窓際の特等席、秘密のエール


ゴールデンウィークの学校はやけに静かで、
五月の陽射しはもう、春というより初夏に近かった。
俺は集合時間の三十分前に視聴覚室の扉を開けた。
大きなスクリーンをぬけ、広い教室の隅にあるドアを開ける。

(あいかわらず埃っぽいな…………)

すぐに窓を全開にすると、少し湿った風が視聴覚準備室の淀んだ空気をかき混ぜる。
グラウンドを覗き込むと、ちょうど陸上部がウォーミングアップを始めたところだった。

「おお。今日はリレーの練習をするのか」

 ソフト部のいない第二グランドの内周を、はーいと声をかけながらジョギングでバトンパスしている。
その中の、男子四人組の一番前に、隼人はいた。

(二年なのにリレーも出るのか。一番前ってことはアンカー?)

 陸上の試合など見たことないのに、
レンガ色のタータンの上でバトンをもらって走る隼人が一瞬で脳内を駆け巡った。

(うわ、カッコよ!)

 俺は思わず顔がにやけた。
足元から謎のゾクゾクした感覚がせりあがってくる。
思わず自分も走りだしたくなるような謎の高揚感に戸惑いながらも、
俺はオイルを指して譜面台を立てた。軽く音出しをしてから、トランペットを構える。

 ――プーーーーー……
 ロングトーンの音が、朝の校庭に広がった。

(頑張れよ)

 きっと彼には音しか届かない。けれど、俺は隼人を思いながら息を吹き込んだ。