希-コイネガ-う思慕を描きとめる

11.
余計なお節介かもしれない。でも、辟易している彼を見てしまったら放っておけない。
けど、気づけば彼の走る姿をスケッチしてしまっているわけだが。

寝顔しか描いていなかったし、窓の外からしか見ていなかったが、こうしていつもよりも近くで見ると彼の新たな一面が見られる。
風を切り、髪をなびかせる彼の横顔は余裕そうで、それでいて楽しそうな顔を見せつける。
本当に走るのが好きなんだなと思わせるぐらいに。

「あれ、月岡じゃん。こんな朝早くにここで何してんの?」

顔を上げるとそこには、タオルで汗を拭いている青葦がいた。
汗を拭う姿も絵になる。ぜひとも描きとめたい。ではなく!

「あ⋯⋯いや、ちょっとスケッチを⋯⋯」
「スケッチ?」
「物や風景とかを描くことだよ」
「へー⋯⋯で、そのスケッチってやつ、何描いてんの? そういや、昨日訊いた時に持ってたやつそれなん? 急に逃げ出すからびっくりしたが、何?あんま見せたくない?」

今まで描いてきたものを見せたら一巻の終わりだが、今描いたものはギリギリ大丈夫であろう。
昨日思わず見せられるものじゃないと言った手前出しにくいと思ったが、「今、描いたものだけど⋯⋯」と恐る恐る見せた。

「は⋯⋯ん? これ、俺?」

反応を伺うように小さく頷く。

「はぁ〜⋯⋯写真でこんな感じのを見たことあるけど、絵だとこんな感じになるのな。なんていうの、疾走感?すげぇ走っている感じ?」
「うん、そうなんだよ!静止じゃなくて動いているのを描いているから、ちょっと補正しちゃってるけど、でも風のように速く走っていて、その時の青葦君、楽しげだし、気持ち良さげというか、昨日言ってた走るのが好きって言っている意味が分かったというかなんていうか、僕もそんな風に走ってみたいななんて思わせたんだよね」

気づけばスケッチブックを持つ手に力が入り、ずいっと顔を近づけていた。
ぽかんとした青葦の顔を見た時、正気に戻った。