ブー、ブー、とスマホが着信を知らせている。
俺は壱哉の腕の中から、モゾモゾと這い出した。
「ん?誰からだろ……あっ」
起き上がろうとしたとき、後ろからがっしりと抱き込まれ、動きを封じられる。
「ちょっ、ちょっと!」
顔だけで振り返ると、壱哉の寝顔がすぐそこにあった。
朝の光に包まれたその整った顔は、幸せそうにむにゃむにゃと何か言っている。
俺はふっと笑って、その唇に軽くキスした。
自分勝手だけど、寮の部屋でもおはようのキスだけは許すことにしている。
日向に抜け穴をレクチャーしてもらったけど、これがけっこう難しくて、なかなかタイミングが合わないからだ。
そんなこんなしているうちに電話が切れた。
いいや、また後でかけ直そう。
俺は後ろを向いて、壱哉の頭を胸に抱えるようにして目を閉じる。
あぁ、幸せってこういうことだ。
季節は巡り、俺たちは高校2年生になった。
1年間で部屋替えのはずが、俺たちはまた同室に。
風の噂では、国立医学部を目指していて学校からの期待を背負う壱哉が、環境を変えたくないだのなんだのとワガママを言ったとかなんとか。
この話を俺にしてきたかじはじコンビは、呆れてため息をついていたけど、俺は内心嬉しかった。
壱哉に問いただしたら、「使えるものは使う」と大真面目な顔して言っていた。
「なぁ〜、なんでだよぉ」
「今日はもうしたの!」
「俺が意識ないときじゃん。それはノーカンでしょ」
目を覚ました壱哉にキスを迫られて、俺は顔を赤くした。
「お前が起きなかったからじゃん」
「ナツが寝てるときなら、何回もしてるし」
「は?」
思わぬ暴露に頬を引きつらせると、壱哉が「やばっ!」と言って、自分の口を両手で押さえた。
「だだだから、ノーカンだってばぁ」
くぐもった声で言う壱哉を、見上げるようにして睨む。
壱哉は成長著しく、俺より頭半分は背が高くなった。
顔の距離は遠くなったけど、全然問題なかったようで……
「ナツの上目遣いやばいぃぃ!可愛すぎる!え、ファンサ?」
さすが元オタクだ。
耳まで赤くして悶えている。
「もう!俺、ちょっと電話してくるから!」
壱哉を置いて部屋を出ていこうとすると、「ナツ、戻ってきたら絶対するからな!」という声が追いかけてくる。
だから、声でけぇーんだって!
「もしもし?母さん?」
『あ、なっちゃん!朝から電話しちゃってごめんねぇ。今日はお休みでしょ?』
いつもと同じ、のんびりした口調が返ってきて、ホッと息をつく。
「大丈夫だよ。どうしたの?」
『あのねぇ、えーとね、言いづらいんだけどねぇ……』
やけに言い淀む母さんの言葉の続きを、辛抱強く待った。
『お母さん、再婚することにしたの!』
「え?!」
思わぬ報告に戸惑うと同時に、喜びを確かに感じる。
「そっか、おめでとう」
『いいの?』
「いいよ。母さんが選んだ人なら」
『なっちゃん……ありがとう』
電話の向こうから鼻をすする音が聞こえて、俺の目頭も熱くなる。
「どんな人?」
『優しい人よ。それにかっこよくてね―――』
母さんの惚気話を聞いているうちに、俺も無性に話したくなってきた。
「……あのさ」
『ん?なあに?』
「実は俺も、紹介したい人がいるんだ」
「え?それって……」
俺はコクリと唾を飲み込んで、耳に当てたスマホをぎゅっと握りしめる。
母さんならきっと大丈夫。
もし分かってもらえなくたって、何回でも説明するんだ。
「母さん、俺の話、聞いてくれる?―――」
気づいたら1時間も電話していた。
部屋に戻ると、壱哉が心配そうな表情で駆け寄ってくる。
「ナツ?大丈夫?もしかして、泣いてた?」
俺の肩に手を置いて、おずおずと顔を覗き込んでくる、大好きな恋人。
「ちょっとね。母さんが、今度遊びにおいでだって」
俺はその首に腕を回して、とびきりの笑顔を見せた。
「え、それって……」
壱哉が目を見開く。
「俺たちのこと話した。俺が選んだ人なら認めるって言ってくれたよ」
そう言うと、眉尻を下げて「やった!いつ行く?明日?」とにこにこしている。
「気が早い!……ふふっ、しょうがないやつだなぁ。今日は特別にファンサしてやるよ」
一瞬で頬を染めた壱哉にキスすると、俺たちはしばらくそのまま抱き合っていた。
fin.
俺は壱哉の腕の中から、モゾモゾと這い出した。
「ん?誰からだろ……あっ」
起き上がろうとしたとき、後ろからがっしりと抱き込まれ、動きを封じられる。
「ちょっ、ちょっと!」
顔だけで振り返ると、壱哉の寝顔がすぐそこにあった。
朝の光に包まれたその整った顔は、幸せそうにむにゃむにゃと何か言っている。
俺はふっと笑って、その唇に軽くキスした。
自分勝手だけど、寮の部屋でもおはようのキスだけは許すことにしている。
日向に抜け穴をレクチャーしてもらったけど、これがけっこう難しくて、なかなかタイミングが合わないからだ。
そんなこんなしているうちに電話が切れた。
いいや、また後でかけ直そう。
俺は後ろを向いて、壱哉の頭を胸に抱えるようにして目を閉じる。
あぁ、幸せってこういうことだ。
季節は巡り、俺たちは高校2年生になった。
1年間で部屋替えのはずが、俺たちはまた同室に。
風の噂では、国立医学部を目指していて学校からの期待を背負う壱哉が、環境を変えたくないだのなんだのとワガママを言ったとかなんとか。
この話を俺にしてきたかじはじコンビは、呆れてため息をついていたけど、俺は内心嬉しかった。
壱哉に問いただしたら、「使えるものは使う」と大真面目な顔して言っていた。
「なぁ〜、なんでだよぉ」
「今日はもうしたの!」
「俺が意識ないときじゃん。それはノーカンでしょ」
目を覚ました壱哉にキスを迫られて、俺は顔を赤くした。
「お前が起きなかったからじゃん」
「ナツが寝てるときなら、何回もしてるし」
「は?」
思わぬ暴露に頬を引きつらせると、壱哉が「やばっ!」と言って、自分の口を両手で押さえた。
「だだだから、ノーカンだってばぁ」
くぐもった声で言う壱哉を、見上げるようにして睨む。
壱哉は成長著しく、俺より頭半分は背が高くなった。
顔の距離は遠くなったけど、全然問題なかったようで……
「ナツの上目遣いやばいぃぃ!可愛すぎる!え、ファンサ?」
さすが元オタクだ。
耳まで赤くして悶えている。
「もう!俺、ちょっと電話してくるから!」
壱哉を置いて部屋を出ていこうとすると、「ナツ、戻ってきたら絶対するからな!」という声が追いかけてくる。
だから、声でけぇーんだって!
「もしもし?母さん?」
『あ、なっちゃん!朝から電話しちゃってごめんねぇ。今日はお休みでしょ?』
いつもと同じ、のんびりした口調が返ってきて、ホッと息をつく。
「大丈夫だよ。どうしたの?」
『あのねぇ、えーとね、言いづらいんだけどねぇ……』
やけに言い淀む母さんの言葉の続きを、辛抱強く待った。
『お母さん、再婚することにしたの!』
「え?!」
思わぬ報告に戸惑うと同時に、喜びを確かに感じる。
「そっか、おめでとう」
『いいの?』
「いいよ。母さんが選んだ人なら」
『なっちゃん……ありがとう』
電話の向こうから鼻をすする音が聞こえて、俺の目頭も熱くなる。
「どんな人?」
『優しい人よ。それにかっこよくてね―――』
母さんの惚気話を聞いているうちに、俺も無性に話したくなってきた。
「……あのさ」
『ん?なあに?』
「実は俺も、紹介したい人がいるんだ」
「え?それって……」
俺はコクリと唾を飲み込んで、耳に当てたスマホをぎゅっと握りしめる。
母さんならきっと大丈夫。
もし分かってもらえなくたって、何回でも説明するんだ。
「母さん、俺の話、聞いてくれる?―――」
気づいたら1時間も電話していた。
部屋に戻ると、壱哉が心配そうな表情で駆け寄ってくる。
「ナツ?大丈夫?もしかして、泣いてた?」
俺の肩に手を置いて、おずおずと顔を覗き込んでくる、大好きな恋人。
「ちょっとね。母さんが、今度遊びにおいでだって」
俺はその首に腕を回して、とびきりの笑顔を見せた。
「え、それって……」
壱哉が目を見開く。
「俺たちのこと話した。俺が選んだ人なら認めるって言ってくれたよ」
そう言うと、眉尻を下げて「やった!いつ行く?明日?」とにこにこしている。
「気が早い!……ふふっ、しょうがないやつだなぁ。今日は特別にファンサしてやるよ」
一瞬で頬を染めた壱哉にキスすると、俺たちはしばらくそのまま抱き合っていた。
fin.

![[超短編]推し語りしてたら幼馴染に迫られた。](https://novema.jp/img/member/1396597/krbj6xtdrp-thumb.jpg)

