希-コイネガ-う思慕を描きとめる

3.


しかし。そんな嫌な感情が覆されたのは授業中。
黒板に書かれた内容をノートに取りつつも、面白そうなことをしている人がいないかと探している時だった。

教科書を立てて、先生の目を盗み、早弁しているというあまりにもベタな行動するクラスメートを見かけ、早速スケッチしていると囁き声が聞こえてきた。

「⋯⋯ねぇねぇ、青葦君思いっきり寝てるよ」
「⋯⋯ヨダレまで垂らしちゃってる。可愛い〜」

月岡の席近くの女子らがクスクス笑い合う。
寝ている? 寝ているだけで面白いことなのか。
疑問符を浮かべながらも噂の対象に目を向ける。

ノートに取っている最中に眠気に襲われたのか、机に投げ出した左手を枕代わりに右手に持っているシャーペンが緩められた手の中に何とか収まっている状態で、その当人はちょうどこちらに向けるような形で寝ていたのだが、あまりにも無防備だった。

眩しい日差しを背に、授業中であることを忘れさせてしまうようなぐっすり眠る姿は、清々しく感じたりしたが、同時に羨ましいと思った。

胸を突き刺すような刺々しい声音と共に向けられた鋭い眼差しが今は瞼に隠されている。
気持ち良さげでどこまでも無防備。

目が、奪われた。

美しい絵画を見かけ、思わず立ち止まって見た時のような、心がざわめき、惚けたように魅入ってしまうような感情。
それと似ていた。

なんなんだろう、これは。鼓動が速まっていく。
そわそわと落ち着かない。

気づけば新しいページにその様子を描き殴った。
濡れている黒髪。剃り整えられた眉。
縁取られたまつ毛。はっきりとした鼻筋。何か寝言でも言いそうな小さく開けた口。
一つ一つのパーツを見落とさず、詳細に丁寧に描き込んでいく。