希-コイネガ-う思慕を描きとめる

25.


あれから青葦のことを避けるようになった。

朝練しているところをお邪魔している時、遠くにいた青葦が気づいて手を振っても、顔を逸らしたり、青葦が挨拶しても、目を合わせなかったり、昼休みも青葦が一緒に食べることを誘っても、何かと理由をつけて自分から遠ざけた。
急な態度を良く思わないだろう。

でも、こうでもしないと知ってはいけない気持ちに気づいてしまいそうで。


遠くで賑やかな声がする。
ところが月岡にはそれらには耳が入らず、ぼんやりとした面持ちで弁当をつまんでいた。

自分達が普段過ごしている棟の1階へと続く階段に座っている。
どこにいれば青葦に気づかれずにいられるかと捜している時、ここを見つけた。
中庭にあるベンチでもいいと思ったが、時期的に日差しが強く、それに外であるから見つかる可能性があると思ったため、ここに腰を落ち着けた。
1階が校長室、保健室と頻繁に行くところではないため、自分しか生徒はいなかった。

青葦に声をかけられることはないが、スケッチできる対象がいないため、面白味がない。
とはいえ、青葦の姿が視界に入る度心臓がうるさいため、青葦のことをスケッチしないうちにする気力が失せてしまっていたが。

長年、人間観察をスケッチするのがただ一つの趣味だったものだから、それがなくなってしまうと、何をしたらいいのか分からない。
自分の唯一得意なものがなくなってしまった。
まるで心臓を抉り取られたようだった。

「⋯⋯⋯そうか」

青葦がことあるごとに口にするぐらい走ることに情熱を注いで、それから最近の彼の授業態度にさせたきっかけの言葉を言った時思った、走るのは命と同等だと。