希-コイネガ-う思慕を描きとめる

20.
いい方法が見つからなく、うーんと悩んでいた時、急にぱっと閃いた。
ぐっと口を引き結び、立ち上がった月岡は青葦のことを見据える。
覚悟を決めたように小さく頷くと、寝始めている彼の耳に口を近づけ、震える声音で囁いた。

「⋯⋯このままだと、陸上部、辞めさせられる、よ⋯⋯?」

するとどうだろう、一気に覚醒した青葦がやろうとする意欲を見せたのだ。
その表情は今朝見た彼そのもので、しかし急な態度に固まっていると、「月岡、これ何て読む?」と訊いてきた。

「あ、えーと、忌避(きひ)だよ」
「じゃあこれは?」
帰依(きえ)

答えたものをさらさらと書いていく。
先ほど教えていた時は聞いているのか聞いていないのかといった態度であったが、今は真面目に聞き、解いていっているのだ。
突発的に思いついたなんて事ない一言だったが、やはり走るのが命な彼には効果てきめんだったのだといえる。

「終わったぁ〜⋯⋯」

頭上に思いっきり腕を伸ばし、深くため息を吐いた。
ほとんど月岡に訊いていたが、それでも最後までやりきった。

「お疲れ様」
「いやぁ、本当に助かった。サンキューな月岡」
「どういたしまして」
「最後までやれたの、これが初めてかもな」

宿題を眺めてそう呟く彼の目はとても満足気だった。
そんな彼を見て、急に思いついた言葉も買って出て良かったと自分のことのように嬉しく思った。
また寝そうになったらこれで叱咤しようか。

そう心の中で決心した月岡だったが、それを言う機会がなかった。

それから青葦は授業中に寝ることが減り、真面目に授業をしている姿を見かけることが多くなったのだ。