無事に撮影を終え、白井はピザを頼んで酒盛りして帰っていった。
その三日後、動画が完成したという白井から大地のスマホにメッセージが届いた。配信サイトの動画投稿ページのリンクが貼られており、まだ限定公開の状態でURLを知っている人しか見られないようだった。
直してほしいところがあったら言ってというコメントがつけられている。大地と一緒に確認したが、ドキュメンタリー映像としてよくできていると思った。
特にぬいぐるみのダンスシーンは実写だなんて信じられないほどにぬるぬると動き、見せ方も巧みだった。ぬいぐるみ達もそれを見て嬉しそうにはしゃいでいる。
「特に問題はないか?」
大地が尋ねてきて、俺もぬいぐるみ達もふるふると首を振る。
俺としては思っていた以上に自分がよく撮れていて、内心で白井のことを見直していた。
問題ないと大地が送ったさらに二日後の火曜日、動画がアップされ、瞬く間に再生数が十万再生を超えた。白井のチャンネル史上、一番のバズだった。
「すごすぎじゃない!? これ、今まで俺の動画を見なかった層にまで届いてるんだけど!」
そう言って白井は嬉しそうに画面を見せてくる。
動画投稿をしてから二日後のことだった。
今、彼は懐が温かいからか、俺たちの部屋に到着するなりピザを三枚も頼んでくれた。
俺が見た時よりもさらに数字が増えており、話題が話題を呼んだのか、今では五十万再生まで到達しようとしている。
「へぇ……、本当にすごいじゃん」
特にぬいぐるみのダンスが好評で、白井が『幽霊が出た瞬間を捉えました』とおどろおどろしく言っているのに対して出てきたぬいぐるみ達がゆるふわ脱力フェイスだったからか、そのことにも一定の注目が集まっていた。
ぬいぐるみ達は目を輝かせて白井のタブレットの画面を見ている。コメントの多くは『どうせAIでしょ?』と疑ってかかるものばかりだったが、おおむね好評だった。
「おかげでぬいぐるみが俺の作ったシリーズだと知ってくれた人からの注文が絶えないんだ」
大地は大地で違った意味でホクホクと頬を緩ませている。実際、注文が殺到したおかげで彼は自由時間はずっとミシンを動かしていた。
「ああ……、それで……」
納得したという顔をして白井はリビングの端の段ボールに詰められている大量のぬいぐるみを見た。あとは梱包するだけだが、なかなか手が回っていないのだ。
「大学がある日だと、一日に作れるのは多くても一つ二つだからな。とはいえ、今は数か月先まで注文が来ている。毎日大忙しだ」
「嬉しい悲鳴じゃん。ほら、颯太のアイシングクッキーも一度食べてみたいってこんなにコメントあるし」
彼の言葉に確認すると、確かにアイシングクッキーに対するコメントもあり、おいしそうという言葉が並んでいて胸が跳ねた。
「本当だ……」
「俺もこの動画編集しながら颯太のクッキー思い出してお腹空いちゃってたし、颯太も売り出してみたらいいのに」
白井の言葉に苦笑を返す。
「それは無理なんだよな。保健所でちゃんと届け出を出さなくちゃいけないみたいで……。さすがに他人の家で許可申請するわけにもいかないだろ?」
実は俺も少し調べたのだ。なるほど、と白井は頷いた。
「なかなか人生うまくいかないものだなぁ……。まぁでも、もしかしたら面接のネタくらいにはなるんじゃない? あれ俺! みたいな」
そうなればいいのだけれど、と苦笑を浮かべつつも、俺は軽く流しておいた。
そうして、チャイムが鳴り、ピザが届けられ、宴会へと突入したのだった。

