人見知り勇者さんは、今日もどこかでぼっち飯。

 どっと疲れた。

 ぶはっと息を吐いて、宿屋のベッドに豪快に沈み込む。
 体が石化したみたいに重い。靴を脱ぐのも、防具を外すのも億劫。もう指一本動かす気力もない。

 なぜこんな腑抜けになっているのか。
 その理由は──王様の無茶振りだった。

 ひと月前。
「姫が魔王軍に(さら)われた! 勇者よ、頼む!」
 その一言で始まった、地獄みたいな長旅。

 大陸を横断し、山を越え、谷を越え──中略。
 北方の辺境に根城を構える魔王軍五将のひとり、氷牢(ひょうろう)のゲシュティーバを凍えながら討伐。
 奥の間で、呪いで氷漬けにされた姫を発見。
 魔法使いと神官が二人がかりで解呪を試みたが、これがびくともしない。
 仕方なく王都ユグドラムへ連れ帰るため、再び大陸を横断。中略。

 氷像の姫を差し出して王様に報告すれば、今度はこうだ。

「氷の呪いを解くには、神精霊(しんせいれい)イフリートの力が必要だ! 勇者! 頼まれてくれるな!」

 まじか……。

 そこから南方へ海路を渡り、火山地帯で神精霊・業火(ごうか)のイフリートと契約。
 灼熱の試練にパーティ諸共(もろとも)ウェルダンになりながら、またも王都へ戻る。

 ようやく呪いは解け、姫も無事に笑顔を取り戻した──までは良かった。

 問題はそのあとだ。
 王様が玉座から立ち上がって、堂々とこう言い放った。

「よくぞ救ってくれた勇者よ! 褒美として姫を妻に迎えるがよい!」

 ……俺の気力がゼロになった瞬間だった。