心霊物件に住む幼馴染と暮らしたら、幽霊が俺たちの恋愛応援団になった件


 翌日、俺は胸元についた大地のキスマークを見て得意な気持ちになりながらも、シャツを着て荷造りを終えた。
 ロビーにはすでに白井がいて、タブレットをいじっている。彼は俺と大地を見つけると、明るく笑って手を振った。
「俺、チェックアウト終わらせてるから」
 このホテルは受付での手続きが必要らしく、大地がそれを引き受けてくれた。
 俺は白井に手招きされ、彼の隣に座る。
「見てみて! 昨日一晩で編集終わったから、新幹線の中ででもチェックしてほしいんだけど……」
 そこまで言って、彼はふと俺の首筋に視線をやる。
 見えていないことは何度も確認したはずだ、と俺はシャツの胸元を握る。首まで隠れる服だが、やはり何かあるだろうか。
 そんな俺の反応を見て、白井の目がニィと細められた。
「大地は、いい男だっただろ」
 その顔に、はっとする。
「……バレてる?」
「そりゃ、二人の雰囲気が違うし? もともと両片思いみたいだったし」
 そうなのか、と俺はなんとも言えない気持ちになる。
 そこで、ふと気がついた。
「……大地に男同士のやり方について教えたのって、もしかして……?」
 彼は笑みを浮かべただけで答えなかった。
 もともとそういった知識がなさそうな大地にしてはよく知っていたな、と昨夜もう少し聞いておけばよかった。
 白井は楽しそうに続ける。
「いいじゃん。普通無理やりやって大惨事になるところだよ? AVみたいにいきなりうまく行くわけないんだしさ。颯太のことを考えて我慢が出来るんだから、本当にいい男だよな」
 ケラケラと笑う彼に、恨みがましい目を向け、すぐに大きく息を吐いた。
「……まぁ、でも、昨日から俺と大地は恋人同士だし……、これからどんどんチャンスはあるんだろうし……」
 俺の言葉に、ついに白井は吹き出した。
 俺自身、こんなに堂々と大地との関係性を他人に言う日がくるとは思わなかった。
 彼の目がほほえましそうに細められる。
「よかったじゃん」
 端的な言葉だった。しかし、彼が本当にそう思っているのだろうことが伝わってきて、俺はむず痒い気持ちになったのだった。
 大地が戻ってきて、三人で朝でもやっている定食屋に入る。そうして食べ終わり、幽霊たちへのお供え物のまんじゅうを買って、新幹線の自由席で東京に戻ったのだった。