「うわぁ~~なんこれ……もはや山火事のあとっしょ……」
スリーナが呆れた声を漏らす。
さっきまで青々とした草原だった場所は、今や真っ黒なはげ山みたになってる。
焦げた臭いが鼻につき、地面には炭とレッドボアの丸焦げた残骸が散らばっていた。
「すげぇ、おれっちの筋肉でもこんなことできないぜ」
横でゴンスが対抗して胸を張ってみせるが、筋肉を比較対象とする意味がわからん。
まあ確かに―――想像以上だった。
ちょっと火を吹かせただけのつもりだったんだが……精霊の火力、規格外かよ。
「あわわ……さ、サラちゃんってこんなにすごかったんだ……」
ルリアは両手で頬を押さえながら大きな目をさらに丸くする。
その横で……
「キュルゥウウウ♪」
サラマンダーが満足げに喉を鳴らし、尻尾をぱたぱた揺らしていた。
やったったわ~~みたいな顔しとる。
と、俺の袖がクイクイと引っ張られる感触がした。
「……タケオさん」
見上げてきたルリアが、少し照れた表情で言った。
「はじめて精霊魔法がうまくいきました。タケオさんのおかげです」
「いや、俺はきっかけを与えただけだ。今後はサラとしっかりコミュニケーションとれよ」
「はいっ!」
ぱぁっと笑った瞬間、ルリアの胸部にある二つの凶器がブルンと揺れた。
くそっ……こいつ精霊魔法より恐ろしい攻撃をしてくるじゃないか。
なんて、おっさんくさいことを考えていると。
「キュルぅ♪」
サラが勢いよく飛びついてきたので、反射的に避けた。
結果、目標を失ったサラマンダーはべしゃっと地面へ顔面ダイブした。
「あっ……だ、大丈夫サラちゃ―――」
「ギュぅう……」
低めの渋い声をだす赤トカゲの精霊。不満顔で俺を見る。
少し罪悪感はあるが、俺にだって理由がある。そんな燃えた体で抱き着かれたら普通に熱いだろし、ぜったい火傷するし。
「もう~タケオさん、女の子を邪険に扱っちゃダメですよ~」
「……この精霊、女子なんか?」
「むしろなんで疑問に思ってたんですか!?」
いやいや、見た目ほぼ火を纏ったトカゲだぞ。性別即答を求めるほうが難しいだろ。
でもまあ、こうして美少女と精霊に囲まれるなんて俺の人生ではレアだ。前世でも騎士団本部でも書類まみれだったからな。
改めて環境が変わったんだなぁと、ちょっとしみじみとしてきた。
そこへ馬車の御者から、準備ができたので出発するとの声がかかる。
馬車にもどりぎわ、スリーナとゴンスが頭を下げた。
「やるじゃん、おっさん。ちびっこ、マジ助かったわ」
「だな。……おっさん、嬢ちゃん。俺っちの筋肉も救われたぜ」
ふたりは不器用ながらも頭を下げた。
ヤンキーギャル騎士に筋肉騎士か。
その姿に、思わず笑ってしまう。
「ははっ……お前ら、クセ強いけど悪いやつらじゃないな」
俺の言葉にスリーナは鼻で笑い、ゴンスは照れ隠しに頭を掻く。
礼をちゃんと言えるやつは意外にも少ない。前世でも騎士団本部でもそれは同じだった。
ま、同僚となるんだから、おもろい奴らがいたほうがいいか。
俺たちを乗せた馬車は、ゆっくりと再び動き出した。
◇◇◇
馬車はガタゴトと揺れながら黒焦げになった草原を抜け、また元の静かな道へ戻っていた。
緊張感のあった?戦闘が終わると、馬車の中はどこか気の抜けた空気になる。
ふぅ……疲れた。
―――で。
腹が減った。
ドタバタすれば腹が減る。これは前世でも異世界でも変わらん法則だ。
「よし……」
俺は手を軽くかざし、魔力を少し練る。
「―――現代フード召喚」
手元に、ずしりと温かい紙袋が現れた。
おもむろにガサガサと中身を取り出して、膝の上に広げる。
ハンバーガーにポテト、そしてコーラ。
前世でも揺るぎない三種の神器である。
包装紙を開き、まずはハンバーガーを一口。
肉のうまみと、バンズの食感、そして濃いケチャップの味が一斉に俺の口を襲う。
合間にポテトをつまんでほいほい口に放り込む。そこへコーラをストローでじゅううっと、喉に走る刺激……ぷはぁっ!
「くぅぅ~~……これだよこれだよ……」
思わず声漏れるわ。最高すぎんだろ。
……と。
なんか視線を感じる。ちょっと前にも感じたやつ。
じー。
俺を見る可愛くて大きな目。
さらにその横で赤いやつが同じ角度でじー。
ルリアとサラマンダーのサラだ。
若干よだれ垂らしている……
「……食うか?」
言った瞬間、ふたりは同時にコクコクッと首を縦に振った。
まぁ魔力はまだ余裕あるし、今日は助けてもらったしな。
「ほれ。ハンバーガーセットだ」
「ふぁぁ……! す、すごい……本当に出てきた……!」
ルリアは両手でハンバーガーを持ち、恐る恐るかぶりつくと……
「……っ! なにこれ……おいしい……! パンやわらかい、お肉みたいの入ってる!?」
目を潤ませながら幸せそうにかぶりついていた。
そのままポテトにかじりつき―――
「あっ……これじゃがいもですよね!? すっごい細くて、カリカリしてて……なんか、クセになる~~っ♡」
まあポテトの魔力は凄まじいからな。
かくいう俺も、ポテトがあれば何もいらんとさえ思った時期もある。こいつは異世界でもその本領を発揮しているようだ。
そしてコーラをひと口、くちに含むと。
「ひゃっ!? なんですこれ!? 舌が……喉が……はじけてる!?」
まあ炭酸文化のない世界だからな。初見の反応は大体これだ。
食べるたんびに驚きのリアクション連発のルリアに対して、隣ではサラが「キュアキュア~~♡」と口を動かしていた。
にしても、この子はいったいいつ精霊召喚が解除されるんだろうか。
じ~~~。
そしてまた視線を感じた。
今度はスリーナとゴンスか。2人とも全力で期待した目を俺に向けていた。
「……しゃーねぇな。ほら、特別サービスだからな」
ふたりにもハンバーガーセットを出してやる。
「す、すげぇ……これも魔法か?」
「さっきの赤い粉といい、タケオ……ほんと変わった魔法使うわね」
とか言いながらも、ふたりの手は迷わずハンバーガーへ。食う気満々じゃねぇか。
「うわ! なんこれ、激うまなんだけど!?」
「ほんとだ、おれっちこんなの食べたことないぞ!?」
よしよし、予想通りの反応だな。うまそうに頬張る姿が微笑ましい。
魔力を消費して出したかいがあるってもんだ。
「―――ッッぶふぉあああ!?」
ゴンスがいきなりコーラを一気飲みして、盛大に吹き出した。
「お、おれっちの口が爆発したぁ~~!!」
「バカ、一気に飲むからだ」
しゃ~ないな。俺はため息をつきつつも、新しいコーラを召喚してゴンスに差し出す。
「ほら、ゆっくり飲むといいぞ」
「うぅ……タケオっち……おまえ、いい奴だな……! おれっちと筋ダチになろうぜ!」
なんだそれは? やめろ肩を組むな。筋肉があつくるしい。
その横でスリーナがコーラを飲み、満足そうに息を吐いた。
「ふー、あたしこれ好きだわ。刺激あるし、なんか生きてるって感じするわ」
「おれっちは断然ハンバーガーだな! サンドイッチのくせにパンチ強すぎるぜ」
「わたしは……迷いますけど……ポテトです! ポテトに1票!」
「キュアキュア~~♡」
サラはハンバーガー→ポテト→コーラ→ハンバーガーの高速ループである。
一番食べ慣れてる感じがして謎だ。誰に仕込まれたんだお前? まさか転生者じゃないだろうな。
ま、食べ方なんて人それぞれだけど。
サラのようにまんべなく食べるのがオーソドックスではあるが、一品すべて食べ干してから次にいくやつもいるだろう。
しばらくして馬車の中には、噛む音、飲む音、幸せそうな息だけが響いていた。
静かに、幸せそうに食ってる顔ってのはいいもんだ。
俺もコーラを飲み、背もたれに体を預けた。
ふぅ……
魔力もけっこう使ったし腹も満たされたし、馬車の揺れがちょうどいい。
目を閉じると、わずかな振動と遠くの風の音が心地よく響いた。
ブラック職場から離れて、初めて感じるまともな時間。
こういうのが欲しかったんだよ。
そのまま俺は、ゆっくりと意識を手放していった。
スリーナが呆れた声を漏らす。
さっきまで青々とした草原だった場所は、今や真っ黒なはげ山みたになってる。
焦げた臭いが鼻につき、地面には炭とレッドボアの丸焦げた残骸が散らばっていた。
「すげぇ、おれっちの筋肉でもこんなことできないぜ」
横でゴンスが対抗して胸を張ってみせるが、筋肉を比較対象とする意味がわからん。
まあ確かに―――想像以上だった。
ちょっと火を吹かせただけのつもりだったんだが……精霊の火力、規格外かよ。
「あわわ……さ、サラちゃんってこんなにすごかったんだ……」
ルリアは両手で頬を押さえながら大きな目をさらに丸くする。
その横で……
「キュルゥウウウ♪」
サラマンダーが満足げに喉を鳴らし、尻尾をぱたぱた揺らしていた。
やったったわ~~みたいな顔しとる。
と、俺の袖がクイクイと引っ張られる感触がした。
「……タケオさん」
見上げてきたルリアが、少し照れた表情で言った。
「はじめて精霊魔法がうまくいきました。タケオさんのおかげです」
「いや、俺はきっかけを与えただけだ。今後はサラとしっかりコミュニケーションとれよ」
「はいっ!」
ぱぁっと笑った瞬間、ルリアの胸部にある二つの凶器がブルンと揺れた。
くそっ……こいつ精霊魔法より恐ろしい攻撃をしてくるじゃないか。
なんて、おっさんくさいことを考えていると。
「キュルぅ♪」
サラが勢いよく飛びついてきたので、反射的に避けた。
結果、目標を失ったサラマンダーはべしゃっと地面へ顔面ダイブした。
「あっ……だ、大丈夫サラちゃ―――」
「ギュぅう……」
低めの渋い声をだす赤トカゲの精霊。不満顔で俺を見る。
少し罪悪感はあるが、俺にだって理由がある。そんな燃えた体で抱き着かれたら普通に熱いだろし、ぜったい火傷するし。
「もう~タケオさん、女の子を邪険に扱っちゃダメですよ~」
「……この精霊、女子なんか?」
「むしろなんで疑問に思ってたんですか!?」
いやいや、見た目ほぼ火を纏ったトカゲだぞ。性別即答を求めるほうが難しいだろ。
でもまあ、こうして美少女と精霊に囲まれるなんて俺の人生ではレアだ。前世でも騎士団本部でも書類まみれだったからな。
改めて環境が変わったんだなぁと、ちょっとしみじみとしてきた。
そこへ馬車の御者から、準備ができたので出発するとの声がかかる。
馬車にもどりぎわ、スリーナとゴンスが頭を下げた。
「やるじゃん、おっさん。ちびっこ、マジ助かったわ」
「だな。……おっさん、嬢ちゃん。俺っちの筋肉も救われたぜ」
ふたりは不器用ながらも頭を下げた。
ヤンキーギャル騎士に筋肉騎士か。
その姿に、思わず笑ってしまう。
「ははっ……お前ら、クセ強いけど悪いやつらじゃないな」
俺の言葉にスリーナは鼻で笑い、ゴンスは照れ隠しに頭を掻く。
礼をちゃんと言えるやつは意外にも少ない。前世でも騎士団本部でもそれは同じだった。
ま、同僚となるんだから、おもろい奴らがいたほうがいいか。
俺たちを乗せた馬車は、ゆっくりと再び動き出した。
◇◇◇
馬車はガタゴトと揺れながら黒焦げになった草原を抜け、また元の静かな道へ戻っていた。
緊張感のあった?戦闘が終わると、馬車の中はどこか気の抜けた空気になる。
ふぅ……疲れた。
―――で。
腹が減った。
ドタバタすれば腹が減る。これは前世でも異世界でも変わらん法則だ。
「よし……」
俺は手を軽くかざし、魔力を少し練る。
「―――現代フード召喚」
手元に、ずしりと温かい紙袋が現れた。
おもむろにガサガサと中身を取り出して、膝の上に広げる。
ハンバーガーにポテト、そしてコーラ。
前世でも揺るぎない三種の神器である。
包装紙を開き、まずはハンバーガーを一口。
肉のうまみと、バンズの食感、そして濃いケチャップの味が一斉に俺の口を襲う。
合間にポテトをつまんでほいほい口に放り込む。そこへコーラをストローでじゅううっと、喉に走る刺激……ぷはぁっ!
「くぅぅ~~……これだよこれだよ……」
思わず声漏れるわ。最高すぎんだろ。
……と。
なんか視線を感じる。ちょっと前にも感じたやつ。
じー。
俺を見る可愛くて大きな目。
さらにその横で赤いやつが同じ角度でじー。
ルリアとサラマンダーのサラだ。
若干よだれ垂らしている……
「……食うか?」
言った瞬間、ふたりは同時にコクコクッと首を縦に振った。
まぁ魔力はまだ余裕あるし、今日は助けてもらったしな。
「ほれ。ハンバーガーセットだ」
「ふぁぁ……! す、すごい……本当に出てきた……!」
ルリアは両手でハンバーガーを持ち、恐る恐るかぶりつくと……
「……っ! なにこれ……おいしい……! パンやわらかい、お肉みたいの入ってる!?」
目を潤ませながら幸せそうにかぶりついていた。
そのままポテトにかじりつき―――
「あっ……これじゃがいもですよね!? すっごい細くて、カリカリしてて……なんか、クセになる~~っ♡」
まあポテトの魔力は凄まじいからな。
かくいう俺も、ポテトがあれば何もいらんとさえ思った時期もある。こいつは異世界でもその本領を発揮しているようだ。
そしてコーラをひと口、くちに含むと。
「ひゃっ!? なんですこれ!? 舌が……喉が……はじけてる!?」
まあ炭酸文化のない世界だからな。初見の反応は大体これだ。
食べるたんびに驚きのリアクション連発のルリアに対して、隣ではサラが「キュアキュア~~♡」と口を動かしていた。
にしても、この子はいったいいつ精霊召喚が解除されるんだろうか。
じ~~~。
そしてまた視線を感じた。
今度はスリーナとゴンスか。2人とも全力で期待した目を俺に向けていた。
「……しゃーねぇな。ほら、特別サービスだからな」
ふたりにもハンバーガーセットを出してやる。
「す、すげぇ……これも魔法か?」
「さっきの赤い粉といい、タケオ……ほんと変わった魔法使うわね」
とか言いながらも、ふたりの手は迷わずハンバーガーへ。食う気満々じゃねぇか。
「うわ! なんこれ、激うまなんだけど!?」
「ほんとだ、おれっちこんなの食べたことないぞ!?」
よしよし、予想通りの反応だな。うまそうに頬張る姿が微笑ましい。
魔力を消費して出したかいがあるってもんだ。
「―――ッッぶふぉあああ!?」
ゴンスがいきなりコーラを一気飲みして、盛大に吹き出した。
「お、おれっちの口が爆発したぁ~~!!」
「バカ、一気に飲むからだ」
しゃ~ないな。俺はため息をつきつつも、新しいコーラを召喚してゴンスに差し出す。
「ほら、ゆっくり飲むといいぞ」
「うぅ……タケオっち……おまえ、いい奴だな……! おれっちと筋ダチになろうぜ!」
なんだそれは? やめろ肩を組むな。筋肉があつくるしい。
その横でスリーナがコーラを飲み、満足そうに息を吐いた。
「ふー、あたしこれ好きだわ。刺激あるし、なんか生きてるって感じするわ」
「おれっちは断然ハンバーガーだな! サンドイッチのくせにパンチ強すぎるぜ」
「わたしは……迷いますけど……ポテトです! ポテトに1票!」
「キュアキュア~~♡」
サラはハンバーガー→ポテト→コーラ→ハンバーガーの高速ループである。
一番食べ慣れてる感じがして謎だ。誰に仕込まれたんだお前? まさか転生者じゃないだろうな。
ま、食べ方なんて人それぞれだけど。
サラのようにまんべなく食べるのがオーソドックスではあるが、一品すべて食べ干してから次にいくやつもいるだろう。
しばらくして馬車の中には、噛む音、飲む音、幸せそうな息だけが響いていた。
静かに、幸せそうに食ってる顔ってのはいいもんだ。
俺もコーラを飲み、背もたれに体を預けた。
ふぅ……
魔力もけっこう使ったし腹も満たされたし、馬車の揺れがちょうどいい。
目を閉じると、わずかな振動と遠くの風の音が心地よく響いた。
ブラック職場から離れて、初めて感じるまともな時間。
こういうのが欲しかったんだよ。
そのまま俺は、ゆっくりと意識を手放していった。

