あやかしの癒し子〜祓い屋の出来損ないは、鬼の王の最愛〜

「――もう逃がさない」

 甘く低く、響く声。

 白銀の髪が、闇夜に揺れる。
 気づけば奈津は、その腕の中へ閉じ込められていた。
 
 息が触れるほど近い距離。

 見上げた先には、夜を溶かしたように深い紫の瞳がある。
 その瞳の中に、自分が映っていた。
 
「お前は、俺のものだ」

 紫の瞳が、熱を孕んで細められた。

 逃げられない。
 けれど、不思議と怖くはなかった。

 その瞳(紫の瞳)が私をとらえた時から、きっと――私の人生は始まった。