私は、肌が白い、そして芯は太く曲がったことが大嫌い、性格の問題なのかしら? 今日も沢山の人が私を求めて、
競い合う――。
今朝は、起きるのが早かった。真っ暗な朝、車に乗り込み、目的地に揺られながら、私は眠い目をこすり、まだかな? まだかな?
明かりがついている所にくると、沢山のファンがお出迎え、笑顔で私を覗き込むのがわかった。照れるじゃないの、優しく抱きかかえられて
私は、センターという、指定席に……。
一見物静かな、会場は、ぽつり、またひとつ、ぽつりと明かりがつき、いよいよ、ライブが始まる、期待感に溢れて、今日は誰と手が触れ合うのかな? 触れてはいけないのだけれど
最後の見せ場でもあるからね。
突然大きな声と、行きよい良く走りこんでくる、大勢の人たち……ついに、開演だ、間違いない。私は少しだけ、緊張したのであろうか、身動きできず、近づいてくるファンの人たちと目があった気がした。
毎日、毎日、私のために、並んでくれる大勢のお客さん。いつも、大事に扱ってくれて、感謝でしかない。時折乱暴そうな人もいるのだけれど、そこは警備の方が、私はゆっくりと胸をなでおろした。
美白であり、色つやもよい。わりと、美人なのである。自信が無いと業界ではやっていけないのだから、だれよりも、輝いて、だれよりも心に残る、常にそうありたいと、願っていた。
来る日も来る日も、私の前で顔を覗き込む人たち。順番は守って欲しいものだ。あまり、顔が近すぎると、少しだけ、怖さがあったが、それは、どちらかというと、かなりのマニア、テクニカルな一部だけであって、大抵は順番を守って、手を添えていく。
――次第に、息が白くなってきた。年末になると、私のスケジュールはぎっしり詰まってくる。マネージャーも考えて欲しいものだ。いくら私が、売れっ子で若いからと言っても、限度があるでしょうに? きちんと考えてもらえないだろうか? これは上層部にかけあう案件だ。
――年が明けても、私には休みなどは、無い、売れる今、ここで人気を独り占めしないと、争いは厳しい、いつもより、硬さと柔らかさを使い分け、お客さんに、笑顔で挨拶した。
これも、生き抜くためのテクニック、ギリギリまで、求めさせて、後は、お任せ。それ以上という、限界線は超える事はない。乱暴に扱われる心配は皆無、警備員さんのキツイ視線が、監視している。監視カメラも私を捉えている。
私は、どこに行っても、ひっぱりだこ。スケジュールの緩和を上申したが、受け入れられず、今がチャンスなのよと、事務所の社長は、マネージャーと言いあっていた……。
それでも、私は、嬉しいので、毎日、新しい手に触れながら、センターを守り続けた。
――今日は、冷える。吐く息が白い……スケジュールの関係で、朝は真っ暗のまま、出かけていく……。今日は明かるならずに、白い粉が、ユラユラと舞い降りてきた。雪であった。早朝から私を待つ行列ができていた。これ以上雪が降ると、お客さんも帰りがこまってしまうからであろう……。今日のステージは、早めに打ち切られる異常事態となった。
翌朝は、雪が積もってしまったせいで、ステージに立つことは、出来なかった。正直悔しいが、雪であれば、お客さんもこれないのだから、仕方がない。一日中降り注いだ雪は、翌日の朝には、止んでいた。
凍結という、マネージャーの言葉から、今日のスケジュールも変わり、待機となった。楽屋から出る事は無かった。
翌日、真っ暗で凍えるような寒さのなか、私は目的地に向かった。既に、待ち構えてるファンの皆さんが、行列を作っていた。目的は、私。たった、二日であったのだが、非常に長く感じた、今日は頑張って、手を振ろう。センターは譲れない……。
毎日、体を酷使した――――。
――次第に、暖かくなってきて、朝のお日様が昇るのも、早くなってきた。私は、明るくなってきた車内で、目的地へ……。遠目にみると、いつぶりだろう、直接瞳に映りこんだのは、白とピンクの花びら……桜だ。綺麗。私は見とれてしまった。白は私も負けてはいないのだけれど、ピンクは、ズルいと少しだけしっとした。
ライブは滞りなく、いつも通りに終わった。
――マネージャーが慌てている、珍しいどうしたのだろうか? 社長もだ、一体なにがあったの、今日は久しぶりのオフ……翌日もオフ……どうしたのだろう? 外は暖かくなり、お日様の登るのがはやくなっていた。
今日も、オフであった。私は、いったいどうしたのだろう? マネージャーに詰め寄るが、返答が帰ってこなかった、困惑した顔を今でも、覚えている。私は鏡をみると、いつのまにか、私の売りである、芯の強さがなくなって、細くなっていった……。
受け入れられなかった。
――気温はさらにあがり、桜は散って、青々とした葉が姿を現していた。5月中旬、夏日の予想とのこと。今年初らしい、どこからか聞こえてきた。マネージャーではない、最近マネージャーの姿が見えない。
四月も終わりを迎えるにあたり、私はステージに立つことは、無かった。鏡に映る私は、とても、お客さん、ファンの皆様の前に、出れるようではなかった――。
私の名前は、白菜
今は、旬の春キャベツにセンターを奪われていったのであった――。
競い合う――。
今朝は、起きるのが早かった。真っ暗な朝、車に乗り込み、目的地に揺られながら、私は眠い目をこすり、まだかな? まだかな?
明かりがついている所にくると、沢山のファンがお出迎え、笑顔で私を覗き込むのがわかった。照れるじゃないの、優しく抱きかかえられて
私は、センターという、指定席に……。
一見物静かな、会場は、ぽつり、またひとつ、ぽつりと明かりがつき、いよいよ、ライブが始まる、期待感に溢れて、今日は誰と手が触れ合うのかな? 触れてはいけないのだけれど
最後の見せ場でもあるからね。
突然大きな声と、行きよい良く走りこんでくる、大勢の人たち……ついに、開演だ、間違いない。私は少しだけ、緊張したのであろうか、身動きできず、近づいてくるファンの人たちと目があった気がした。
毎日、毎日、私のために、並んでくれる大勢のお客さん。いつも、大事に扱ってくれて、感謝でしかない。時折乱暴そうな人もいるのだけれど、そこは警備の方が、私はゆっくりと胸をなでおろした。
美白であり、色つやもよい。わりと、美人なのである。自信が無いと業界ではやっていけないのだから、だれよりも、輝いて、だれよりも心に残る、常にそうありたいと、願っていた。
来る日も来る日も、私の前で顔を覗き込む人たち。順番は守って欲しいものだ。あまり、顔が近すぎると、少しだけ、怖さがあったが、それは、どちらかというと、かなりのマニア、テクニカルな一部だけであって、大抵は順番を守って、手を添えていく。
――次第に、息が白くなってきた。年末になると、私のスケジュールはぎっしり詰まってくる。マネージャーも考えて欲しいものだ。いくら私が、売れっ子で若いからと言っても、限度があるでしょうに? きちんと考えてもらえないだろうか? これは上層部にかけあう案件だ。
――年が明けても、私には休みなどは、無い、売れる今、ここで人気を独り占めしないと、争いは厳しい、いつもより、硬さと柔らかさを使い分け、お客さんに、笑顔で挨拶した。
これも、生き抜くためのテクニック、ギリギリまで、求めさせて、後は、お任せ。それ以上という、限界線は超える事はない。乱暴に扱われる心配は皆無、警備員さんのキツイ視線が、監視している。監視カメラも私を捉えている。
私は、どこに行っても、ひっぱりだこ。スケジュールの緩和を上申したが、受け入れられず、今がチャンスなのよと、事務所の社長は、マネージャーと言いあっていた……。
それでも、私は、嬉しいので、毎日、新しい手に触れながら、センターを守り続けた。
――今日は、冷える。吐く息が白い……スケジュールの関係で、朝は真っ暗のまま、出かけていく……。今日は明かるならずに、白い粉が、ユラユラと舞い降りてきた。雪であった。早朝から私を待つ行列ができていた。これ以上雪が降ると、お客さんも帰りがこまってしまうからであろう……。今日のステージは、早めに打ち切られる異常事態となった。
翌朝は、雪が積もってしまったせいで、ステージに立つことは、出来なかった。正直悔しいが、雪であれば、お客さんもこれないのだから、仕方がない。一日中降り注いだ雪は、翌日の朝には、止んでいた。
凍結という、マネージャーの言葉から、今日のスケジュールも変わり、待機となった。楽屋から出る事は無かった。
翌日、真っ暗で凍えるような寒さのなか、私は目的地に向かった。既に、待ち構えてるファンの皆さんが、行列を作っていた。目的は、私。たった、二日であったのだが、非常に長く感じた、今日は頑張って、手を振ろう。センターは譲れない……。
毎日、体を酷使した――――。
――次第に、暖かくなってきて、朝のお日様が昇るのも、早くなってきた。私は、明るくなってきた車内で、目的地へ……。遠目にみると、いつぶりだろう、直接瞳に映りこんだのは、白とピンクの花びら……桜だ。綺麗。私は見とれてしまった。白は私も負けてはいないのだけれど、ピンクは、ズルいと少しだけしっとした。
ライブは滞りなく、いつも通りに終わった。
――マネージャーが慌てている、珍しいどうしたのだろうか? 社長もだ、一体なにがあったの、今日は久しぶりのオフ……翌日もオフ……どうしたのだろう? 外は暖かくなり、お日様の登るのがはやくなっていた。
今日も、オフであった。私は、いったいどうしたのだろう? マネージャーに詰め寄るが、返答が帰ってこなかった、困惑した顔を今でも、覚えている。私は鏡をみると、いつのまにか、私の売りである、芯の強さがなくなって、細くなっていった……。
受け入れられなかった。
――気温はさらにあがり、桜は散って、青々とした葉が姿を現していた。5月中旬、夏日の予想とのこと。今年初らしい、どこからか聞こえてきた。マネージャーではない、最近マネージャーの姿が見えない。
四月も終わりを迎えるにあたり、私はステージに立つことは、無かった。鏡に映る私は、とても、お客さん、ファンの皆様の前に、出れるようではなかった――。
私の名前は、白菜
今は、旬の春キャベツにセンターを奪われていったのであった――。


