「蓮せんせー! ここ教えてー」
「ずるいー! 私が先に約束してたのにー!」
「お前たち! 蓮を困らせるんじゃない! 特別に俺様が教えてやるから、黙って聞いてろ!」
「えー、悠太じゃヤダー」
「ワガママ言うな! ほら、ここはココをこうしてだな」
あれから数週間後。
帰ってきたばーちゃんが店番をする放課後の駄菓子屋は、さらに騒がしくなっていた。
というのも、俺が蓮と一緒になって、小学生たちへ勉強を教えるようになったからだ。
「悠太ー。ここ教えてー」
「えー。俺、中学の問題なんて教えられないぞ。蓮に聞けよ」
「やだー。悠太がイイー」
「ったく。わかったって。ちょっと待ってろって、うわっ!」
俺はトーマが座っている席に向かおうとしたが、蓮が俺の腕を突然掴んで引っ張った。
「ちょ、ちょっと! 蓮! なんだよ、一体」
「いいから、ちょっと付いてきてください」
「あーあ、蓮先生ー。嫉妬は見苦しいですよー」
満面な笑みを浮かべるトーマを蓮は大人げなく睨みつけると、無言で障子を開けて俺を廊下まで引っ張っていった。
「れ、蓮?」
俺の問いかけに返事はないまま障子が閉められると、蓮は俺の腕を掴んでいた手を離して深い溜め息をついた。
「な、なんだよ……。俺、なんか蓮を怒らせることしたか?」
数週間前、勉強を教える蓮の手伝いをしたいと俺が言い出したとき、蓮はとても嬉しそうにしていた。
だが、どうにも最近の蓮は苛立っているように思えた。
(俺が勉強教えるのがヘタだから、もしかしてイライラしているのか……?)
たしかに俺は、誰かに勉強を教えるなんて人生でしたこともなかったし、自分でも教えるのはうまいと思っていない。
蓮の苛立ちの原因が俺にあるなら、蓮の役に少しでも立てればと思って申し出たが、邪魔しているのと一緒だ。
(あ、まずい……)
自分が蓮にとって邪魔な存在だと思うと、途端に目頭が熱くなってきてしまい、俺は唇を噛みしめて顔を俯かせた。
「ご、ごめんな……。俺、教えるのヘタで……。蓮をイライラさせてるよな……」
「は? って、えっ? な、なんで悠太先輩が泣きそうになってるんですか!」
微かだが唇を震わせる俺に気付いた蓮は、俺の顔を覗き込むと、そのまま慌てて俺を包み込むように抱き締めてきた。
「蓮……」
抱き締めてくる腕に力が込められると、俺の心臓も同じくらいキュッと締め付けられた。
俺は甘えるように、蓮の胸に顔を押し付けた。
「別に泣いてないし……」
「何言ってんですか。そんな泣きそうな顔して。だいたい、オレは別に悠太先輩に対してイライラなんてしてないですよ」
「えっ……?」
俺は蓮の胸に埋めていた顔を上げると、蓮の顔を至近距離で見上げた。
蓮の表情は真剣で、俺を気遣って取り繕うような嘘をついているようには、とても見えなかった。
「で、でも……イライラはしてるよな?」
「それは……」
俺の質問に蓮はバツが悪そうに表情を曇らせたため、俺はこのままではいられないと、蓮の胸を手で押して離れようとした。
だが、俺が胸を押すと、もっと強い力で抱き締められてしまう。
それはまるで、俺を逃がさないといっているかのようだった。
「……。悠太先輩。これからオレが話すこと、ダサイとか……カッコ悪いとか思わないでくれますか?」
「なに言ってんだよ。蓮のこと、俺がそんなふうに思うわけないだろ」
「……ッ」
蓮は俺を抱き締めていた腕の力を緩めて身体を少しだけ離すと、俺の顔を覗き込むようにして上から見つめてきた。
蓮の瞳の中に、俺の顔が映る。
おそらく俺の瞳には、目の前で不安そうな表情をしている蓮の顔が、少し潤んだ状態で映し出されていることだろう。
俺は蓮を安心させようと、少しだけ背伸びをして、蓮のおでこに俺のおでこをくっつけた。
「バーカ。蓮のくせに、俺に隠し事しようなんて百年早いんだよ。とっとと、全部言えって」
「……。あーもう、ほんとに……」
蓮は呆れるように、でも幸せそうにおでこを擦り付けてくると、俺の頬を両手で包み込んだ。
「笑わ……ないでくださいね……」
恥ずかしそうにする蓮へ向かって、俺はそっと頷いた。
「トーマが……悠太先輩に懐いているのが、気に食わないんです……」
「えっ……?」
(それって……俺に嫉妬してるってこと?)
たしかにサクラさんが飛び出していったあの一件以来、トーマは俺に懐いていると自分でも思う。
今まであんなにも蓮に懐いていたトーマが俺に急に懐き始めたら、それはおもしろくないだろう。
俺は見つめてくる蓮から、そっと目を逸らした。
「そ、そっか……。ごめんな、気付かなくて。俺どうしたらいい? トーマのこと、特別に接しているつもりはないんだけど、もっと俺から気を付けるべきか?」
「ええ。できればできるだけ距離を……って、なんでまた辛そうな顔になってるんですか? そんなにトーマが大事ですか?」
自分では表情に出しているつもりはなかったが、俺の頬を包みこむ手に力が込められたのを感じて、目元が熱くなったのを感じた。
「ごめん俺、蓮がそんなにトーマのこと大事にしてるって知らなくて……」
「ええ、そうですね。オレがトーマを……って、一体なんの話してるんですか?」
目を丸くする蓮に、俺は首を傾げた。
「えっ……? だから、俺がトーマと仲いいのがおもしろくないんだろ?」
「なんだか引っかかる聞き方をされている気がしますが……まあそうです」
「それって、俺にトーマをとられたくないからだろ?」
「……は?」
「えっ……?」
俺たちはお互いに首を傾げて顔を見合わると、蓮は俺の肩を両手で掴みながら顔を俯かせた。
「はぁー……。何を言い出したかと思えば……。そういえば、あのとき流れで言ってしまって、ちゃんと答えを貰ってなかった気がします……」
大きく深い溜め息をついた蓮は、何かを決意したように俯かせていた顔上げると、真っ直ぐ俺の目を見つめてきた。
「改めて言います。好きです、悠太先輩」
「えっ……?」
(あ、あれ? そういえば……)
サクラさんが駄菓子屋を飛び出して逃げてしまったあの日、蓮から告白されたような気がする。
だが、俺は自分の中で答えは出ていたので、てっきり自分の気持ちも伝えた気になっていた。
「俺、言ってなかったのか……」
「そうですね。少なくても、オレは聞いてないです」
「いや、だってさー……」
言い訳になるが、あれから母さんとばーちゃんが帰ってくるまで、俺たちは毎晩一緒に晩飯を作って二人で食べていた。
蓮が家に帰っても一人で眠れるようにと、寝るギリギリまで電話するようにもなった。
母さんたちが帰国してからは、蓮のマンションへ行くようになって、小学生たちの勉強会が終わると、どちらかのマンションに寄るのがもう日課になっている。
これは付き合っている以外のなにものでもないと思っていたが、自分がちゃんと言葉にしていなかったことに気付き、俺は姿勢を正した。
「なぁ、蓮。俺……実はやりたいことあるんだ」
「な、なんですか。急にそんな畏まって。って、告白の返事よりも先に話すことですか?」
蓮の質問に俺は深く頷いて、もう一度蓮の顔を真っ直ぐ見つめた。
「俺、蓮のこと蓮先生って呼びたいんだ。それで俺のこと、いつか先輩じゃなくて、先生って呼んで欲しいって思ってるんだ」
「それって……」
蓮は驚いた様子で目を丸くして、俺の肩を掴む手に力を込めてきた。
「俺も教職目指そうって思ってるんだ。俺も……蓮が目指す、同じ世界を見たいって思ったんだ」
「悠太、先輩……」
「な、なんか自分で口にしてみたらストーカーみたいだな。将来とか言い出して、重たいし……」
「そんなことないです! オレとのこと真剣に考えてくれて、本当に嬉しいです」
蓮は必死で首を横に振ると、俺のことを抱き締めてきた。
「蓮……」
「一緒に叶えましょうね、悠太先輩。いえ、悠太先生」
「ねぇ、ねぇー。その話もう終わる?」
突然背後からトーマの声が聞こえて、俺は蓮から慌てて離れて振り向くと、トーマがしゃがんだ状態で障子を少しだけ開けて顔を覗かせていた。
「と、トーマ!」
「トーマ。今大事な話をしてるから、邪魔しないでくれるか?」
蓮はまるで俺を後ろに隠すように、トーマと俺の間で腕を組んで仁王立ちした。
「邪魔なんかしてないよー。とりあえず、今は大人しくしているつもりだよ?」
「今は?」
「だって、どうせ中学生のままじゃ、さすがに悠太も相手にしてくれないでしょ? でも、高校卒業したら悠太はボクが貰うから! そのときまで悠太をよろしくね、蓮」
トーマは嬉しそうな顔で、俺に手を振ってきた。
(えっ? あっ? お、俺、貰われちゃうの?)
俺がトーマの言っていることが理解できずにいると、蓮は苛立ったように組んでいた腕を指先でトントンとさせた。
「トーマ。自分が何言ってるのかわかってるのか?」
「わかってるよ。あと数年くらいなら、蓮にあげるよ。でも、悠太のそれからの長い人生はボクがもらうから。ねー、悠太。先生になるなら、ボク、高校は悠太のところ受験するよ。だから教育実習に来てよー」
「あ、ああ。たしかああいうのって母校に行くんだよな。それなら……」
「バッ! 悠太先輩、なに安易に返事してるんですか!」
「えっ? なんで俺が怒られるの?」
「悠太先輩の未来は全てオレのものです! 誰にもあげるつもりはないですからね!」
「ギャー! 蓮、お前また恥ずかしいことを! そういうのいいかげんにしろ!」
トーマに邪魔された俺は、また蓮への返事ができなかった。
だが、心の中ではもう決まっている。
(俺は甘えたがりの後輩である蓮が、大好きだ!)
「ずるいー! 私が先に約束してたのにー!」
「お前たち! 蓮を困らせるんじゃない! 特別に俺様が教えてやるから、黙って聞いてろ!」
「えー、悠太じゃヤダー」
「ワガママ言うな! ほら、ここはココをこうしてだな」
あれから数週間後。
帰ってきたばーちゃんが店番をする放課後の駄菓子屋は、さらに騒がしくなっていた。
というのも、俺が蓮と一緒になって、小学生たちへ勉強を教えるようになったからだ。
「悠太ー。ここ教えてー」
「えー。俺、中学の問題なんて教えられないぞ。蓮に聞けよ」
「やだー。悠太がイイー」
「ったく。わかったって。ちょっと待ってろって、うわっ!」
俺はトーマが座っている席に向かおうとしたが、蓮が俺の腕を突然掴んで引っ張った。
「ちょ、ちょっと! 蓮! なんだよ、一体」
「いいから、ちょっと付いてきてください」
「あーあ、蓮先生ー。嫉妬は見苦しいですよー」
満面な笑みを浮かべるトーマを蓮は大人げなく睨みつけると、無言で障子を開けて俺を廊下まで引っ張っていった。
「れ、蓮?」
俺の問いかけに返事はないまま障子が閉められると、蓮は俺の腕を掴んでいた手を離して深い溜め息をついた。
「な、なんだよ……。俺、なんか蓮を怒らせることしたか?」
数週間前、勉強を教える蓮の手伝いをしたいと俺が言い出したとき、蓮はとても嬉しそうにしていた。
だが、どうにも最近の蓮は苛立っているように思えた。
(俺が勉強教えるのがヘタだから、もしかしてイライラしているのか……?)
たしかに俺は、誰かに勉強を教えるなんて人生でしたこともなかったし、自分でも教えるのはうまいと思っていない。
蓮の苛立ちの原因が俺にあるなら、蓮の役に少しでも立てればと思って申し出たが、邪魔しているのと一緒だ。
(あ、まずい……)
自分が蓮にとって邪魔な存在だと思うと、途端に目頭が熱くなってきてしまい、俺は唇を噛みしめて顔を俯かせた。
「ご、ごめんな……。俺、教えるのヘタで……。蓮をイライラさせてるよな……」
「は? って、えっ? な、なんで悠太先輩が泣きそうになってるんですか!」
微かだが唇を震わせる俺に気付いた蓮は、俺の顔を覗き込むと、そのまま慌てて俺を包み込むように抱き締めてきた。
「蓮……」
抱き締めてくる腕に力が込められると、俺の心臓も同じくらいキュッと締め付けられた。
俺は甘えるように、蓮の胸に顔を押し付けた。
「別に泣いてないし……」
「何言ってんですか。そんな泣きそうな顔して。だいたい、オレは別に悠太先輩に対してイライラなんてしてないですよ」
「えっ……?」
俺は蓮の胸に埋めていた顔を上げると、蓮の顔を至近距離で見上げた。
蓮の表情は真剣で、俺を気遣って取り繕うような嘘をついているようには、とても見えなかった。
「で、でも……イライラはしてるよな?」
「それは……」
俺の質問に蓮はバツが悪そうに表情を曇らせたため、俺はこのままではいられないと、蓮の胸を手で押して離れようとした。
だが、俺が胸を押すと、もっと強い力で抱き締められてしまう。
それはまるで、俺を逃がさないといっているかのようだった。
「……。悠太先輩。これからオレが話すこと、ダサイとか……カッコ悪いとか思わないでくれますか?」
「なに言ってんだよ。蓮のこと、俺がそんなふうに思うわけないだろ」
「……ッ」
蓮は俺を抱き締めていた腕の力を緩めて身体を少しだけ離すと、俺の顔を覗き込むようにして上から見つめてきた。
蓮の瞳の中に、俺の顔が映る。
おそらく俺の瞳には、目の前で不安そうな表情をしている蓮の顔が、少し潤んだ状態で映し出されていることだろう。
俺は蓮を安心させようと、少しだけ背伸びをして、蓮のおでこに俺のおでこをくっつけた。
「バーカ。蓮のくせに、俺に隠し事しようなんて百年早いんだよ。とっとと、全部言えって」
「……。あーもう、ほんとに……」
蓮は呆れるように、でも幸せそうにおでこを擦り付けてくると、俺の頬を両手で包み込んだ。
「笑わ……ないでくださいね……」
恥ずかしそうにする蓮へ向かって、俺はそっと頷いた。
「トーマが……悠太先輩に懐いているのが、気に食わないんです……」
「えっ……?」
(それって……俺に嫉妬してるってこと?)
たしかにサクラさんが飛び出していったあの一件以来、トーマは俺に懐いていると自分でも思う。
今まであんなにも蓮に懐いていたトーマが俺に急に懐き始めたら、それはおもしろくないだろう。
俺は見つめてくる蓮から、そっと目を逸らした。
「そ、そっか……。ごめんな、気付かなくて。俺どうしたらいい? トーマのこと、特別に接しているつもりはないんだけど、もっと俺から気を付けるべきか?」
「ええ。できればできるだけ距離を……って、なんでまた辛そうな顔になってるんですか? そんなにトーマが大事ですか?」
自分では表情に出しているつもりはなかったが、俺の頬を包みこむ手に力が込められたのを感じて、目元が熱くなったのを感じた。
「ごめん俺、蓮がそんなにトーマのこと大事にしてるって知らなくて……」
「ええ、そうですね。オレがトーマを……って、一体なんの話してるんですか?」
目を丸くする蓮に、俺は首を傾げた。
「えっ……? だから、俺がトーマと仲いいのがおもしろくないんだろ?」
「なんだか引っかかる聞き方をされている気がしますが……まあそうです」
「それって、俺にトーマをとられたくないからだろ?」
「……は?」
「えっ……?」
俺たちはお互いに首を傾げて顔を見合わると、蓮は俺の肩を両手で掴みながら顔を俯かせた。
「はぁー……。何を言い出したかと思えば……。そういえば、あのとき流れで言ってしまって、ちゃんと答えを貰ってなかった気がします……」
大きく深い溜め息をついた蓮は、何かを決意したように俯かせていた顔上げると、真っ直ぐ俺の目を見つめてきた。
「改めて言います。好きです、悠太先輩」
「えっ……?」
(あ、あれ? そういえば……)
サクラさんが駄菓子屋を飛び出して逃げてしまったあの日、蓮から告白されたような気がする。
だが、俺は自分の中で答えは出ていたので、てっきり自分の気持ちも伝えた気になっていた。
「俺、言ってなかったのか……」
「そうですね。少なくても、オレは聞いてないです」
「いや、だってさー……」
言い訳になるが、あれから母さんとばーちゃんが帰ってくるまで、俺たちは毎晩一緒に晩飯を作って二人で食べていた。
蓮が家に帰っても一人で眠れるようにと、寝るギリギリまで電話するようにもなった。
母さんたちが帰国してからは、蓮のマンションへ行くようになって、小学生たちの勉強会が終わると、どちらかのマンションに寄るのがもう日課になっている。
これは付き合っている以外のなにものでもないと思っていたが、自分がちゃんと言葉にしていなかったことに気付き、俺は姿勢を正した。
「なぁ、蓮。俺……実はやりたいことあるんだ」
「な、なんですか。急にそんな畏まって。って、告白の返事よりも先に話すことですか?」
蓮の質問に俺は深く頷いて、もう一度蓮の顔を真っ直ぐ見つめた。
「俺、蓮のこと蓮先生って呼びたいんだ。それで俺のこと、いつか先輩じゃなくて、先生って呼んで欲しいって思ってるんだ」
「それって……」
蓮は驚いた様子で目を丸くして、俺の肩を掴む手に力を込めてきた。
「俺も教職目指そうって思ってるんだ。俺も……蓮が目指す、同じ世界を見たいって思ったんだ」
「悠太、先輩……」
「な、なんか自分で口にしてみたらストーカーみたいだな。将来とか言い出して、重たいし……」
「そんなことないです! オレとのこと真剣に考えてくれて、本当に嬉しいです」
蓮は必死で首を横に振ると、俺のことを抱き締めてきた。
「蓮……」
「一緒に叶えましょうね、悠太先輩。いえ、悠太先生」
「ねぇ、ねぇー。その話もう終わる?」
突然背後からトーマの声が聞こえて、俺は蓮から慌てて離れて振り向くと、トーマがしゃがんだ状態で障子を少しだけ開けて顔を覗かせていた。
「と、トーマ!」
「トーマ。今大事な話をしてるから、邪魔しないでくれるか?」
蓮はまるで俺を後ろに隠すように、トーマと俺の間で腕を組んで仁王立ちした。
「邪魔なんかしてないよー。とりあえず、今は大人しくしているつもりだよ?」
「今は?」
「だって、どうせ中学生のままじゃ、さすがに悠太も相手にしてくれないでしょ? でも、高校卒業したら悠太はボクが貰うから! そのときまで悠太をよろしくね、蓮」
トーマは嬉しそうな顔で、俺に手を振ってきた。
(えっ? あっ? お、俺、貰われちゃうの?)
俺がトーマの言っていることが理解できずにいると、蓮は苛立ったように組んでいた腕を指先でトントンとさせた。
「トーマ。自分が何言ってるのかわかってるのか?」
「わかってるよ。あと数年くらいなら、蓮にあげるよ。でも、悠太のそれからの長い人生はボクがもらうから。ねー、悠太。先生になるなら、ボク、高校は悠太のところ受験するよ。だから教育実習に来てよー」
「あ、ああ。たしかああいうのって母校に行くんだよな。それなら……」
「バッ! 悠太先輩、なに安易に返事してるんですか!」
「えっ? なんで俺が怒られるの?」
「悠太先輩の未来は全てオレのものです! 誰にもあげるつもりはないですからね!」
「ギャー! 蓮、お前また恥ずかしいことを! そういうのいいかげんにしろ!」
トーマに邪魔された俺は、また蓮への返事ができなかった。
だが、心の中ではもう決まっている。
(俺は甘えたがりの後輩である蓮が、大好きだ!)


