「うぉおおお! もっとぉ~~♡」
なんかザザールの語尾に♡ついてるんだが……
動きもクネクネしはじめた。
「はやくぅ~~~♡」
ゴロゴロ床でもんどりを打ちながら奇声を発して、ハァハァしはじめる特別指南役。
もう人間のラインを超えてしまっているかもしれない。
「うわっ……キモすぎ」
「ですねぇ……なんですかあの変態男」
「サラちゃん、見ちゃダメです」
スリーナが露骨に顔をしかめて、ミーシャもメガネ越しにドン引きしている。
ルリアなんて、サラマンダーのサラの目を手で覆ってる始末。
どうしたもんか、もっと熱々たこ焼き入れてみるか?
いや……これ以上たこ焼き攻撃を続けても、ザザールが喜ぶだけな気がする。
ならばキンキンのかき氷をダイレクトインしてみるか? それはそれで、ザザールの新たな扉を開きそうで怖いが……
俺は一歩前に出ようとした。だが―――
「おらぁあ! 早くしろよ!」
ザザールが剣を抜き放つ。
その刃がきらりと光を弾いた瞬間、周囲の空気がピンと張りつめた。
「おいザザール。なにをやっている、剣をしまえ」
声を低くして警告するが、ザザールは聞く耳を持たない。
「ああぁあ? さっさとよこせってんだ!」
語尾の♡が消え、目が据わったザザール。
剣を抜くのは最大のタブーだ。任務や訓練以外で他者に剣を向けるなど愚の骨頂。
ましてやここは食堂なんだぜ、ふざけるなよ。
やりすぎだ……熱々たこ焼きくらいで済めばよかったものを。
俺が身構え、魔力を練りはじめた瞬間だった。
――――――シュッ!
小さな風切り音が耳に入ったかと思えば、ザザールの剣がきれいに真っ二つに断ち切られる。冗談みたいに、上半分がスローモーションで床に落ちた。
「……え?」
何が起きたのか、その場の誰もが一瞬理解できなかった。食堂の空気がひんやりと冷たく、どこか懐かしい気配を孕む。
「貴様ぁ……なにをしている。それでも誇り高き王国騎士か!」
静寂を破るように響く凛とした女の声。
おいおい……この声ってもしかして。
「まさか……」
「あ、あの方は……」
周囲の騎士たちが、信じられないものを見るかのように囁き合う。
その視線の先には、優雅とも言えるほどにすらりと伸びた凛とした女性騎士の姿があった。純白のドレスアーマーに銀色の髪が窓から差し込む陽光にきらめく。
その堂々とした威厳ある立ち姿。めちゃくちゃ見覚えある。
「せ、先輩~~あの人って特級騎士の……!?」
やっぱそうだよなぁ……。
そう、食堂の入り口で仁王立ちしているのは他でもない―――氷剣姫シュトリアーナ。
俺の元上司殿である。
マジかよ……来ちゃったよこの人。
「ひゃああああ~~! お、俺さまの剣がぁあああ~~!」
「おい、そこの変態男」
情けない声を上げて剣の破片を拾うザザールに、シュトリアーナが冷え切った言葉をかける。
「ああぁ? お、俺さまは特別指南役のザザールさまだぞ。剣姫だか何だか知らんが、ここは俺さまのシマだ! 勝手な事はさせねぇ!!」
いや、おまえのシマではないだろ。
そして、剣姫に喧嘩を売った時点で完全に詰んだぞ。
「……ふん」
剣姫がわずかに腰をひねって無造作に剣を振り下ろす。
あまりにも自然な動作すぎて、誰もそれが攻撃だとは思わなかっただろう。
シュッ―――
次の瞬間……ザザールの鎧が、音もなく綺麗に真っ二つに割れた。
けれど、ザザール自身の身体には傷ひとつない。
「ひょぁああああ~~!?」
転げまわるザザールの悲鳴が食堂に響き渡る。
無表情で神業のような一振り、切り口も芸術的に綺麗だ。
そんな剣姫が、恐ろしく冷たい視線をザザールに落とす。
「おい、おまえは異動だ」
「い、異動、って……?」
「そうだ、私のいた最前線の砦だ。その無駄な剣技を存分に使ってこい」
「だ、だが俺には特別指南役という役目が……!」
剣姫に圧倒されるザザール。もはや俺にさまをつけるのも忘れてる。
「話のわからんやつだな。特別指南役は今日からこの剣姫シュトリアーナだ! おまえはさっさといけ!!」
ザザールは、その言葉に抗う術もなく「ひぃいい~」と情けなく叫びながら、腰を抜かして逃げていく。まるで尻に火でもついたかのような勢いで、食堂の扉がバタンと大きな音を立てて閉まった。
食堂は異様な沈黙に包まれていた。
だれもが何も言えず、ただシュトリアーナに注目している。中には見惚れているやつも。
カツ、カツ、カツ―――
ドレスアーマーのヒール音が、食堂の床を響かせる。小気味よいというよりは、威圧的という方が合っているだろうか。
そんな剣姫が、まっすぐ俺の方へ向かってきた。
その姿勢は堂々たるものだが、よく見るとほんの少し唇が緩んでいるような……。
いや、付き合いの長い俺だからこそ分かる程度の変化かもしれんが。
「久しぶりだな、タケオ。またよろしく頼むぞ」
その声は先ほどのザザールへの冷たさとは打って変わって、どこか懐かしむような響きを帯びていた。
いや、俺あんたと離れて1週間しか経ってないんすけど……。
「いやいや、というかシュトリアーナさんは最前線のお仕事あるでしょう?」
魔物の動きが活発化したから、騎士団は剣姫を最前線に異動させた。だからこんなノンビリなところに来ちゃダメだろ。
つまり、あんたは増えた魔物が溢れて来ないようにバンバンその剣を振るわんといかん。ってことだ。隠れてハンバーガーを頬張りたいのかもしれんが、それは出来ない相談だな。
「ああ、だから終わらせてきた」
「はい?」
俺の疑問は、シュトリアーナの飄々とした口調に掻き消された。
終わらせた??
そこへミーシャが「先輩これこれ」と配達されたばかりの新聞の一面見出しをちょいちょい指さした。
『氷剣姫、鬼神のごとき強さで増殖した魔物を一掃する。わずか1週間で最前線は鎮静化』
よ~~く剣姫の口元を見ると、一筋のよだれがじゅるりと……
やだぁ~この子。
ハンバーガーのために無茶苦茶するやん。
なんかザザールの語尾に♡ついてるんだが……
動きもクネクネしはじめた。
「はやくぅ~~~♡」
ゴロゴロ床でもんどりを打ちながら奇声を発して、ハァハァしはじめる特別指南役。
もう人間のラインを超えてしまっているかもしれない。
「うわっ……キモすぎ」
「ですねぇ……なんですかあの変態男」
「サラちゃん、見ちゃダメです」
スリーナが露骨に顔をしかめて、ミーシャもメガネ越しにドン引きしている。
ルリアなんて、サラマンダーのサラの目を手で覆ってる始末。
どうしたもんか、もっと熱々たこ焼き入れてみるか?
いや……これ以上たこ焼き攻撃を続けても、ザザールが喜ぶだけな気がする。
ならばキンキンのかき氷をダイレクトインしてみるか? それはそれで、ザザールの新たな扉を開きそうで怖いが……
俺は一歩前に出ようとした。だが―――
「おらぁあ! 早くしろよ!」
ザザールが剣を抜き放つ。
その刃がきらりと光を弾いた瞬間、周囲の空気がピンと張りつめた。
「おいザザール。なにをやっている、剣をしまえ」
声を低くして警告するが、ザザールは聞く耳を持たない。
「ああぁあ? さっさとよこせってんだ!」
語尾の♡が消え、目が据わったザザール。
剣を抜くのは最大のタブーだ。任務や訓練以外で他者に剣を向けるなど愚の骨頂。
ましてやここは食堂なんだぜ、ふざけるなよ。
やりすぎだ……熱々たこ焼きくらいで済めばよかったものを。
俺が身構え、魔力を練りはじめた瞬間だった。
――――――シュッ!
小さな風切り音が耳に入ったかと思えば、ザザールの剣がきれいに真っ二つに断ち切られる。冗談みたいに、上半分がスローモーションで床に落ちた。
「……え?」
何が起きたのか、その場の誰もが一瞬理解できなかった。食堂の空気がひんやりと冷たく、どこか懐かしい気配を孕む。
「貴様ぁ……なにをしている。それでも誇り高き王国騎士か!」
静寂を破るように響く凛とした女の声。
おいおい……この声ってもしかして。
「まさか……」
「あ、あの方は……」
周囲の騎士たちが、信じられないものを見るかのように囁き合う。
その視線の先には、優雅とも言えるほどにすらりと伸びた凛とした女性騎士の姿があった。純白のドレスアーマーに銀色の髪が窓から差し込む陽光にきらめく。
その堂々とした威厳ある立ち姿。めちゃくちゃ見覚えある。
「せ、先輩~~あの人って特級騎士の……!?」
やっぱそうだよなぁ……。
そう、食堂の入り口で仁王立ちしているのは他でもない―――氷剣姫シュトリアーナ。
俺の元上司殿である。
マジかよ……来ちゃったよこの人。
「ひゃああああ~~! お、俺さまの剣がぁあああ~~!」
「おい、そこの変態男」
情けない声を上げて剣の破片を拾うザザールに、シュトリアーナが冷え切った言葉をかける。
「ああぁ? お、俺さまは特別指南役のザザールさまだぞ。剣姫だか何だか知らんが、ここは俺さまのシマだ! 勝手な事はさせねぇ!!」
いや、おまえのシマではないだろ。
そして、剣姫に喧嘩を売った時点で完全に詰んだぞ。
「……ふん」
剣姫がわずかに腰をひねって無造作に剣を振り下ろす。
あまりにも自然な動作すぎて、誰もそれが攻撃だとは思わなかっただろう。
シュッ―――
次の瞬間……ザザールの鎧が、音もなく綺麗に真っ二つに割れた。
けれど、ザザール自身の身体には傷ひとつない。
「ひょぁああああ~~!?」
転げまわるザザールの悲鳴が食堂に響き渡る。
無表情で神業のような一振り、切り口も芸術的に綺麗だ。
そんな剣姫が、恐ろしく冷たい視線をザザールに落とす。
「おい、おまえは異動だ」
「い、異動、って……?」
「そうだ、私のいた最前線の砦だ。その無駄な剣技を存分に使ってこい」
「だ、だが俺には特別指南役という役目が……!」
剣姫に圧倒されるザザール。もはや俺にさまをつけるのも忘れてる。
「話のわからんやつだな。特別指南役は今日からこの剣姫シュトリアーナだ! おまえはさっさといけ!!」
ザザールは、その言葉に抗う術もなく「ひぃいい~」と情けなく叫びながら、腰を抜かして逃げていく。まるで尻に火でもついたかのような勢いで、食堂の扉がバタンと大きな音を立てて閉まった。
食堂は異様な沈黙に包まれていた。
だれもが何も言えず、ただシュトリアーナに注目している。中には見惚れているやつも。
カツ、カツ、カツ―――
ドレスアーマーのヒール音が、食堂の床を響かせる。小気味よいというよりは、威圧的という方が合っているだろうか。
そんな剣姫が、まっすぐ俺の方へ向かってきた。
その姿勢は堂々たるものだが、よく見るとほんの少し唇が緩んでいるような……。
いや、付き合いの長い俺だからこそ分かる程度の変化かもしれんが。
「久しぶりだな、タケオ。またよろしく頼むぞ」
その声は先ほどのザザールへの冷たさとは打って変わって、どこか懐かしむような響きを帯びていた。
いや、俺あんたと離れて1週間しか経ってないんすけど……。
「いやいや、というかシュトリアーナさんは最前線のお仕事あるでしょう?」
魔物の動きが活発化したから、騎士団は剣姫を最前線に異動させた。だからこんなノンビリなところに来ちゃダメだろ。
つまり、あんたは増えた魔物が溢れて来ないようにバンバンその剣を振るわんといかん。ってことだ。隠れてハンバーガーを頬張りたいのかもしれんが、それは出来ない相談だな。
「ああ、だから終わらせてきた」
「はい?」
俺の疑問は、シュトリアーナの飄々とした口調に掻き消された。
終わらせた??
そこへミーシャが「先輩これこれ」と配達されたばかりの新聞の一面見出しをちょいちょい指さした。
『氷剣姫、鬼神のごとき強さで増殖した魔物を一掃する。わずか1週間で最前線は鎮静化』
よ~~く剣姫の口元を見ると、一筋のよだれがじゅるりと……
やだぁ~この子。
ハンバーガーのために無茶苦茶するやん。

