アフタージャーニー

 スマホを取りに、部屋に戻ろうとした足がピタリと止まった。
 
「私、連絡先すら知らない……」

 今夜だって別に約束したわけじゃない、お互いの生活だってある。

 誰かと会っているのかもしれない。
 友達と笑い合っているのかもしれない。

 恋人に慈しむような眼差しを向けているかもしれない。
 ……それは、いやだ。

 自分に言い聞かせようとして、胸の奥がチクチクと痛んだ。 
 どうしてこんなに、会いたくなってしまうんだろう。

 手を伸ばせば届きそうな距離にいるのに、どこまでも遠いまま。
 隣のベランダは、喧騒から切り離されたように静かで、暗い。