あのとき助けたのって俺じゃないんだけど。

「おーーーい!麻人くん?」

ん?俺、だよな?

サッカー場へ向かうべく、卓球場を出たところで、うしろから声をかけられた。
振り返って俺を呼んだ人物を見て、足をとめた。

「あれ?!……えっと、三枝、くん?」

「おっ!ボクのこと知ってるんだ」

三枝千晴。
悠生の友達で、俺が勝手に《一軍三人衆》と呼んでいるうちの1人だ。
まさしく一軍で、優しげに細められた目、小ぶりだが形のいい鼻、ゆるやかに弧を描く唇は、男子高校生らしからぬ上品さを感じさせる。
まっ、眩しい!

そんな人が俺のこと知ってるんだ…
目を丸くして固まっていると

「いつも悠生から話聞いてるよ。真郷からも」

と、のんびりした口調で言った。

そっか…
真郷と同じクラスで、彼女持ち会議を開いたり、仲良くさせてもらってるんだったな。

「いつも真郷がお世話になってます。あいつ、迷惑かけてないですか?」

つい敬語になってしまうくらい、大人っぽい雰囲気だ。
真郷が『色気ムンムン』と言っていたけど……なるほどな。
そこはかとない妖艶さがだだ漏れている。

「ふふ、そんなことないよ。いつも楽しませてもらってる」

笑い方も上品。

「悠生から話って……え?俺のこと、どんな風に聞いてるんですか?」

一拍置いて、三枝はずいっと顔を寄せて、俺の顔をのぞきこんできた。

「……ねえ、麻人くん?ボクたち同級生だよ?敬語はやめようよ。名前も…千晴って呼んでほしいな」

うぐっ!
なんだろ、無駄にドキドキさせてくるな。

「あ、じゃあ遠慮なく。えっと……千晴、くん」

千晴くんは「うん」と言って、思い出したように「ふふふ」と笑った。

「麻人くんのことはね……すごく可愛い子だって」

えー!?
悠生、そんなこと言ってるのかよ!

俺がなにも言えずにうろたえていると

「でね、実際会ってみたら、ほんとに可愛い子だなって」

なんて、追い打ちをかけるように言ってきた。
うわー!なんだろ?なんか熱くなってきたんだけど。

「今から悠生の応援に行くんでしょ?一緒に行こうよ」

「あ、うん」

歩き出した千晴くんのあとを急いでついていく。
足が長いせいか、歩くのが早い!
普段、いかに悠生が俺に合わせてくれてるかが分かる。

「千晴くんはなにに出るの?」

「僕も卓球。実は2人の様子こっそり見てたんだ。それで、話しかけてみようと思って」

「え?それでって…」

「麻人くん、すごかったね。最後のスマッシュ、決まってた」

「っはぁ、あ、うん、ありがとう」

なかば走るように追いかけているため、息がきれてきた。
千晴くんはそんな俺をちらっと見て、いきなり手を繋いできた。

「は?!」

驚いている俺をよそに、「ふんふ〜ん」なんて鼻歌を歌っている。
なんだか、こっちはこっちで不思議な人だ。