俺は「何」と心中しようとしたんだろう




 昼食を食べ終わり、暇になった俺は図書室へ向かうことにした。自由に使っていいと先ほどアナウンスがあったのだ。
 子供の頃読んでいた本を手に取る。昔は一時間近くかけて読んでいた本だというのに、今は十分もしないで目を通すことが出来た。
 次の本を手に取ろうとしたところで、ふと気がつく。
 図書準備室には歴代の卒業アルバムが収められていたはずだ、と。
 俺はふらふらとそちらへ向かう。もしかしたら朔弥についての情報が載っているかもしれないと思ったのだ。
 自分の体の痣で死ぬかもしれないと不安に思っているよりは、そうして他の事を考えて気を紛らわしたかった。
 自分の卒業年度のアルバムを手に取る。朔弥は見た感じ俺と同い年に思えていた。とはいえ、小学校の頃には出会っていなかったと高宮さんも言っていたし、何の参考にもならないかもしれないが。
 思った通り、アルバムを見てもこれと言った情報は得られなかった。
 帰宅許可が出たら中学校にまで行こうか。そんな事を考え、アルバムを閉じ、振り返ると図書室の方に高宮家の使用人の一人の姿が見えた。
 確か、高宮さんを促して早く避難するようにと叫んでいた女性であり、現在同じ教室で寝泊まりしている同士でもある。気が付けば、俺のいる教室は高宮さんの家の使用人が集まるようになっていて、まるで家のような気の知れた雰囲気になっていた。
 彼女も俺に気が付いてぺこりと会釈をした。俺は口角をあげて彼女の元へと行く。
「お疲れ様です。本を探しに来たんですか?」
 尋ねると、彼女はどこか気恥ずかしそうに持っている本を見せてくれた。子供の頃読んだことのある有名な児童文学だった。
 何となく親近感を覚える。三十代後半に見える彼女は今度は俺の方を見た。
「佐伯君はどうしたの? そこは準備室よね? 何か本があるの?」
 俺は首を振った。
「いえ……、卒業アルバムを見ていたんです。……その、髪が真っ白で金色の目を持つ人を知りませんか? 朔弥って言うんですけど」
 もしかしたら知っているかもしれない、と尋ねてみる。彼女は少し口を開けた後、すぐに返した。
「知らない」
 あまりにもはっきりと、それも冷たく言われて戸惑う。すぐに彼女は柔和な笑みを浮かべた。
「悪いけど、わからないわ。ごめんなさいね?」
 小首をかしげて告げる彼女の声は先ほどまでと同じに戻っていてホッとする。
「そんな奇抜な外見ならこの島の名物になっていてもおかしくないでしょうしね」
 俺は頬をほころばせる。言われてみればその通りだった。
「ですよね……。俺も卒業アルバムで探していたんですけど、いなくて」
「そうね。島民は皆この小学校に通ってるから、ここのアルバムになければないんじゃない?」
 返され、その通りだな、と俺は頷きを返した。
「そうですよね……。ありがとうございました」
「いいえ。また気になることがあれば、何でも聞いてね」
 彼女は小さく手を振ると、踵を返して歩いていく。
 今は災害時なので司書も図書係も機能しておらず、皆勝手に借りて自己責任で保管するという流れが出来ていた。
 俺も彼女に倣い、適当な本を取っていく。
 朔弥についての情報が得られなかった分、何か娯楽があればいいと思った。