アフタージャーニー

「まぁ……肌荒れ厳禁だったから、気は遣ってて」
「化粧水とか、日本でも買えるやつなら教えてっ。侑樹みたいな透明感が私もほし──あ」

 当たり障りのない会話で、火照った頬をクールダウンさせないとって。侑樹の返答をなぞって口にした言葉に、ふと既視感を覚えた。なんだったかなと思考を張り巡らせれば、頭の片隅に残っていた、定例会議中のディレクター達の会話が蘇る。

『イメージビジュアルのメンズモデルなんですが、先方からキャンセルが……』
『嘘やろ? 透明感あって、コンセプトの世界観をちゃんと魅せられる子……』

 透明感に世界観、思わず「そうだ、あの話」と声が漏れた。閃いたアイデアを頭の中で想像しただけで、ビール缶を握りしめる手に熱が籠る。

「ねぇ。侑樹って、身長どのぐらい? コンポジットみたいなの、ないかな」

 彼なら、写真を撮られることに慣れているはずだ。もしかしたら、韓国アイドル時代にモデルの仕事だってしたかもしれない。私の唐突な質問に、彼は怪訝そうな顔をした。

「え? 176だけど……あっち(韓国)で知り合いのカメラマンに頼まれて撮った写真なら、その人のウェブに……って。いきなりなんだよ」
 
「見たい知りたい! スマホ持ってくるからちょっと待っててっ」

 興奮で声がうわずったまま、私はスマホを取りに部屋に戻った。背後から「先に説明しろよ」って声が聞こえたけれど、少しぐらい待っててほしい。

 それから。
 よかれと思って、一生懸命説明した。説得した。

「あのね。うちのブランドで、ユニセックスラインのメンズモデルを探してるんだ。コンセプトに合う人なかなかいなくて。よかったら……侑樹、推薦してみちゃダメかな?」 
 
 侑樹なら、きっと合う気がしたから。