心霊物件に住む幼馴染と暮らしたら、幽霊が俺たちの恋愛応援団になった件


 その日の夜、俺は何度も文面を書き直し、大地にメッセージを送った。
『ごめん、もしかしたら、もう、戻らないかも。荷物を送ってくれないか?』
 一時間近く悩んだ割には、こんなそっけない文章で自分の口下手ぶりに辟易する。
 大地からの返事は、そこから更に三十分後だった。いつもすぐに返信を返してくれる彼からすると珍しい。
『何かあったのか?』
 簡潔な言葉に、何となく似た者同士だと思った。
『家、継ぐかも。まだ、正式に親には話してないけど……』
 返信を打つと、すぐに大地から電話があった。
「もしもし」
 着信を取り、スマホを耳に当てる。
『ああ……、その、元気か?』
 彼の声は気まずそうだった。
「うん。……大地も……、元気?」
『ああ……。なんで家を継ぐって話になったんだ?』
 見えていないとわかりつつも、俺は曖昧な笑みを浮かべる。
「こっちに帰ってきて、色々話を聞いてそれもいいかなって……」
 そうすると、やはり大地への恋心は心の中で焼却処分しなければならないだろう。東京での日々がまるで夢のように思えてきた。事実、幽霊が憑依したぬいぐるみとしばらく一緒に暮らしていただなんて言っても誰も信じないだろう。
 大地の近くにいて、買ってきたお菓子を食べて、笑いあって。そんな日々はこれからの人生の中で、記憶の中に埋没していくのだろうか。
 ずっと痛んでいた胸がさらに痛みを増す。
『……無理してないか?』
 彼の声が低くなる。ぐ、と唇を引き結んだ。
「まさか。……いつも通りだよ」
 告げると大地が息を吸うような音が聞こえる。
『……わかった。荷物はきちんと送る』
 彼の言葉は俺の願い通りなのに、なぜか突き放されたようにも思えてしまった。俺はぶんぶんと頭を振ってその考えを打ち消す。被害妄想も甚だしい。
「うん。……ありがと」
 少しの沈黙が発生し、俺は何か話題はないかと脳内を漁る。しかし、これといったことは思いつかず、結局そのまま通話を終えることになった。
「じゃあ、おやすみ」
 幽霊たちの様子を聞けばよかったと思い当ったのは、電話を切ってすぐその後のことだった。