ルームメイトが俺のこと好きかもしれない。
先日からほのかに頭の中に浮上した考えから、逃れるように頭を振った。
でもでも!俺だって壱哉や鍛治原のこと可愛いと思うし、あざとポーズ禁止は俺が恥をかかないように言ったんだろうし、颯先輩のことは……よく分からないけど。
そうなのかもしれないと考える度、それを否定するような言葉が浮かんでくる。
壱哉にアプローチされたことはないけど、この前は妙に甘い空気だったような……。
後ろから抱きしめられ……いやいや、俺がまた逃げないように捕まえてただけ。
俺ってすぐ逃げるし。
……あぁ、これじゃ堂々巡りだ。
あの後、ベッドから出てきた壱哉は、拍子抜けするほど普通で、いつも通り一緒に夕飯を食べに行った。
俺がそんなこと考えるなんて、自意識過剰なんじゃないかと思うほど。
だから俺も一旦忘れようと決めたのに、気づくと考えてしまっている。
「う、わーー!!マジですげー!」
右を見ても、左を見ても、人人人。
寝不足気味な俺は、その動きを見てるだけで目が回りそうだ。
時刻は午後7時だが、屋台や提灯の明かりが目に眩しく、とにかく熱気がすごい!
あじさいまつりは、結構な規模のお祭りのようだ。
せいぜい地元の人が集まるくらいかと思っていたら、梅雨時にも関わらず、県内外から人が訪れるとのこと。
そんな有名なお祭りだったのか…全然知らなかった。
「とりあえず、境内に行こうぜ」
声を張り上げて、俺の後ろを歩く壱哉を振り返る。
「そうだな。ナツ、前見てないとぶつかる!」
「うわっ!……っと、あぶなかった〜」
言われた途端、前から歩いてきた人とぶつかりそうになり、壱哉の手が俺の肩を引き寄せた。
汗ばんだ体がトンとぶつかる。
俺は一瞬ドキッとしてしまったが、なんでもないような顔を作って
「さんきゅーな!」
と言った。
壱哉だって、いつも通りの顔だ。
やっぱり俺の気のせいだったのかもしれない。
祭囃子と笑い声の中を抜けて境内に立ち入ると、さっきとはガラッと雰囲気が変わった。
そこには屋台はなく、無数の青や白のあじさいが、足元から照らされている。
神秘的で厳かな雰囲気の中、それを見ている人たちも、自然と声のトーンを落としているようだ。
拝殿にも青色の明かりがついていて、静かに周囲を照らしている。
ここがメインステージなわけだが、人はまばらで、祭りの賑わいからは取り残されたような場所だった。
あじさいの間に作られた小道をゆっくり歩いていると、さらさらと涼しい風が通り抜けていく。
「きれいだな。俺、青が1番好きなんだよ」
少し前を歩く背中に話しかける。
「ナツ、あじさいの花言葉って知ってる?」
壱哉は前を向いたまま聞いてきた
「突然だな。俺が知ってるわけないじゃん」
花言葉なんて気にしたことなかった。
そんなの知ってる男子高校生いるか?
「青が辛抱強い愛、白が一途な愛だって」
「へぇ〜、よく知ってるな〜」
「うん、今日のために調べた」
いたずらっぽい声でそう言った壱哉は、俺を振り返って、まっすぐな瞳で見つめてくる。
その表情になぜか急に心臓がドキドキしてきた。
なんだか妙な雰囲気だぞ。
「そ、そういうのは気になる子を口説くときに使えよ」
壱哉の足がピタッと止まる。
俺も数歩離れたところで立ち止まって、俺たちは向かい合った。
「うん、だから……」
「いちや〜?あれ?ここに入っていくの見かけたんだけどなぁ」
その時、厳かな雰囲気を打ち破るように、場違いな大声が聞こえた。
「いちや〜?どこ〜?」
その声に聞き覚えがあった俺は、とっさにあじさいの影にしゃがみこんで、身を潜める。
「あ、壱哉!いた!」
「久しぶりじゃ〜ん!こんなところで会うなんて」
「元気だったぁ?壱哉、全然LIME返さないんだもん」
駆け寄ってきたのは、名前は分からないけど、同じ中学の3人の女子だった。
よく学校の廊下で、壱哉に話しかけていたのを覚えている。
幸い、俺には気づかなかったようで、ほっと息をついた。
「おう、久しぶり」
彼女たちの興奮したような高い声と対照的に、壱哉の落ち着いた低い声が聞こえる。
「うちら、同中の人たちと来てるんだけど、はぐれちゃって」
「そしたら、壱哉っぽい人がいたから追いかけてきた」
「こんなところで会うなんて、すごい偶然だね!」
「ねぇ、ユメがず〜っと会いたがってたよ。ね?ユメ!」
そう呼ばれた女子は、ためらいがちに壱哉に近づく。
他の2人は、それを見守るように1歩後ろへ下がった。
「今日は1人?じゃ、ないよね。もしかして……彼女とか?」
探るような声音には、期待と不安が隠れている気がした。
あの子、もしかして壱哉のこと……
俺はゴクリと唾を飲み込む。
「あ、いや、違うよ。今は1人、かな」
「今はって……相手の子、帰っちゃったの?あの時、壱哉が言ってた子?」
「あぁ〜、うん」
壱哉がチラッと俺が隠れているところを見た。
「それなら、もし良かったら一緒に………」
俺は急いでLIMEを開いて、メッセージを打ち込む。
『俺、屋台のほうに戻る。あの子と回るならそのまま帰るから』
それから、頭を下げたまま静かに移動し、境内から抜け出した。
先日からほのかに頭の中に浮上した考えから、逃れるように頭を振った。
でもでも!俺だって壱哉や鍛治原のこと可愛いと思うし、あざとポーズ禁止は俺が恥をかかないように言ったんだろうし、颯先輩のことは……よく分からないけど。
そうなのかもしれないと考える度、それを否定するような言葉が浮かんでくる。
壱哉にアプローチされたことはないけど、この前は妙に甘い空気だったような……。
後ろから抱きしめられ……いやいや、俺がまた逃げないように捕まえてただけ。
俺ってすぐ逃げるし。
……あぁ、これじゃ堂々巡りだ。
あの後、ベッドから出てきた壱哉は、拍子抜けするほど普通で、いつも通り一緒に夕飯を食べに行った。
俺がそんなこと考えるなんて、自意識過剰なんじゃないかと思うほど。
だから俺も一旦忘れようと決めたのに、気づくと考えてしまっている。
「う、わーー!!マジですげー!」
右を見ても、左を見ても、人人人。
寝不足気味な俺は、その動きを見てるだけで目が回りそうだ。
時刻は午後7時だが、屋台や提灯の明かりが目に眩しく、とにかく熱気がすごい!
あじさいまつりは、結構な規模のお祭りのようだ。
せいぜい地元の人が集まるくらいかと思っていたら、梅雨時にも関わらず、県内外から人が訪れるとのこと。
そんな有名なお祭りだったのか…全然知らなかった。
「とりあえず、境内に行こうぜ」
声を張り上げて、俺の後ろを歩く壱哉を振り返る。
「そうだな。ナツ、前見てないとぶつかる!」
「うわっ!……っと、あぶなかった〜」
言われた途端、前から歩いてきた人とぶつかりそうになり、壱哉の手が俺の肩を引き寄せた。
汗ばんだ体がトンとぶつかる。
俺は一瞬ドキッとしてしまったが、なんでもないような顔を作って
「さんきゅーな!」
と言った。
壱哉だって、いつも通りの顔だ。
やっぱり俺の気のせいだったのかもしれない。
祭囃子と笑い声の中を抜けて境内に立ち入ると、さっきとはガラッと雰囲気が変わった。
そこには屋台はなく、無数の青や白のあじさいが、足元から照らされている。
神秘的で厳かな雰囲気の中、それを見ている人たちも、自然と声のトーンを落としているようだ。
拝殿にも青色の明かりがついていて、静かに周囲を照らしている。
ここがメインステージなわけだが、人はまばらで、祭りの賑わいからは取り残されたような場所だった。
あじさいの間に作られた小道をゆっくり歩いていると、さらさらと涼しい風が通り抜けていく。
「きれいだな。俺、青が1番好きなんだよ」
少し前を歩く背中に話しかける。
「ナツ、あじさいの花言葉って知ってる?」
壱哉は前を向いたまま聞いてきた
「突然だな。俺が知ってるわけないじゃん」
花言葉なんて気にしたことなかった。
そんなの知ってる男子高校生いるか?
「青が辛抱強い愛、白が一途な愛だって」
「へぇ〜、よく知ってるな〜」
「うん、今日のために調べた」
いたずらっぽい声でそう言った壱哉は、俺を振り返って、まっすぐな瞳で見つめてくる。
その表情になぜか急に心臓がドキドキしてきた。
なんだか妙な雰囲気だぞ。
「そ、そういうのは気になる子を口説くときに使えよ」
壱哉の足がピタッと止まる。
俺も数歩離れたところで立ち止まって、俺たちは向かい合った。
「うん、だから……」
「いちや〜?あれ?ここに入っていくの見かけたんだけどなぁ」
その時、厳かな雰囲気を打ち破るように、場違いな大声が聞こえた。
「いちや〜?どこ〜?」
その声に聞き覚えがあった俺は、とっさにあじさいの影にしゃがみこんで、身を潜める。
「あ、壱哉!いた!」
「久しぶりじゃ〜ん!こんなところで会うなんて」
「元気だったぁ?壱哉、全然LIME返さないんだもん」
駆け寄ってきたのは、名前は分からないけど、同じ中学の3人の女子だった。
よく学校の廊下で、壱哉に話しかけていたのを覚えている。
幸い、俺には気づかなかったようで、ほっと息をついた。
「おう、久しぶり」
彼女たちの興奮したような高い声と対照的に、壱哉の落ち着いた低い声が聞こえる。
「うちら、同中の人たちと来てるんだけど、はぐれちゃって」
「そしたら、壱哉っぽい人がいたから追いかけてきた」
「こんなところで会うなんて、すごい偶然だね!」
「ねぇ、ユメがず〜っと会いたがってたよ。ね?ユメ!」
そう呼ばれた女子は、ためらいがちに壱哉に近づく。
他の2人は、それを見守るように1歩後ろへ下がった。
「今日は1人?じゃ、ないよね。もしかして……彼女とか?」
探るような声音には、期待と不安が隠れている気がした。
あの子、もしかして壱哉のこと……
俺はゴクリと唾を飲み込む。
「あ、いや、違うよ。今は1人、かな」
「今はって……相手の子、帰っちゃったの?あの時、壱哉が言ってた子?」
「あぁ〜、うん」
壱哉がチラッと俺が隠れているところを見た。
「それなら、もし良かったら一緒に………」
俺は急いでLIMEを開いて、メッセージを打ち込む。
『俺、屋台のほうに戻る。あの子と回るならそのまま帰るから』
それから、頭を下げたまま静かに移動し、境内から抜け出した。


