家に帰ると、靴もろくに揃えないまま部屋に直行した。ノートを机の上に広げると、無意識に肩に力が入る。
「よし、読むか……」
喉の奥が少しだけ渇く。さっきまで普通に会話していたのに、文字になると途端に距離が変わる気がする。それに、あの日からずっと気になっていた答え合わせが、やっとできる。
まずは、自分が書いたページから……。
指先でページの端をつまんで、ゆっくりと開いた。
先週の日曜日に書いたはずなのに、内容はほとんど覚えていなかった。思い出そうとしても、ぼんやりとしか浮かばない。聞きたかった、あの質問を書いたことだけは覚えている。
少しだけ楽しみにしながら、開いたページに目を落とす。
“6月9日 日曜 雨
ひょんなことから後輩と交換日記をすることになった。続くか分からないけど。
ハンカチありがとう。持って帰って、一応洗濯しました。クッキーは俺のセンスじゃないから。
書くことないので、質問。
湊って彼女いるの?こういうのは、彼女とやった方がいいと思う。”
「……」
しばらく、固まる。読み返すほどに、じわじわと何かが込み上げてくる。顔が熱くなるのが分かる。
やばい。これは、やばい。
「マジで、なんでこんなこと書いてんだよ……」
手で顔を覆う。
今すぐこのページを破り捨てたい衝動に駆られた。今考えたら、いきなり彼女の有無を聞くとか、おかしい。意味が分からない。どういう神経してるんだ、あの時の俺。
というか、「彼女とやった方がいいと思う」ってなんだ。誰目線だよ。
冷静に読めば読むほど、ツッコミどころしかない。文章も雑だし、距離感もおかしい。最悪だ。
ノートを閉じかけて、やめる。まだ質問の答えを見ていない。
もういい。消せないなら、受け入れるしかない。指先でこめかみを軽く押さえながら、もう一度ページを見る。
恥ずかしさは消えないけど、それ以上に気になることがあった。視線を次のページにずらす。
“6月12日 水曜 曇り→雨
今日は先輩と会えてうれしかった。
最初、先輩が来てくれるかちょっとだけ不安だったけど、ちゃんといてくれて安心。あのベンチ、やっぱり落ち着く。
途中で雨が降ってきて、ラッキー。相合傘できるし、神様にちょっぴり感謝。
それと質問の答え。
彼女は、今はいません。なんで気になったんですか?(^^)”
「……相合傘、って……」
読み終わって、少しだけ笑ってしまった。
あれ、湊も意識してたのか。というか、「ラッキー」ってなんなんだ……。普通に考えれば、濡れるし面倒なだけなのに。
頭の中で軽く整理しようとする。でも、考えれば考えるほどズレていく感じがする。というか、湊の考えを理解しようとするだけ無駄なのかもしれない。遅刻したから散歩に行こうとするやつだ。理解できるはずもない。
「……彼女は、いないのか」
不思議だ。イケメンなのに。しかも、面倒見がよさそうで優しい。
理由を考えようと頭を捻った。いくつか仮説が浮かぶが、どれもあり得そうで、どれも決定打にはならない。
それに……。「なんで気になったんですか?(^^)」って。…………なんでだ?
気づけば、真剣に考えていた。
それと同時に、胸の奥がほんの少しだけ、もやもやする感覚があった。理由は、よく分からない。分からないのに、その感覚だけは確かにあって。それが、妙に引っかかる。
自分でも理解できない感情に、少しだけ眉をひそめると、ノートを閉じた。
「よし、読むか……」
喉の奥が少しだけ渇く。さっきまで普通に会話していたのに、文字になると途端に距離が変わる気がする。それに、あの日からずっと気になっていた答え合わせが、やっとできる。
まずは、自分が書いたページから……。
指先でページの端をつまんで、ゆっくりと開いた。
先週の日曜日に書いたはずなのに、内容はほとんど覚えていなかった。思い出そうとしても、ぼんやりとしか浮かばない。聞きたかった、あの質問を書いたことだけは覚えている。
少しだけ楽しみにしながら、開いたページに目を落とす。
“6月9日 日曜 雨
ひょんなことから後輩と交換日記をすることになった。続くか分からないけど。
ハンカチありがとう。持って帰って、一応洗濯しました。クッキーは俺のセンスじゃないから。
書くことないので、質問。
湊って彼女いるの?こういうのは、彼女とやった方がいいと思う。”
「……」
しばらく、固まる。読み返すほどに、じわじわと何かが込み上げてくる。顔が熱くなるのが分かる。
やばい。これは、やばい。
「マジで、なんでこんなこと書いてんだよ……」
手で顔を覆う。
今すぐこのページを破り捨てたい衝動に駆られた。今考えたら、いきなり彼女の有無を聞くとか、おかしい。意味が分からない。どういう神経してるんだ、あの時の俺。
というか、「彼女とやった方がいいと思う」ってなんだ。誰目線だよ。
冷静に読めば読むほど、ツッコミどころしかない。文章も雑だし、距離感もおかしい。最悪だ。
ノートを閉じかけて、やめる。まだ質問の答えを見ていない。
もういい。消せないなら、受け入れるしかない。指先でこめかみを軽く押さえながら、もう一度ページを見る。
恥ずかしさは消えないけど、それ以上に気になることがあった。視線を次のページにずらす。
“6月12日 水曜 曇り→雨
今日は先輩と会えてうれしかった。
最初、先輩が来てくれるかちょっとだけ不安だったけど、ちゃんといてくれて安心。あのベンチ、やっぱり落ち着く。
途中で雨が降ってきて、ラッキー。相合傘できるし、神様にちょっぴり感謝。
それと質問の答え。
彼女は、今はいません。なんで気になったんですか?(^^)”
「……相合傘、って……」
読み終わって、少しだけ笑ってしまった。
あれ、湊も意識してたのか。というか、「ラッキー」ってなんなんだ……。普通に考えれば、濡れるし面倒なだけなのに。
頭の中で軽く整理しようとする。でも、考えれば考えるほどズレていく感じがする。というか、湊の考えを理解しようとするだけ無駄なのかもしれない。遅刻したから散歩に行こうとするやつだ。理解できるはずもない。
「……彼女は、いないのか」
不思議だ。イケメンなのに。しかも、面倒見がよさそうで優しい。
理由を考えようと頭を捻った。いくつか仮説が浮かぶが、どれもあり得そうで、どれも決定打にはならない。
それに……。「なんで気になったんですか?(^^)」って。…………なんでだ?
気づけば、真剣に考えていた。
それと同時に、胸の奥がほんの少しだけ、もやもやする感覚があった。理由は、よく分からない。分からないのに、その感覚だけは確かにあって。それが、妙に引っかかる。
自分でも理解できない感情に、少しだけ眉をひそめると、ノートを閉じた。
