剣姫シュトリアーナがグルト三等騎士団に来て、気付けば二週間が経っていた。
最初は地獄のような訓練で全員が半死半生になったものだが、ハンバーガーという名の最終兵器を投入した結果……
まあ、そこそこまともな訓練に落ち着いている。
つまりだ。
俺のスローライフ勤務は、しっかりと守られている。
「……うむ。最近のタケオは評価に値する」
本庁舎二階の奥から二番目。
剣姫シュトリアーナの部屋で、俺はいつものように彼女に「ご褒美」を与えていた。
俺が約束通り定期的に通っているので、彼女もうるさく言わなくなった。
テーブルの上には、俺が召喚したてのハンバーガーと塩気のきいたポテト。
剣姫は鎧を脱ぎ椅子に腰掛けてそれを行儀よく―――しかし目をギンギンにして見つめている。
「た、タケオ……それ、いつもと違う……(ごくり)」
「ああ、こいつはダブルバーガーだ」
「だ、ダブル!?」
「そうだ、肉が2つ重なっている。つまり二段重ねのハンバーガーだ」
「なぁああ……に、に、二重詠唱だと……(じゅるり)」
期待に震えつつ、おそるおそるダブルバーガーに口をつける剣姫シュトリアーナ。
「あふっ……♡」
おい。
「あふっ!! あふぅううううう♡」
また変な声が漏れちゃってるよ。
この部屋防音とか大丈夫なんかな……と思っていた時だった。
ガチャリ、と扉が開く音。
え?
「ああぁ~~タケオちゃんいたぁ~~ん♡」
聞き覚えしかないやたらと艶のある声。
振り返るまでもない。
「……なんでノックもなしに入ってくるんですか」
そこに立っていたのは、語尾が♡のムチムチだ。
ボンキュッボンという言葉はこの人のためにあるんだろうという女性。
このグルト辺境騎士団のトップ、フルノラ団長殿である。
「クンクンクン~だってぇ~~タケオちゃんのにおい~ワタシの部屋にプンプン流れてきたんだものぉ~♡」
俺のにおいってなんだ……加齢臭とかしてんのかな?
いい年したおっさんだからなぁ、わかってはいても若干しょんぼりしてしまう。
そんな俺とフルノラ団長の間にズイッと出てくる剣姫シュトリアーナ。
「フルノラ団長、ここは私の部屋だ。今回の無礼な件は不問にするから、すぐさま退出してもらおうか」
「あれぇ~シュトちゃんこそ~ここでコソコソ何をしてたのかなぁ~~」
「くっ……その呼び方はやめろ!」
「んふふ~~小さい頃はよくエンエン泣いてたくせにぃ~~」
んん? この剣姫が泣くだと? 剣の鬼と言われたこの氷剣姫が……?
会話の流れから、どうやらこの2人は前々からの知り合いぽいな。
「も、もう! とにかく出て行ってくれ! いますぐ!」
「う~~ん、そこにいるタケオちゃんと一緒ならぁ~いいわよぉ~~♡」
「そ、それはダメだ!」
うんダメだな。
これに関しては剣姫を支持する。
今日はすでに剣姫のお勤めをしたんだ。団長の相手までしてたら残業もいいとこだ。
「だってぇ~~シュトちゃんだけズルいじゃなぁい~」
「なにがズルいだ!」
「んふふ~~タケオちゃんにいっぱいしてもらってたくせにぃ~~まだ欲しがるのかしら♪」
「はあ? タケオになんてしてもらってない!」
「なら、いいでしょ~~タケオちゃんちょうだい♡」
「だ、だからダメだと言っている!」
さっきから意味深な会話が勝手に続いているが、なにもエロい事は発生してないからな。
それにしても、いつもの剣姫なら有無を言わさず問答無用で叩き出すんだが、なぜかそれをやろうとしない。
会話についても団長に少し押され気味な感がする。
「ていうかタケオちゃんは、ワタシのお気に入りなんだけどぉ~?」
「何を言っている! タケオは前職場から私のものだ!」
いや、俺はどっちのものでもないんだが。
フルノラ団長がスゥ~っと俺の横にきてなんか腕を絡めとろうとする。
顔が怖いのでうしろに下がると、今度は剣姫が俺のもう片方の腕をホールドしてきた。
いや、この2人はなにやってんだ?
俺おっさんやぞ。加齢臭出てたかもしれんおっさんやぞ。見た目ぴかいちの麗しき剣姫と、大人の色香出まくりグラマラス団長が迫る相手ではないからな。やはりこの2人の中身は相当ヤバい。
にしても、やはり剣姫は力に任せてゴリ押しで解決しようとはしない。なんだか慎重になってるような。
こんな剣姫は初めて見たな。
どれ……
「……あの、お二人ってやけに仲いいですね?」
ちょっと、おっさんジャブを入れてみた。
「こんなハレンチな団長と仲がいいだと!?」
「あらぁ~~弟子のくせにぃい~生意気いっちゃってぇ~~」
弟子だと?
「……ふん、いつまでも師匠ヅラはやめてもらおう」
師匠だと?
このムチムチ団長が?
俺の脳内で、グルグルと疑問符が回転する。
どうやらこの二人は元師弟関係のようだ。
にしても剣姫の師匠? どういうことだろうか。単純に剣の師匠であれば剣姫より強いか同等なんだろうけど、団長が剣姫と同レベル……? これはちょっと考えずらいな。そういう師弟という意味じゃなくて……
あ……!? もしかしてフルノラが幼少時の剣姫シュトリアーナの母替わりだったとか……
団長に関しては、ぶっちゃけ年齢不詳なところあるからな。20代にも30代にも見える。
「ふふ~ん、あの頃は可愛かったのにねぇ~シュトちゃん♡」
やはり、そうなのか?
団長がお母さん。このムチムチな人が母親……うわぁ~なんかエロいしか浮かんでこない。
いかん、これがおっさん思考なのか。
「あらぁ~~?」
俺が勝手な妄想をしていると、フルノラ団長が、にぃっと笑った。
「タケオちゃん、なんかいま失礼な事考えてたでしょ?」
―――ゾクッ!
怖っ! 凄い圧がこもってらっしゃる……
剣姫がズイッと俺の前に出た。
「ちっ……やるしかないか。タケオ……私の後ろにいろ」
「あらあら~シュトちゃんもおいたですか~?」
フルノラ団長がくすくす笑う。
「これはひさしぶりに、お仕置きかしらぁ~~?」
「ふん、その言葉そっくり返させてもらおう」
剣に手をかけるシュトリアーナとフルノラ。
冷酷剣姫とムチムチ団長の一騎打ちがはじまろうとしていた。
いや、ここ室内なんだが……
最初は地獄のような訓練で全員が半死半生になったものだが、ハンバーガーという名の最終兵器を投入した結果……
まあ、そこそこまともな訓練に落ち着いている。
つまりだ。
俺のスローライフ勤務は、しっかりと守られている。
「……うむ。最近のタケオは評価に値する」
本庁舎二階の奥から二番目。
剣姫シュトリアーナの部屋で、俺はいつものように彼女に「ご褒美」を与えていた。
俺が約束通り定期的に通っているので、彼女もうるさく言わなくなった。
テーブルの上には、俺が召喚したてのハンバーガーと塩気のきいたポテト。
剣姫は鎧を脱ぎ椅子に腰掛けてそれを行儀よく―――しかし目をギンギンにして見つめている。
「た、タケオ……それ、いつもと違う……(ごくり)」
「ああ、こいつはダブルバーガーだ」
「だ、ダブル!?」
「そうだ、肉が2つ重なっている。つまり二段重ねのハンバーガーだ」
「なぁああ……に、に、二重詠唱だと……(じゅるり)」
期待に震えつつ、おそるおそるダブルバーガーに口をつける剣姫シュトリアーナ。
「あふっ……♡」
おい。
「あふっ!! あふぅううううう♡」
また変な声が漏れちゃってるよ。
この部屋防音とか大丈夫なんかな……と思っていた時だった。
ガチャリ、と扉が開く音。
え?
「ああぁ~~タケオちゃんいたぁ~~ん♡」
聞き覚えしかないやたらと艶のある声。
振り返るまでもない。
「……なんでノックもなしに入ってくるんですか」
そこに立っていたのは、語尾が♡のムチムチだ。
ボンキュッボンという言葉はこの人のためにあるんだろうという女性。
このグルト辺境騎士団のトップ、フルノラ団長殿である。
「クンクンクン~だってぇ~~タケオちゃんのにおい~ワタシの部屋にプンプン流れてきたんだものぉ~♡」
俺のにおいってなんだ……加齢臭とかしてんのかな?
いい年したおっさんだからなぁ、わかってはいても若干しょんぼりしてしまう。
そんな俺とフルノラ団長の間にズイッと出てくる剣姫シュトリアーナ。
「フルノラ団長、ここは私の部屋だ。今回の無礼な件は不問にするから、すぐさま退出してもらおうか」
「あれぇ~シュトちゃんこそ~ここでコソコソ何をしてたのかなぁ~~」
「くっ……その呼び方はやめろ!」
「んふふ~~小さい頃はよくエンエン泣いてたくせにぃ~~」
んん? この剣姫が泣くだと? 剣の鬼と言われたこの氷剣姫が……?
会話の流れから、どうやらこの2人は前々からの知り合いぽいな。
「も、もう! とにかく出て行ってくれ! いますぐ!」
「う~~ん、そこにいるタケオちゃんと一緒ならぁ~いいわよぉ~~♡」
「そ、それはダメだ!」
うんダメだな。
これに関しては剣姫を支持する。
今日はすでに剣姫のお勤めをしたんだ。団長の相手までしてたら残業もいいとこだ。
「だってぇ~~シュトちゃんだけズルいじゃなぁい~」
「なにがズルいだ!」
「んふふ~~タケオちゃんにいっぱいしてもらってたくせにぃ~~まだ欲しがるのかしら♪」
「はあ? タケオになんてしてもらってない!」
「なら、いいでしょ~~タケオちゃんちょうだい♡」
「だ、だからダメだと言っている!」
さっきから意味深な会話が勝手に続いているが、なにもエロい事は発生してないからな。
それにしても、いつもの剣姫なら有無を言わさず問答無用で叩き出すんだが、なぜかそれをやろうとしない。
会話についても団長に少し押され気味な感がする。
「ていうかタケオちゃんは、ワタシのお気に入りなんだけどぉ~?」
「何を言っている! タケオは前職場から私のものだ!」
いや、俺はどっちのものでもないんだが。
フルノラ団長がスゥ~っと俺の横にきてなんか腕を絡めとろうとする。
顔が怖いのでうしろに下がると、今度は剣姫が俺のもう片方の腕をホールドしてきた。
いや、この2人はなにやってんだ?
俺おっさんやぞ。加齢臭出てたかもしれんおっさんやぞ。見た目ぴかいちの麗しき剣姫と、大人の色香出まくりグラマラス団長が迫る相手ではないからな。やはりこの2人の中身は相当ヤバい。
にしても、やはり剣姫は力に任せてゴリ押しで解決しようとはしない。なんだか慎重になってるような。
こんな剣姫は初めて見たな。
どれ……
「……あの、お二人ってやけに仲いいですね?」
ちょっと、おっさんジャブを入れてみた。
「こんなハレンチな団長と仲がいいだと!?」
「あらぁ~~弟子のくせにぃい~生意気いっちゃってぇ~~」
弟子だと?
「……ふん、いつまでも師匠ヅラはやめてもらおう」
師匠だと?
このムチムチ団長が?
俺の脳内で、グルグルと疑問符が回転する。
どうやらこの二人は元師弟関係のようだ。
にしても剣姫の師匠? どういうことだろうか。単純に剣の師匠であれば剣姫より強いか同等なんだろうけど、団長が剣姫と同レベル……? これはちょっと考えずらいな。そういう師弟という意味じゃなくて……
あ……!? もしかしてフルノラが幼少時の剣姫シュトリアーナの母替わりだったとか……
団長に関しては、ぶっちゃけ年齢不詳なところあるからな。20代にも30代にも見える。
「ふふ~ん、あの頃は可愛かったのにねぇ~シュトちゃん♡」
やはり、そうなのか?
団長がお母さん。このムチムチな人が母親……うわぁ~なんかエロいしか浮かんでこない。
いかん、これがおっさん思考なのか。
「あらぁ~~?」
俺が勝手な妄想をしていると、フルノラ団長が、にぃっと笑った。
「タケオちゃん、なんかいま失礼な事考えてたでしょ?」
―――ゾクッ!
怖っ! 凄い圧がこもってらっしゃる……
剣姫がズイッと俺の前に出た。
「ちっ……やるしかないか。タケオ……私の後ろにいろ」
「あらあら~シュトちゃんもおいたですか~?」
フルノラ団長がくすくす笑う。
「これはひさしぶりに、お仕置きかしらぁ~~?」
「ふん、その言葉そっくり返させてもらおう」
剣に手をかけるシュトリアーナとフルノラ。
冷酷剣姫とムチムチ団長の一騎打ちがはじまろうとしていた。
いや、ここ室内なんだが……

