「うわぁあ~~護衛はなにやってんだ! っておれっちたちが護衛か?」
隣でゴンスが一人芝居を始める。
まあそのとおりだ。俺たちを護衛する騎士なんていない。だって俺たちが騎士なんだからな。
「レッドボアじゃん……ちっ、数が多いわ」
スリーナが舌打ちする。
さっきまで「あ~退屈ぅ~」みたいな顔していたのに、眼つきが鋭く変わっている。切り替えが速い。
「ブフウウウ!」
「グルブフゥウウ!」
俺たちを取り囲むレッドボアの群れ。
レッドボアとは、イノシシ型の魔物だ。重量と突進力がえげつない。
真正面からぶつかったら、鎧を着こんだ騎士でも骨が粉砕されるレベルだ。
「攻撃魔法で数を減らさないとヤバいわよ。誰か使えるやついないの?」
スリーナが鋭い声を張り上げると、一人の少女がおずおずと口をあける。
「あ……わ、わたし……その、魔法つかえます……」
控えめに手を挙げたのルリアだ。スリーナの目つきが怖いのかおどおどしつつも、勇気を振り絞ってだしたかのような声。
「よし、ちびっこ。ありったけの攻撃魔法ぶっ放しな。あたしたちは数が減ったところで飛び出す!」
スリーナの声は荒っぽいが、素早い状況判断は的確だ。それに人をまとめあげる素質ももっている。
仕事はできるが普段の態度から評価をおとすタイプかもしれん。
「ちびっこ、はやくしな! アイツらは待っちゃくれない!」
「は、はいっ!」
スリーナの激に、魔法を詠唱しはじめるルリア。
馬車のど真ん中に魔法陣が出現して、なんかでてきた。
「……おお」
俺は思わず声を漏らした。
魔法陣が空気を震わせ、火の粉が弾けるように舞い上がり、そこから現れたのは―――
燃えるような赤い鱗、くねる尾にぎらつく双眸。
周辺の空気がチリチリと音を弾く。
「すげぇ……かっこいい」
「へぇ~精霊召喚か。サイズは小さめだけどサラマンダー。やるじゃん、ちびっこ」
たしかに、スリーナの言う通り精霊のサイズ感はルリアと同じぐらいでちょっとかわいらしさもあるが、それでも……ガチで凄いなこの子。でも……
なんでこんなすげぇ魔法使えるのに、左遷の辺境おくりなんだ?
と、まあ事情は気になるが、今はそれどころじゃないか。
「サラちゃん、前方のレッドボアに火炎放射!」
「―――キュルウウ!」
ルリアの命令を聞いたサラマンダーが雄叫びを上げ―――
レッドボアではなくゴンスのほうへ向かった。
「お、おい? なんでこっちくる!? いや待っ―――」
「―――キュルンッ!」
ぼふっ!
火を吐かずに、ゴンスに頬ずりした。
「あっつ! おれっち燃えちゃ……あ、燃えてない……でもあっつい! あっつあつ~~!」
ゴンスが転げまわる。サラマンダーが遊んでもらっているのと勘違いしてか、ゴンスと一緒に転げまわる。いや、なんだこの状況?
ルリアが先ほど「魔法が下手くそ」って言っていた理由はこれか。
「あ、ちょっとサラちゃんそっちじゃないってば! それはレッドボアじゃなくてゴリラさんだよ!」
「あち! おれっちはゴンス、ゴリラじゃない、あっちぃ~」
ルリアが必死に命令するが、聞く気ゼロの精霊はゴンスの膝に座り、ふぁ~とあくびをする始末。
「ちっ、あたしたちでやるしかない。……おっさん、抜刀して出るわよ!」
「ああ、了解だ」
俺は馬車から飛び降り、腰の剣を抜く。
このままだとサラマンダーに燃やされそうだしな。
「……おい、ところでなんだよその剣」
スリーナのツッコミに俺は自身の剣に目を向けた。
あ……忘れてた。
俺の剣、竹光だったわ……
だが心配無用だ。異世界に転生した時から魔物対策はしっかり練ってあるからな。
俺は自身の魔力を練り始めた。
俺は剣も使えなければ、一般的に認知されている攻撃魔法や補助魔法も使えない。
いや、まあ素振りとかはしたんだぜ。だけど所詮は内勤のおっさん。一般騎士レベルにも届かない。
だが―――ひとつだけ。俺だけが使える能力がある。
「ブルウウウ!」
「ブモォオオオ!」
鼻息を散らして、突進してくるレッドボアたち。
「よし……現代フード召喚!」
―――ぽん。
上空に現れた多数の袋が破裂して青い空が赤い霧に変わる。
その霧は、ぼふぁ~~っと突進してくるレッドボアたちに降り注いだ。
「スリーナ。目と口を閉じた方がいいぞ」
「はあ? なに言って、ってなにあの赤い霧!?」
「「「「「…………!!?」」」」」
「プギャァアアア!?」
「ヒギュィイイイ!!」
「ギュタギュタァアアア!!」
魔物たちが急停止して地面でのたうちまわる。
顔面を真っ赤にした魔物たちは、鼻をこすり、目をかきむしり、なにかを吐き出そうと必死の形相。そのまま逃走しはじめる個体も多数。
「いたっ! 目が痛い! ッ……ゴホゴホっ! の、のどがチリチリぃいいい~~な、なにごれぇえぇ……」
だから閉じろと言うたに。
俺はミネラルウォーターを召喚して、ペットボトルの蓋をあけてスリーナに手渡した。
渡されたペットボトルを一気飲みして、ぜぇぜぇと肩で息をするスリーナ。
「ご、ゴフっ……な、なにしたのあんた……」
「ま、ちょいとした刺激をやつらに与えてやったんだ」
そう俺が上空からまいたのは大量の一味唐辛子だ。
レッドボアたちは唐辛子の雨にのまれた。口はもちろんのこと目や鼻や地肌。あらゆる場所から激辛を吸収しちまったんだから、そりゃもだえまくるだろう。
「ふむ、半数以上は逃げてったな」
「あ、あんた……とんでもない魔法使うんだね」
スリーナが悶えてピクつくレッドボアたちをみながら、呆れ声をもらす。
まあぶっちゃけ唐辛子をばらまいただけだけどな。
さて……あとは残党処理だ。この世界において魔物は害獣、つまり可能な限りは駆除する。ましてや俺たちは王国騎士団なのだからな。三等騎士やけど。
「よし、スリーナ。残ってる奴らにとどめを刺してくぞ」
至近距離であれば、正確な位置に食材を召喚することができる。
つまり、じかに口内に唐辛子を詰め込むことも可能ってわけだ。えぐすぎる窒息技だが。
「……にしても一匹ずつは骨が折れそうね。ゴンスも呼んでくるわ」
そんなスリーナの言葉におれは待ったをかけた。
待てよ……もっと手っ取り早い方法があるぞ。
俺は馬車にいるルリアの元へ向かう。
「なあ、サラマンダーって火出せるんだよな? それで片づけたら早いんじゃないか?」
「で、でもタケオさん、サラちゃん言うこと聞いてくれなくて……」
ルリアが困った顔で俺の方を振り向く。
そのルリアの後ろでは……
ゴンスとじゃれるのも飽きたのか、サラマンダーがあぐらをかいていた。
いや、自由だなこいつ。
そもそも四足動物みたいな出で立ちであぐらって、どういう姿勢してんだ? というシュール感満載の精霊。
言う事を聞かない……か。
ようは精霊のヤル気を出させれば良いってことだよな。
「―――現代フード召喚」
手元に現れたものはハンバーガー。
香る肉、溢れるケチャップ、ふわふわのバンズ。
精霊でも絶対にそそられるビジュアル。
「え? これは?」とルリアが目を丸くする。
「まあこいつを食わしてみろ。腹減ってるのかもしれん」
「え、えっと……サラちゃん、これ……」
ハンバーガーを差し出した瞬間……
精霊の目が変わった。
飢えた獣の眼光。
ハンバーガーをじーーっと凝視して……
―――ガブ!
豪快にかじる。
「キュルゥウウウ!?」
うまかったんだろう。一瞬で全部食べ尽くしたサラマンダー。
その直後―――
ぼううううううぅッ!!!
めちゃくちゃすごい火を吹いた……
さすがハンバーガー、異世界でも期待を裏切らないぜ。
隣でゴンスが一人芝居を始める。
まあそのとおりだ。俺たちを護衛する騎士なんていない。だって俺たちが騎士なんだからな。
「レッドボアじゃん……ちっ、数が多いわ」
スリーナが舌打ちする。
さっきまで「あ~退屈ぅ~」みたいな顔していたのに、眼つきが鋭く変わっている。切り替えが速い。
「ブフウウウ!」
「グルブフゥウウ!」
俺たちを取り囲むレッドボアの群れ。
レッドボアとは、イノシシ型の魔物だ。重量と突進力がえげつない。
真正面からぶつかったら、鎧を着こんだ騎士でも骨が粉砕されるレベルだ。
「攻撃魔法で数を減らさないとヤバいわよ。誰か使えるやついないの?」
スリーナが鋭い声を張り上げると、一人の少女がおずおずと口をあける。
「あ……わ、わたし……その、魔法つかえます……」
控えめに手を挙げたのルリアだ。スリーナの目つきが怖いのかおどおどしつつも、勇気を振り絞ってだしたかのような声。
「よし、ちびっこ。ありったけの攻撃魔法ぶっ放しな。あたしたちは数が減ったところで飛び出す!」
スリーナの声は荒っぽいが、素早い状況判断は的確だ。それに人をまとめあげる素質ももっている。
仕事はできるが普段の態度から評価をおとすタイプかもしれん。
「ちびっこ、はやくしな! アイツらは待っちゃくれない!」
「は、はいっ!」
スリーナの激に、魔法を詠唱しはじめるルリア。
馬車のど真ん中に魔法陣が出現して、なんかでてきた。
「……おお」
俺は思わず声を漏らした。
魔法陣が空気を震わせ、火の粉が弾けるように舞い上がり、そこから現れたのは―――
燃えるような赤い鱗、くねる尾にぎらつく双眸。
周辺の空気がチリチリと音を弾く。
「すげぇ……かっこいい」
「へぇ~精霊召喚か。サイズは小さめだけどサラマンダー。やるじゃん、ちびっこ」
たしかに、スリーナの言う通り精霊のサイズ感はルリアと同じぐらいでちょっとかわいらしさもあるが、それでも……ガチで凄いなこの子。でも……
なんでこんなすげぇ魔法使えるのに、左遷の辺境おくりなんだ?
と、まあ事情は気になるが、今はそれどころじゃないか。
「サラちゃん、前方のレッドボアに火炎放射!」
「―――キュルウウ!」
ルリアの命令を聞いたサラマンダーが雄叫びを上げ―――
レッドボアではなくゴンスのほうへ向かった。
「お、おい? なんでこっちくる!? いや待っ―――」
「―――キュルンッ!」
ぼふっ!
火を吐かずに、ゴンスに頬ずりした。
「あっつ! おれっち燃えちゃ……あ、燃えてない……でもあっつい! あっつあつ~~!」
ゴンスが転げまわる。サラマンダーが遊んでもらっているのと勘違いしてか、ゴンスと一緒に転げまわる。いや、なんだこの状況?
ルリアが先ほど「魔法が下手くそ」って言っていた理由はこれか。
「あ、ちょっとサラちゃんそっちじゃないってば! それはレッドボアじゃなくてゴリラさんだよ!」
「あち! おれっちはゴンス、ゴリラじゃない、あっちぃ~」
ルリアが必死に命令するが、聞く気ゼロの精霊はゴンスの膝に座り、ふぁ~とあくびをする始末。
「ちっ、あたしたちでやるしかない。……おっさん、抜刀して出るわよ!」
「ああ、了解だ」
俺は馬車から飛び降り、腰の剣を抜く。
このままだとサラマンダーに燃やされそうだしな。
「……おい、ところでなんだよその剣」
スリーナのツッコミに俺は自身の剣に目を向けた。
あ……忘れてた。
俺の剣、竹光だったわ……
だが心配無用だ。異世界に転生した時から魔物対策はしっかり練ってあるからな。
俺は自身の魔力を練り始めた。
俺は剣も使えなければ、一般的に認知されている攻撃魔法や補助魔法も使えない。
いや、まあ素振りとかはしたんだぜ。だけど所詮は内勤のおっさん。一般騎士レベルにも届かない。
だが―――ひとつだけ。俺だけが使える能力がある。
「ブルウウウ!」
「ブモォオオオ!」
鼻息を散らして、突進してくるレッドボアたち。
「よし……現代フード召喚!」
―――ぽん。
上空に現れた多数の袋が破裂して青い空が赤い霧に変わる。
その霧は、ぼふぁ~~っと突進してくるレッドボアたちに降り注いだ。
「スリーナ。目と口を閉じた方がいいぞ」
「はあ? なに言って、ってなにあの赤い霧!?」
「「「「「…………!!?」」」」」
「プギャァアアア!?」
「ヒギュィイイイ!!」
「ギュタギュタァアアア!!」
魔物たちが急停止して地面でのたうちまわる。
顔面を真っ赤にした魔物たちは、鼻をこすり、目をかきむしり、なにかを吐き出そうと必死の形相。そのまま逃走しはじめる個体も多数。
「いたっ! 目が痛い! ッ……ゴホゴホっ! の、のどがチリチリぃいいい~~な、なにごれぇえぇ……」
だから閉じろと言うたに。
俺はミネラルウォーターを召喚して、ペットボトルの蓋をあけてスリーナに手渡した。
渡されたペットボトルを一気飲みして、ぜぇぜぇと肩で息をするスリーナ。
「ご、ゴフっ……な、なにしたのあんた……」
「ま、ちょいとした刺激をやつらに与えてやったんだ」
そう俺が上空からまいたのは大量の一味唐辛子だ。
レッドボアたちは唐辛子の雨にのまれた。口はもちろんのこと目や鼻や地肌。あらゆる場所から激辛を吸収しちまったんだから、そりゃもだえまくるだろう。
「ふむ、半数以上は逃げてったな」
「あ、あんた……とんでもない魔法使うんだね」
スリーナが悶えてピクつくレッドボアたちをみながら、呆れ声をもらす。
まあぶっちゃけ唐辛子をばらまいただけだけどな。
さて……あとは残党処理だ。この世界において魔物は害獣、つまり可能な限りは駆除する。ましてや俺たちは王国騎士団なのだからな。三等騎士やけど。
「よし、スリーナ。残ってる奴らにとどめを刺してくぞ」
至近距離であれば、正確な位置に食材を召喚することができる。
つまり、じかに口内に唐辛子を詰め込むことも可能ってわけだ。えぐすぎる窒息技だが。
「……にしても一匹ずつは骨が折れそうね。ゴンスも呼んでくるわ」
そんなスリーナの言葉におれは待ったをかけた。
待てよ……もっと手っ取り早い方法があるぞ。
俺は馬車にいるルリアの元へ向かう。
「なあ、サラマンダーって火出せるんだよな? それで片づけたら早いんじゃないか?」
「で、でもタケオさん、サラちゃん言うこと聞いてくれなくて……」
ルリアが困った顔で俺の方を振り向く。
そのルリアの後ろでは……
ゴンスとじゃれるのも飽きたのか、サラマンダーがあぐらをかいていた。
いや、自由だなこいつ。
そもそも四足動物みたいな出で立ちであぐらって、どういう姿勢してんだ? というシュール感満載の精霊。
言う事を聞かない……か。
ようは精霊のヤル気を出させれば良いってことだよな。
「―――現代フード召喚」
手元に現れたものはハンバーガー。
香る肉、溢れるケチャップ、ふわふわのバンズ。
精霊でも絶対にそそられるビジュアル。
「え? これは?」とルリアが目を丸くする。
「まあこいつを食わしてみろ。腹減ってるのかもしれん」
「え、えっと……サラちゃん、これ……」
ハンバーガーを差し出した瞬間……
精霊の目が変わった。
飢えた獣の眼光。
ハンバーガーをじーーっと凝視して……
―――ガブ!
豪快にかじる。
「キュルゥウウウ!?」
うまかったんだろう。一瞬で全部食べ尽くしたサラマンダー。
その直後―――
ぼううううううぅッ!!!
めちゃくちゃすごい火を吹いた……
さすがハンバーガー、異世界でも期待を裏切らないぜ。

