3人の騎士が俺の後ろ左右にピッタリと張り付き、取り囲まれてしまった。
さらに距離を縮めてくる3人。引っ張り倒すか、同時タックルでもかますつもりなんだろうか。
左右の騎士の口角が少し釣り上がった。
ま、それは俺もだけどな。
無防備に接近しすぎだぜ。しがない食堂おっさんだと侮っているんだろうが。
―――完全に射程距離に入っているぞ。
俺は魔力を練り、まずは右側の騎士へと意識を向けた。
「―――現代フード召喚!」
「なにっ!?」
右側の騎士が俺の肩を掴もうと手を伸ばした瞬間、彼の顔面のわずか数センチ前にパックから解き放たれたばかりの納豆が物質化した。タレはつけてやらん。
……べちょり。
「な……!? ぬわぁああ~~な、なんだこの粘つく生き物は! 糸を引いて……ぐ、ぐぉっ臭い! 鼻が、鼻が死ぬぅううう!!」
黄金色のネバネバが騎士の視界を塞ぎ、独特の発酵臭が彼の嗅覚を蹂躙する。異世界の住人にとって、納豆の臭いはもはや未知の生物兵器に等しい。むろん食べ慣れればうまいんだが、初体験はそうはいかん。
「ふぬぁああ~~とれん~~!!」
彼は自分の顔面に張り付いた未知の物体を剥がそうと、パニックに陥ってコース外へと転げ落ちていった。
よし、一人目脱落っと。
「な、きさま! なにをした!?」
「次は左のあんただ」
説明なんてするわけないだろ。
「―――現代フード召喚!」
「なっ、魔法……!?」
左側の騎士が俺の足を払おうと剣の鞘を突き出そうとした瞬間。
召喚されたのは、現代の技術で極限まで酸っぱさを高めた最高級(にして最凶)の梅干しだ。
「超大粒しそ梅干し(塩分20%)……とくと味わえ」
ピンポイントで彼の口内へ直接召喚した。
「…………っ!!」
騎士の顔から闘志がピタリと消えた。 数秒後、彼の顔がまるで干しぶどうのように内側に収縮し始めた。
「しゅ、しゅ、しゅ……しゅっぱぁあああああいいい!!」
あまりの酸味に涙を流し、舌を突き出しながら地面に転がっていく騎士。
口がマンガみたいな※になっている。
よしよし二人目、戦意喪失っと。
「最後はおまえだ」
俺は後ろを確認しつつ、背後に張り付いている最後の騎士へ意識を集中する。
「な、なんだ? いったい……??」
何が起こったのか把握できずに焦りの声を漏らす最後の一人。
少しばかり気配が後に下がった。
さすがに慎重になるか。俺が左右の連中を謎の物質で無力化したのを見たからか、少し距離を取って魔法で狙い撃ちしようとしている。
この距離だと口内直接召喚は難しい。
ならば……
「おまえには王を授けよう」
「は? お、おう? なにを言って……」
「―――現代フード召喚!」
―――ゴっ!!
「は?……ふぎゃんっ!?」
「どうだ王の味は?」
そう、俺が召喚したのは果物の王さまドリアンだ。
敵の頭上に召喚して頭から丸ごとかぶせてやった。究極の臭い地獄を味合わがいい。
……? あれ? なんか反応がないぞ。
再度うしろを確認してみると、コース上に白目をむいてバタンきゅうしている騎士の姿が見えた。
あ、普通に物理で倒してた……。
どうやら脳天に直撃したっぽい。ドリアンがパカッと割れて顔面ドリアン男になっている。
そういえばゴンッ! という鈍い音が響いてたな……臭いを感じる間もなく、衝撃で気絶したらしい。まあ、目を覚ました時には自分の顔面に放たれている「王様の芳香」に二度目の絶望を味わうことになるだろうが。
とにもかくにも、これで三人目脱落だ。
「ふう、はぁ……」
あとはなんとか走り切るまで。
先頭集団のちょいうしろぐらいをなんとかキープ。
いや、これ普通にキツイわ。
おっさんになって、こんな必死に走ったの久々すぎるわ。
「タケオさ~~ん、ラストスパートですわ~~♪」
そこへピンク色の声援が聞こえてきた。ドレスアーマー姿のステア王女が俺に向かって手を振っている。
いや、普通にかわいいやん。
「はぁ、はぁ……っ! お、お待たせしました、おうじょ殿下ぁ!」
おっさん、最後の力を振り絞りバトンを王女殿下へ託す。
肺が焼けるような感覚。おっさん、頑張ったぞ。
「受け取りましたわ~~タケオさん! あとはお任せくださいまし!」
すでに先頭集団の騎士たちはアンカーが走り出しいる。
さすが締めを任されたやつら、みんな凄く速い……。みるみるうちに俺の視界から遠く離れていくアンカーたち。
「さあ~~優勝は頂きますわよ♪」
へ?
いや……まあ流石にそれはどうなんだ?
騎士たちが王女に忖度するような感じもないし。
が、俺の予想は完全に覆った。
ステア王女が地を蹴った瞬間、その場の空気が震える。
そしてもう王女は俺の前から消えていた。
「……すげぇ。めちゃくちゃ速いじゃないか」
俺は地面に這いつくばったまま、呆然と呟いた。
王女の姿が黄金の弾丸となって演習場を切り裂いている。その速度は、さっきまでの騎士たちとは次元が違う。
「当然です。姫様は魔法の名手、さらに特別騎士団長になられてからは稽古を欠かしたことはありません。特に下半身の身体強化はもっとも得意な分野なのですから」
「……え?」
聞き覚えのある丁寧な声。
振り返ると、いつの間にか王女のメイドであるリリィさんが俺の背後に立っていた。気配が全くなかったぞ……この人、怖い。
「下半身……ですか」
「……今、何かやましいことを考えませんでしたか? であれば然るべき処置を致しますよ」
「い、いえ、滅相もございません! 王女殿下の走りっぷりに見惚れているだけであります!」
やっぱこの人怖い……。
リリィさんの冷たい視線を浴びながら、俺は再びトラックに目を戻した。
「姫様は幼少の頃からやんちゃで。お城を抜け出しては、城下町を縦横無尽に走り回っておられました」
「ええぇ、それはまた活発な……」
でもなんとなく分かる気がする。
初めて会った時も、弾丸のごとく突撃してきたからな。
「あれは護衛を振り切るために磨かれた足なのです…………ふぅ」
リリィさんの溜息には、これまでの苦労のすべてが詰まっているようだった。
なるほど、弾丸突撃姫の名は伊達じゃないってことか。ま、俺が心の中で呼んでるだけだが。
「わたくしに追いつけるかしらぁあああ!」
大はしゃぎな王女の声が響く。
他団のアンカーたちが必死に妨害魔法を放つが、王女はそれを最小限のステップで回避し、むしろその魔法の爆風を背に受けて加速している。
「むろん、お転婆なだけであそこまでのことをやっているわけではありませんが」
そんな王女を見て、リリィさんが呟いた。
なるほど……いうてここは男社会の騎士団だ。どうしても女性は分が悪いことは否めない。お飾り騎士団長とは言えど、なにかしらの実力を見せる必要性は感じていたのかもしれんな。
あの王女は無茶苦茶しているようで、色々考えているようだし。
最終的にステア王女は驚異的なタイムでゴールラインを駆け抜けた。観客席からは、もはや歓声を超えた「悲鳴」に近い興奮が巻き起こる。
リレーに参戦した者たちからも同じく、賞賛と歓声の嵐が巻き起こった。
「やた~~っ! 優勝ですわぁ~~♪」
色々事情はあるんだろうが、とりあえず俺もこぶしを突き上げてステア王女コールをしておいた。
その後、簡単な表彰式などを済ませた俺たちは、食堂へと向かう。
「タケオさ~~ん、すっごくおなかがすきました~~」
うしろから王女殿下の素直な声が聞こえてきた。
俺は丁寧にお辞儀をして、踵を返す。
そう、王女様の言う通りお昼だ。
「ミーシャ、腹具合はなおったか?」
「は~~い、先輩。いつでもいけますよ~~♪」
さてさて、こっからが本番だぞ。
さらに距離を縮めてくる3人。引っ張り倒すか、同時タックルでもかますつもりなんだろうか。
左右の騎士の口角が少し釣り上がった。
ま、それは俺もだけどな。
無防備に接近しすぎだぜ。しがない食堂おっさんだと侮っているんだろうが。
―――完全に射程距離に入っているぞ。
俺は魔力を練り、まずは右側の騎士へと意識を向けた。
「―――現代フード召喚!」
「なにっ!?」
右側の騎士が俺の肩を掴もうと手を伸ばした瞬間、彼の顔面のわずか数センチ前にパックから解き放たれたばかりの納豆が物質化した。タレはつけてやらん。
……べちょり。
「な……!? ぬわぁああ~~な、なんだこの粘つく生き物は! 糸を引いて……ぐ、ぐぉっ臭い! 鼻が、鼻が死ぬぅううう!!」
黄金色のネバネバが騎士の視界を塞ぎ、独特の発酵臭が彼の嗅覚を蹂躙する。異世界の住人にとって、納豆の臭いはもはや未知の生物兵器に等しい。むろん食べ慣れればうまいんだが、初体験はそうはいかん。
「ふぬぁああ~~とれん~~!!」
彼は自分の顔面に張り付いた未知の物体を剥がそうと、パニックに陥ってコース外へと転げ落ちていった。
よし、一人目脱落っと。
「な、きさま! なにをした!?」
「次は左のあんただ」
説明なんてするわけないだろ。
「―――現代フード召喚!」
「なっ、魔法……!?」
左側の騎士が俺の足を払おうと剣の鞘を突き出そうとした瞬間。
召喚されたのは、現代の技術で極限まで酸っぱさを高めた最高級(にして最凶)の梅干しだ。
「超大粒しそ梅干し(塩分20%)……とくと味わえ」
ピンポイントで彼の口内へ直接召喚した。
「…………っ!!」
騎士の顔から闘志がピタリと消えた。 数秒後、彼の顔がまるで干しぶどうのように内側に収縮し始めた。
「しゅ、しゅ、しゅ……しゅっぱぁあああああいいい!!」
あまりの酸味に涙を流し、舌を突き出しながら地面に転がっていく騎士。
口がマンガみたいな※になっている。
よしよし二人目、戦意喪失っと。
「最後はおまえだ」
俺は後ろを確認しつつ、背後に張り付いている最後の騎士へ意識を集中する。
「な、なんだ? いったい……??」
何が起こったのか把握できずに焦りの声を漏らす最後の一人。
少しばかり気配が後に下がった。
さすがに慎重になるか。俺が左右の連中を謎の物質で無力化したのを見たからか、少し距離を取って魔法で狙い撃ちしようとしている。
この距離だと口内直接召喚は難しい。
ならば……
「おまえには王を授けよう」
「は? お、おう? なにを言って……」
「―――現代フード召喚!」
―――ゴっ!!
「は?……ふぎゃんっ!?」
「どうだ王の味は?」
そう、俺が召喚したのは果物の王さまドリアンだ。
敵の頭上に召喚して頭から丸ごとかぶせてやった。究極の臭い地獄を味合わがいい。
……? あれ? なんか反応がないぞ。
再度うしろを確認してみると、コース上に白目をむいてバタンきゅうしている騎士の姿が見えた。
あ、普通に物理で倒してた……。
どうやら脳天に直撃したっぽい。ドリアンがパカッと割れて顔面ドリアン男になっている。
そういえばゴンッ! という鈍い音が響いてたな……臭いを感じる間もなく、衝撃で気絶したらしい。まあ、目を覚ました時には自分の顔面に放たれている「王様の芳香」に二度目の絶望を味わうことになるだろうが。
とにもかくにも、これで三人目脱落だ。
「ふう、はぁ……」
あとはなんとか走り切るまで。
先頭集団のちょいうしろぐらいをなんとかキープ。
いや、これ普通にキツイわ。
おっさんになって、こんな必死に走ったの久々すぎるわ。
「タケオさ~~ん、ラストスパートですわ~~♪」
そこへピンク色の声援が聞こえてきた。ドレスアーマー姿のステア王女が俺に向かって手を振っている。
いや、普通にかわいいやん。
「はぁ、はぁ……っ! お、お待たせしました、おうじょ殿下ぁ!」
おっさん、最後の力を振り絞りバトンを王女殿下へ託す。
肺が焼けるような感覚。おっさん、頑張ったぞ。
「受け取りましたわ~~タケオさん! あとはお任せくださいまし!」
すでに先頭集団の騎士たちはアンカーが走り出しいる。
さすが締めを任されたやつら、みんな凄く速い……。みるみるうちに俺の視界から遠く離れていくアンカーたち。
「さあ~~優勝は頂きますわよ♪」
へ?
いや……まあ流石にそれはどうなんだ?
騎士たちが王女に忖度するような感じもないし。
が、俺の予想は完全に覆った。
ステア王女が地を蹴った瞬間、その場の空気が震える。
そしてもう王女は俺の前から消えていた。
「……すげぇ。めちゃくちゃ速いじゃないか」
俺は地面に這いつくばったまま、呆然と呟いた。
王女の姿が黄金の弾丸となって演習場を切り裂いている。その速度は、さっきまでの騎士たちとは次元が違う。
「当然です。姫様は魔法の名手、さらに特別騎士団長になられてからは稽古を欠かしたことはありません。特に下半身の身体強化はもっとも得意な分野なのですから」
「……え?」
聞き覚えのある丁寧な声。
振り返ると、いつの間にか王女のメイドであるリリィさんが俺の背後に立っていた。気配が全くなかったぞ……この人、怖い。
「下半身……ですか」
「……今、何かやましいことを考えませんでしたか? であれば然るべき処置を致しますよ」
「い、いえ、滅相もございません! 王女殿下の走りっぷりに見惚れているだけであります!」
やっぱこの人怖い……。
リリィさんの冷たい視線を浴びながら、俺は再びトラックに目を戻した。
「姫様は幼少の頃からやんちゃで。お城を抜け出しては、城下町を縦横無尽に走り回っておられました」
「ええぇ、それはまた活発な……」
でもなんとなく分かる気がする。
初めて会った時も、弾丸のごとく突撃してきたからな。
「あれは護衛を振り切るために磨かれた足なのです…………ふぅ」
リリィさんの溜息には、これまでの苦労のすべてが詰まっているようだった。
なるほど、弾丸突撃姫の名は伊達じゃないってことか。ま、俺が心の中で呼んでるだけだが。
「わたくしに追いつけるかしらぁあああ!」
大はしゃぎな王女の声が響く。
他団のアンカーたちが必死に妨害魔法を放つが、王女はそれを最小限のステップで回避し、むしろその魔法の爆風を背に受けて加速している。
「むろん、お転婆なだけであそこまでのことをやっているわけではありませんが」
そんな王女を見て、リリィさんが呟いた。
なるほど……いうてここは男社会の騎士団だ。どうしても女性は分が悪いことは否めない。お飾り騎士団長とは言えど、なにかしらの実力を見せる必要性は感じていたのかもしれんな。
あの王女は無茶苦茶しているようで、色々考えているようだし。
最終的にステア王女は驚異的なタイムでゴールラインを駆け抜けた。観客席からは、もはや歓声を超えた「悲鳴」に近い興奮が巻き起こる。
リレーに参戦した者たちからも同じく、賞賛と歓声の嵐が巻き起こった。
「やた~~っ! 優勝ですわぁ~~♪」
色々事情はあるんだろうが、とりあえず俺もこぶしを突き上げてステア王女コールをしておいた。
その後、簡単な表彰式などを済ませた俺たちは、食堂へと向かう。
「タケオさ~~ん、すっごくおなかがすきました~~」
うしろから王女殿下の素直な声が聞こえてきた。
俺は丁寧にお辞儀をして、踵を返す。
そう、王女様の言う通りお昼だ。
「ミーシャ、腹具合はなおったか?」
「は~~い、先輩。いつでもいけますよ~~♪」
さてさて、こっからが本番だぞ。

