない。

 そう自分に言い聞かせると、俺は静かに目を閉じた。