学校からクラス毎に分かれてバスに乗り、大学へ向かう。
悠生と西原に一緒に座ろうと言われて、一番うしろの席に、3人横並びで座った。
窓際から、俺、悠生、西原の順だ。
俺は別に窓際じゃなくていいから、2人に譲ろうとしたけど、無理やり押し込まれてしまった。
主に悠生に。
朝早いせいで、ほとんどの人が寝たまま、いつの間にか着いていたようだ。
バスがガタンと揺れて目を覚ますと、悠生はちょうど起きていたらしい。俺は寝起きでボーッとしていて、しばらく見つめあってしまった。
「……あれ?悠生。もう着いた?」
「おはよ。もうすぐ着くみたいだよ。あと5分くらい」
悠生が小声で答える。
西原も他の人も、まだ寝ている。
ふと、左手に温もりを感じて目を下げると、悠生の右の手のひらの上に、俺の左手が重なっていた。
それに気づいて、パッと手を離す。
「うわ!ごめん。知らないうちに手繋いじゃった?」
あー恥ずかしい!
寝てる間に人の手掴むなんて。
変なクセあると思われたらやだな。
慌てる俺に対し、悠生は目を細めて微笑んだ。
「やっぱり俺が隣で良かった」
そうだよな、よく知らないやつだったらめちゃくちゃ気まずい。
ましてや女子だったらセクハラだ。
「ほんっと、ごめん!……俺、他に変なことしてなかった?」
「うーん、そうだなぁ。寝言言ってたかな。あと、よだれ垂らしてたし、白目向いてた。鼻もふがふが鳴ってた」
悠生は意地悪そうな顔をして、片側の口角をあげた。
「え、まじ?」
「……ふっ!あはは!」
「え、うそじゃん!」
「あはは!ごめんごめん。麻人の顔、面白くて」
からかわれてしまった。
一体どんな顔をしていたのか。
たぶん、相当間抜けな顔だったんだろう。
なんか俺も面白くなってきて、一緒になって笑った。
こういうのって、友達って感じがしていいよな。
やがてバスは大学のロータリーに入り、西原が「うーん」と大きく伸びをした。
ガタイがいいから圧がすごい。
バスから降り、受付に向かう。
午前中は現役大学生のアテンドで、構内をあちこち周った。
分かっていたけど、高校とは全然規模が違って、つい口を開けて見てしまった。
お昼は俺たちも学食で食べる。
いつの間にか西原と離れ、俺と悠生の2人になっていた。
すごく混むよ、とアテンドしてくれた大学生に言われ、11時過ぎに早めに向かうことにした。
「麻人はなににする?」
「うーん」と、メニューの写真を見比べる。
メニューは豊富だ。ごはん系も麺系も、大学生が好きそうなものが網羅されている。
中にはごはんと味噌汁だけの定食があり、130円と破格だ。お金のない大学生の救世主なんだろう。
さすがに今日はおかずがほしい。
「ハンバーグ定食か、カレーで悩んでる」
「じゃあ俺、ハンバーグにするから、麻人、カレーにして。シェアしようよ」
「え、いいの?」
「もちろん!」
うわ〜優しすぎる。
悠生って女子には塩対応だけど、男子には気さくなんだよなぁ。
西原にはなぜか、ちょっと当たりが強いけど。
食券を受付に出し、それぞれハンバーグ定食とカレーののったトレイを持って、大きな窓の近くの席に向かう。
日当たりがよくて気持ちいい。
トレイを置いて
「悠生、何か飲む?俺、買ってくるよ」
と声をかけた。
「え、いいよ。俺が行くよ」
「いいって!すぐそこだし」
「…じゃあ、ブラックコーヒーで」
「うん」と頷いて、自販機に向かう。
悠生って、大人だよなぁ。
だから、余計に俺が子どもっぽく見えるんだろうか。
なんて考えながらブラックコーヒーとココアを買ってもどると…
あ、囲まれてる!
始業式の日、クラス替えの掲示板の前で、悠生の両隣にいたギャルっぽい女子。
1人は同じクラスだけど、話したことはない。
教室でいつも悠生の机を囲み、俺は邪魔くさそうに一瞥されるだけだった。
そういえば最初、どっちかが彼女だと思ったんだっけ…
今は違うとはっきり分かる。
悠生はクラスの女子とほとんど話をしない。
ん?男子とは……どうだっただろうか。
俺や西原以外と話している映像が浮かばない。
今日は女子2人に加え、見たことのない男子も2人混ざっていた。
他クラスかな?
楽しそうな笑い声が聞こえる。
悠生の顔は見えないけど、男子だったら邪険にはしないんだろう。
いつも見ている光景とそれほど変わらないのに、なぜかモヤモヤした気持ちがせりあがってくる。
両手に持った缶をギュッと握りしめた。
ひとしきり笑ったあと、4人は悠生に手を振ってどこかへ行った。
悠生は、テーブルの上で腕を組んだまま振り返って、彼らのあとを目で追っていた。
「悠生、はい、これ」
「おう、ありがとう。お金…」
「いいよ、俺のおごり」
悠生の目を見ないまま答えて、正面の椅子に座る。
「ありがと……麻人?なんか怒ってる?」
「え?まさか。怒ってないよ。それより食べよう。お腹すいた」
おしぼりを袋から出して手を拭いている間も、悠生が俺の顔色をうかがうように見てくる。
俺は小さくため息をついて
「別に…ただ楽しそうだなって思っただけ」
と言った。言ってしまった。
だけど、口に出した瞬間、ものすごく後悔した。
なにを言ってるんだ、俺は!
すねてるような言い方をして、悠生を困らせるだけなのに。
なんか変だぞ?俺。
これって…もしかして…
1人焦っている俺を尻目に、悠生はふっと表情を緩めた。
「もしかして麻人、嫉妬した?なーんて……」
「そうだ。そうかも」
「俺、友達あんまりいないし、悠生のことはすごく気の合う友達だと思ってるし、悠生が離れたら……たぶん、すごく寂しい」
すらすらと思ったままを言葉にする。
悠生が目を丸くしている。
「友達」なんて言って、ちょっと図々しかったか?
悠生は今度は目を細めて
「友達、ね…すごく嬉しい。けど………まぁ今はそれでいいよ」
なんだ?今はって。
ゆくゆくは俺と親友になりたいってことか?
それって、すごく……うん、いい感じだ。
すっかり機嫌が良くなった俺は、にっこり笑って
「冷めるから早く食べよう!」
と言った。
悠生と西原に一緒に座ろうと言われて、一番うしろの席に、3人横並びで座った。
窓際から、俺、悠生、西原の順だ。
俺は別に窓際じゃなくていいから、2人に譲ろうとしたけど、無理やり押し込まれてしまった。
主に悠生に。
朝早いせいで、ほとんどの人が寝たまま、いつの間にか着いていたようだ。
バスがガタンと揺れて目を覚ますと、悠生はちょうど起きていたらしい。俺は寝起きでボーッとしていて、しばらく見つめあってしまった。
「……あれ?悠生。もう着いた?」
「おはよ。もうすぐ着くみたいだよ。あと5分くらい」
悠生が小声で答える。
西原も他の人も、まだ寝ている。
ふと、左手に温もりを感じて目を下げると、悠生の右の手のひらの上に、俺の左手が重なっていた。
それに気づいて、パッと手を離す。
「うわ!ごめん。知らないうちに手繋いじゃった?」
あー恥ずかしい!
寝てる間に人の手掴むなんて。
変なクセあると思われたらやだな。
慌てる俺に対し、悠生は目を細めて微笑んだ。
「やっぱり俺が隣で良かった」
そうだよな、よく知らないやつだったらめちゃくちゃ気まずい。
ましてや女子だったらセクハラだ。
「ほんっと、ごめん!……俺、他に変なことしてなかった?」
「うーん、そうだなぁ。寝言言ってたかな。あと、よだれ垂らしてたし、白目向いてた。鼻もふがふが鳴ってた」
悠生は意地悪そうな顔をして、片側の口角をあげた。
「え、まじ?」
「……ふっ!あはは!」
「え、うそじゃん!」
「あはは!ごめんごめん。麻人の顔、面白くて」
からかわれてしまった。
一体どんな顔をしていたのか。
たぶん、相当間抜けな顔だったんだろう。
なんか俺も面白くなってきて、一緒になって笑った。
こういうのって、友達って感じがしていいよな。
やがてバスは大学のロータリーに入り、西原が「うーん」と大きく伸びをした。
ガタイがいいから圧がすごい。
バスから降り、受付に向かう。
午前中は現役大学生のアテンドで、構内をあちこち周った。
分かっていたけど、高校とは全然規模が違って、つい口を開けて見てしまった。
お昼は俺たちも学食で食べる。
いつの間にか西原と離れ、俺と悠生の2人になっていた。
すごく混むよ、とアテンドしてくれた大学生に言われ、11時過ぎに早めに向かうことにした。
「麻人はなににする?」
「うーん」と、メニューの写真を見比べる。
メニューは豊富だ。ごはん系も麺系も、大学生が好きそうなものが網羅されている。
中にはごはんと味噌汁だけの定食があり、130円と破格だ。お金のない大学生の救世主なんだろう。
さすがに今日はおかずがほしい。
「ハンバーグ定食か、カレーで悩んでる」
「じゃあ俺、ハンバーグにするから、麻人、カレーにして。シェアしようよ」
「え、いいの?」
「もちろん!」
うわ〜優しすぎる。
悠生って女子には塩対応だけど、男子には気さくなんだよなぁ。
西原にはなぜか、ちょっと当たりが強いけど。
食券を受付に出し、それぞれハンバーグ定食とカレーののったトレイを持って、大きな窓の近くの席に向かう。
日当たりがよくて気持ちいい。
トレイを置いて
「悠生、何か飲む?俺、買ってくるよ」
と声をかけた。
「え、いいよ。俺が行くよ」
「いいって!すぐそこだし」
「…じゃあ、ブラックコーヒーで」
「うん」と頷いて、自販機に向かう。
悠生って、大人だよなぁ。
だから、余計に俺が子どもっぽく見えるんだろうか。
なんて考えながらブラックコーヒーとココアを買ってもどると…
あ、囲まれてる!
始業式の日、クラス替えの掲示板の前で、悠生の両隣にいたギャルっぽい女子。
1人は同じクラスだけど、話したことはない。
教室でいつも悠生の机を囲み、俺は邪魔くさそうに一瞥されるだけだった。
そういえば最初、どっちかが彼女だと思ったんだっけ…
今は違うとはっきり分かる。
悠生はクラスの女子とほとんど話をしない。
ん?男子とは……どうだっただろうか。
俺や西原以外と話している映像が浮かばない。
今日は女子2人に加え、見たことのない男子も2人混ざっていた。
他クラスかな?
楽しそうな笑い声が聞こえる。
悠生の顔は見えないけど、男子だったら邪険にはしないんだろう。
いつも見ている光景とそれほど変わらないのに、なぜかモヤモヤした気持ちがせりあがってくる。
両手に持った缶をギュッと握りしめた。
ひとしきり笑ったあと、4人は悠生に手を振ってどこかへ行った。
悠生は、テーブルの上で腕を組んだまま振り返って、彼らのあとを目で追っていた。
「悠生、はい、これ」
「おう、ありがとう。お金…」
「いいよ、俺のおごり」
悠生の目を見ないまま答えて、正面の椅子に座る。
「ありがと……麻人?なんか怒ってる?」
「え?まさか。怒ってないよ。それより食べよう。お腹すいた」
おしぼりを袋から出して手を拭いている間も、悠生が俺の顔色をうかがうように見てくる。
俺は小さくため息をついて
「別に…ただ楽しそうだなって思っただけ」
と言った。言ってしまった。
だけど、口に出した瞬間、ものすごく後悔した。
なにを言ってるんだ、俺は!
すねてるような言い方をして、悠生を困らせるだけなのに。
なんか変だぞ?俺。
これって…もしかして…
1人焦っている俺を尻目に、悠生はふっと表情を緩めた。
「もしかして麻人、嫉妬した?なーんて……」
「そうだ。そうかも」
「俺、友達あんまりいないし、悠生のことはすごく気の合う友達だと思ってるし、悠生が離れたら……たぶん、すごく寂しい」
すらすらと思ったままを言葉にする。
悠生が目を丸くしている。
「友達」なんて言って、ちょっと図々しかったか?
悠生は今度は目を細めて
「友達、ね…すごく嬉しい。けど………まぁ今はそれでいいよ」
なんだ?今はって。
ゆくゆくは俺と親友になりたいってことか?
それって、すごく……うん、いい感じだ。
すっかり機嫌が良くなった俺は、にっこり笑って
「冷めるから早く食べよう!」
と言った。


