希-コイネガ-う思慕を描きとめる

26.
月岡も絵を描く行為が生きる活力だった。
青葦とは糧にしているものは違えども命と等しい存在だった。
しかし、それに気づかされたとしても、今にも灯火が吹けば消えてしまいそうな状況をだはするには一体どうしたらいいというのだろう。

無意識にため息を吐き、食べ終わったお弁当箱を包み直している時だった。

「──青葦の物を盗ってきたけど、これでいいわけ?」

どきりと心臓が飛び出そうになった。
包みかけの弁当箱を脇に置き、壁を伝って、そろりと顔を出す。
外へと続く扉の前、二人の男女が話している。
盗んで来たという女子の方は見覚えはないが、男子の方はどこかで見たことがあった。
それは確か、青葦も同じ陸上部の人。

「アイツの物だったら何だっていい。⋯⋯足が速いからって調子乗りやがって。いつか痛い目に遭えばいい」
「もう結構盗ったからこれぐらいにしてくれない? 盗るのも大変だし、さすがに青葦も困ってるでしょ。ここまでしたからいい加減アタシのこと恋人にしてよ」

え、と声が漏れそうになった。
同じ部の人間があまりにも身勝手なことで青葦の物を盗んで困らせ、盗んだ人間も好きな男子に振り向いてもらうためにしたのだと知ってしまった。
ふつふつと怒りが沸いてくる。何か一言言ってやりたいと思ったが、犯人らを下手に刺激してしまったら、状況が悪くなってしまうかもしれない。
月岡が今できるものとしたら──⋯⋯。

「⋯⋯月岡? ここで何してんの⋯⋯?」

天井に届いてしまうのではと思うぐらい跳ねた。

「あ、青葦君⋯⋯」

咄嗟に振り向いた。
月岡の反応を見てか、青葦も驚きと困惑したような顔をしているが、久しぶりに見る彼は鼓動を高鳴らせるには十分だった。
心臓に悪い。