あのとき助けたのって俺じゃないんだけど。

帰り道。
俺たちは並んで歩いた。

「俺たちって実は途中まで同じ電車だったんだ!」

「ね、そうかなぁとは思ってたけど、やっぱりそうだった」

「え、なんで?」

「あははっ!なんとなくだけど」

「ふーん…」

学校の最寄り駅から、俺は5駅、悠生は6駅。
意外と近くに住んでたんだな。

「ていうか悠生、彼女と帰らなくていいの?」

「は?彼女?」

「さっきの。彼女に連絡してたんだろ?」

渡り廊下で悠生がスマホをいじってた姿を思い出しながら言った。
真郷には「彼女いるかなんて聞けない」と言ったけど、とうとう聞くことに成功した。
こういうプライベートなことって、どこまで踏み込んでいいのか、いまいち距離感が分からないんだよな。
悠生は「えっ!?」と目を丸くして

「彼女はいないよ?」

と言った。
てことは、好きな子か。

「さっき連絡してたのは妹。幼稚園であったこととか、報告してくるんだ」

「え、幼稚園?スマホ使えるの?」

「使えるよ。母親のだけど」

「今の幼稚園生すご!」

急に自分が年をとったような気がしてくる。

「離れてるからつい甘やかしちゃって。わがままに育ってる」

なんて言いながら優しい顔をする。

「朝だって、俺と一緒じゃなきゃ幼稚園行かないなんて言うからさ、母親の車で幼稚園まで送って、そのまま学校の近くで降ろしてもらってるんだ」

「なにそれ可愛い!ていうか、悠生の妹なら絶対可愛い!俺、ひとりっ子だから、そういうの羨ましいよ」

「本当は朝も麻人と一緒に行きたいんだけどね」

「ふぁ?!」

ふいうちで変な声が出てしまった。
さすが、天然人たらし。

「そういうことは好きな子に言いなよ」

「好きな子……」

「いるんだろ?かっこいいと思われたい子が」

悠生は顎に手を当てて「あー」とか「うーん」とか思い悩んでいるようだ。
その仕草すらかっこいいんだよな〜
大丈夫だよ、悠生。
お前はなにしてもかっこいいと思われてるはずだから。

「俺、もっとアピールしないとだめっぽい」

「そうなの?悠生にアピールされたらみんな好きになっちゃいそうだけど、そんなにガード固い子なんだ」

「ていうか、鈍い子……かな」