0と100のあいだ

“9月14日 日曜 晴れ

今日は体育祭だった。
先輩に良い所見せたくて、練習も頑張った。ライブは上手くいってよかった。
予定していた場所よりも、誰よりも一番近くで先輩が見てくれた。

だけど、先輩が一人で泣いてるところを見て心が痛かった。
その顔を見て、先輩と出会った日を思い出した。
 
最初に出会った時も、ベンチで一人、泣いていて。
あの時、雨に打たれているのに動かない姿が、壊れそうで、でも美しかった。
何もしないとそのまま消えちゃいそうで。
もう一人で泣かせたくなくて、先輩の笑顔が見たくて。
自分なりに、できる事、全部やったつもり。

だけど、また一人で抱え込ませちゃった。
やっぱり上手くいかない。

だから、先輩には悪いけど、このノートはしばらく渡さないでおこうと思う。”

 喉の奥が詰まったみたいに、息がうまくできない。涙が出そうになるのを、必死に押し殺した。
 読んでいる指先が、かすかに震えている。
 湊が、何を思っていたのか。どんなふうに迷って、どんなふうに抱え込んでいたのか。
 それが、飾りも逃げもなく、そのままぶつけられてくる。
 普段見せていた軽さの、その奥。触れたことのない場所が、静かに開かれていくようだった。
 次のページをめくるのが、怖い。
 それでも、紙の向こうに、うっすらと文字が透けて見えてしまう。
 逃げられない。
 これは、自分が読まなきゃいけないものだ。
 そう自分に言い聞かせるようにして、震える指で、そっとページをめくった。