あのとき助けたのって俺じゃないんだけど。

放課後。

悠生は図書室で待ってるというので、俺は園芸部のユニフォーム…花柄の農家ルックの帽子をかぶって校庭へ出た。
今日のメインは草むしりだ。
校庭を囲む花壇にだいぶ雑草が生えてきたので、総勢5人の部員で、一斉に駆除する。
今日も季節外れの暑さが続いている。
中腰で痛くなったけど、いい汗かいた。

「春田くん、いつもゴミ捨てしてもらっちゃってごめんね」

部長が申し訳なさそうに言って手を合わせる。

「いいですよ。重いし、女性じゃ大変だから。そしたらそのまま帰るので、みなさんは先帰っちゃってください」

そう、園芸部に男は俺1人。
肩身が狭いかと思いきや、みんな優しいし、頼りにされると悪い気はしない。

「本当にありがとうね!…それじゃあ、お疲れ様」

「お疲れ様でしたー!」

他の部員にも手を振り、背中を向ける。

さてと、校舎裏にゴミを捨てに行こう。
といっても、まだ本格的な雑草のシーズンではないからゴミ袋はひとつだし、これくらいの重さなら余裕。
軽やかな足取りで行って戻ってくると、外の渡り廊下のところに悠生がいた。
悠生はスマホを見て、穏やかに微笑んでいる。

「おっ、彼女かな?」

その顔を見たとたん、なぜか無性に邪魔したくなった。
いたずら心がムクムクと湧いてくる。
うしろからそーっと近づいて

「悠生!!」

と大きい声で呼びかける。
悠生は文字通り飛び上がり、俺はその反応に満足して「あははっ!」と笑ってやった。

「わぁ!え?……麻人?」

「お待たせ」

「え、その帽子…」

「あ、忘れてた」

花柄帽子をかぶったままだった。
慣れたはずなのに、急に恥ずかしさが込み上げてきて、カーッと顔が熱くなる。
慌ててうしろを向き、急いではずす。

「めちゃくちゃ可愛いんだけど!可愛すぎる」

思いもかけない言葉が聞こえて、片手で前髪を押さえながら振り向いた。
可愛いって、え?なにが?

「悠生……えと、帽子気に入ったなら、部室にまだいっぱいあるよ」

「いや、それはいいや」

悠生は俺の頭に手を伸ばし、髪をすいてくれる。
その仕草が、表情が、やけに優しくて変な感じだ。
花柄が好きなのか?
なにかプレゼントする機会があったら花柄にしよう。

「よし!麻人、帰ろう」

サイド、うしろも整えて、ようやく納得の髪型になったらしい。
俺の頭から手を離す。

「うん、ありがと…」

「どーいたしまして。はねてるのも可愛いけどね」

あ、また可愛いって。
悠生の可愛いの基準どうなってるんだ?
なんでもかんでも「可愛い」って言う、クラスの女子みたい。