あのとき助けたのって俺じゃないんだけど。

俺と真郷は母親同士が仲が良く、家が近所ということもあって、まるで双子のように育ってきた。

色違いの服を着せられ、俺たちはいつも一緒にいた。
俺も子供のころは目がぱっちりと大きく、真郷と同じく、よく女の子に間違われていた。
いつも一緒にいたせいか、顔も背格好もよく似ていた。



小学3年生の夏、真郷といつもとは違う、少し遠くの大きい公園で遊んで、一緒に俺の家に帰る途中だった。

道路の端に、顔を真っ赤にして、1人うずくまっている男の子がいた。俺はすぐに駆け寄った。

「ねえ!大丈夫!?」

男の子は目も開けられない様子で、荒く息を吐いていた。

「まさと!どうしよう!」

俺が叫ぶと、真郷もすぐに駆け寄り、男の子の顔を覗き込む。
真郷の母親は看護師だから、多少知識があったようだ。

「やばい、熱中症かもしれない!あさと!誰か大人の人呼んできて!」 

「う、うん!分かった!」

俺はすぐに駆け出した。
さっきの公園に行けば大人がいるはずだ!

だけど、俺は絶望的に方向音痴だった。

夢中で走ってるうちに迷ってしまい、とうとう疲れてその場にしゃがみ込んでしまった。
もう何時間も経っているような気がした。
あの男の子は大丈夫だろうか。

俺のせいで死んじゃったらどうしよう…
そう思うと、悲しくて涙が溢れた。


結局、俺は探しにきた母親と真郷に見つけてもらい、家に帰れた。


あの男の子も、それほど時間がかからず通りかかった大人に助けてもらい、救急車で運ばれ、事なきを得たそうだ。

真郷が頭に水をかけたり、脱いだシャツを仰いで風を送ったりしたことが功を奏したようで、おばさんにたくさん褒められていた。
俺はとんだ無駄足、何の役にも立てなかったけど、あの男の子が助かって良かった。

心底ほっとした。





あのとき、悠生は俺と真郷を間違えた。
朦朧とする意識の中で、介抱する真郷を麻人だと間違えて覚えてしまったのだろう。
もしかしたら、聞き間違えたのかもしれない。
あのころの俺は、少し滑舌が悪かった。

「あさと」と「まさと」

名前も似てるし、俺たちの母親もよく言い間違えていた。


「俺の初恋の話なんだけど」と言っていた。
「お礼を言いたくてずっと探していたんだ」と。
悠生の初恋は、真郷だったのに。
それなのに俺は、その初恋を奪ってしまった。

本当は再会して、真郷に恋をするはずだったのに。
真郷にはあきちゃんがいるから、結ばれることはないかもしれない。
それでも、間違った人間に恋をするよりは、何万倍もマシだ。
そうすれば、きれいな思い出のままでいられたのに。
俺のせいだ!
俺のせいで歪んだものになってしまった。

やっと答えを出せたのに、本当はとっくに分かっていたことなのに、それを受け止めてくれる人はもういない。