希-コイネガ-う思慕を描きとめる

27.
青葦に惚れている場合ではない。
青葦と「何か声がした?」と言う声とに交互に顔を向けていた月岡だったが、「月岡?」と掛ける青葦の方へ、なるべく足音を立てずそばに寄った。

「ちょっと来てっ」
「ちょ、おい⋯⋯っ」

青葦と共に階段を登り、三年の学年であることを構わず、上がってすぐ右手の渡り廊下で立ち止まった。
緊迫した状況から解放されたからか、肩で大きく吐いていた。

「⋯⋯月岡、手ぇ離してもらってもいいか」
「え⋯⋯? えっ!」

言われて手元を見る。
言っていたように青葦も手を繋いでいたのだ。
いつの間にしていたのだろう。

「ご、ごめんね。無意識にやってたみたいで⋯⋯」
「あーいや、別にいいんだけど⋯⋯月岡って意外と大胆だな⋯⋯」

友人と話している時のような冗談混じりに言う青葦の語尾がだんだんと小さくなっていくのが気になり、俯いていた顔を上げた。
首に手をやり、そっぽを向いていたが、その横顔がどことなく赤い。
虚を突かれた。
間違えて手を繋いだだけで照れたというのか。

「つい手を繋いだの、あの二人に青葦君のこと気づかれたくなかったからなんだよね⋯⋯」

と言った時、「俺に?」と振り向く青葦とほぼ同時に「あっ!」と思い出して声を上げ、目が合った。

「そうだ! 青葦君の物を盗んだ犯人が分かったんだ!」
「えっ、マジで?」

目を丸くする青葦にあの二人のことや先ほどの出来事を話した。