人見知り勇者さんは、今日もどこかでぼっち飯。

 俺は、激辛(げきから)が壊滅的に苦手だ。

 けど──10万モート。
 それだけあれば、全員分の質の良い防具も、戦士の(いた)んだ槍も、神官と魔法使いの折れた杖も、弓使いの矢筒も、武闘家の手甲も全て(まかな)える。

 喉から手が出るほど欲しい軍資金が目の前にぶら下がっているとなると、素通りなんてできない。

 とりあえず店の前まで行って決めようと、張り紙の矢印が示す路地の奥へ。
 細い通りの先に、臙脂(えんじ)色の暖簾(のれん)がかかった年季の入った店を見つけた。

 香辛料の香りか、店の前だけで鼻の奥がツンとするような……気のせいか?

 扉を開けるか迷っていると、暖簾をかき分けて二人組の男がよろよろと飛び出してきた。

「み、水……水……」
「お、俺の舌、どこいった……っ」

 片や顔面真っ赤で涙と鼻水を垂らし、片や唇を火傷(やけど)見紛(みまが)うほどに()らしている。

 あれってもしかしなくても挑戦者では……。

「うわあ……」

 心の声がダダ漏れた。

 ──やはり引き返すべき、という理性と、10万モートへの欲望が、胸の内で押し相撲を始める。

「まったく。大量に残していきやがって。おーい! お前ら帰りに胃薬でも買って帰れ! 後が酷いぞ!」

 いやいや早まるな……宿屋まで帰って一度冷静になるべきだ──と理性が一歩リードしかけた、その時。
 二人の客を追うようにして、店主らしいドワーフの親父が腕組みをして出てきた。

「ん? なに突っ立ってる? はやく中に入れ」
「……え、いや……」
「あん? 食うだろ。入れはやく」

 (きびす)を返す前に扉を開けられ、促される。
 あー……退路が絶たれた。