深夜を回った頃、私は冷えたアイスココアの入ったマグカップを手に、ベランダへ出た。
終わりかけの梅雨に吹く生ぬるい風は、いつの間にか夏の気配をはらみ、真夜中の街を柔らかく包む。ベランダの手すりにもたれ、アイスココアを飲んでいると、隣のベランダから音がした。
「こんばんは、お隣さん」
ベランダに出てきた侑樹くんに声をかけると、彼はまだ湿った髪を掻きあげ、少し疲れた顔でこちらを見た。
「もう遅い時間だし、いると思わなかった」
「今夜ね、帰り遅かったしすぐ寝るつもりだったんだけど、お風呂入ったら目が覚めちゃって。そっちは?」
「俺も似たようなもん。最近あまり眠れなくてさ……諦めてシャワー浴びてきたとこ」
ふたり揃ってベランダに身を預けると、薄い壁を隔てた距離が自然と縮まった。Tシャツの胸元をつまみ「暑い」とパタパタとあおぐ彼から、ふわりと熟れた甘い果実の香りが漂ってくる。
「あぁ……私、疲れてる」
お風呂上がりの彼の無防備な姿に、安易にクラクラしそうになって、私はボソリ呟いた。でも、この心地のよさに浸っていたくて、私は眼下に広がる真夜中の街の明かりをぼんやりと見つめた。
私が手に持っていたグラスに気づいた彼が口を開く。
「てか。ベランダで夜中にひとりで酒飲んでるのかと思った」
「もー! 失礼だなぁ、これアイスココア」
「アルコール以外摂取したくないって、この前言ってたじゃん」
「それは言葉のアヤでしょっ。ストレス溜まってて……あ。侑樹くんも一緒に飲む?」
私の申し出に、彼は少し驚いた顔をした。けれど、今日も今日とて反射的にコクリと頷いたから「ちょっと待っててね」と伝えると、私は彼の分のアイスココアを取りに室内へ戻った。
終わりかけの梅雨に吹く生ぬるい風は、いつの間にか夏の気配をはらみ、真夜中の街を柔らかく包む。ベランダの手すりにもたれ、アイスココアを飲んでいると、隣のベランダから音がした。
「こんばんは、お隣さん」
ベランダに出てきた侑樹くんに声をかけると、彼はまだ湿った髪を掻きあげ、少し疲れた顔でこちらを見た。
「もう遅い時間だし、いると思わなかった」
「今夜ね、帰り遅かったしすぐ寝るつもりだったんだけど、お風呂入ったら目が覚めちゃって。そっちは?」
「俺も似たようなもん。最近あまり眠れなくてさ……諦めてシャワー浴びてきたとこ」
ふたり揃ってベランダに身を預けると、薄い壁を隔てた距離が自然と縮まった。Tシャツの胸元をつまみ「暑い」とパタパタとあおぐ彼から、ふわりと熟れた甘い果実の香りが漂ってくる。
「あぁ……私、疲れてる」
お風呂上がりの彼の無防備な姿に、安易にクラクラしそうになって、私はボソリ呟いた。でも、この心地のよさに浸っていたくて、私は眼下に広がる真夜中の街の明かりをぼんやりと見つめた。
私が手に持っていたグラスに気づいた彼が口を開く。
「てか。ベランダで夜中にひとりで酒飲んでるのかと思った」
「もー! 失礼だなぁ、これアイスココア」
「アルコール以外摂取したくないって、この前言ってたじゃん」
「それは言葉のアヤでしょっ。ストレス溜まってて……あ。侑樹くんも一緒に飲む?」
私の申し出に、彼は少し驚いた顔をした。けれど、今日も今日とて反射的にコクリと頷いたから「ちょっと待っててね」と伝えると、私は彼の分のアイスココアを取りに室内へ戻った。

