人見知り勇者さんは、今日もどこかでぼっち飯。

 吐いた息が白く漂い、街灯(がいとう)の光にじんわり溶けていく。

 やっと一人になれた……。

 リーダーとして新人を立て、場を盛り上げなければという気疲れから解放されて、少しだけ心臓が軽くなる。

 勇者にされてはや三年。

 各地で向けられる魔王討伐への期待に息苦しさを感じる日々だが、こうして一人、パーティから離れても仲間たちは気にしないでいてくれる。
 そこには本当に救われている。

 星空を見上げながら宴の席を思い出す。
 あの戦士、俺より少し年上だろうけど、張り切っていたなあ。
 戦士は常に前衛に出る役職。
 頑張りすぎて、死なないといいな……。

 王都の灯りはあたたかく、昼の人混みが消えて、街はほどよく静かだ。
 遠くで馬車の車輪が軋む音。夜店の屋台の灯りが、誘うように揺れている。
 麺が鉄板で踊る匂い、王都名物の揚げ物と、フルーツを煮たソースの甘酸っぱい香り。

 その中でひときわ濃厚な香りが鼻を突いた。

 これは脂……?

 ……なんだこの、暴力的な香りは……。

 路地の奥に、提灯(ちょうちん)の吊るされたちんまりとした屋台が一つ。
 黒い暖簾(のれん)が風に揺れて、金色の文字が光っていた。

《るぁーめん専門店マシマシ屋》