僕と生徒会長の好きって書けない交換日記

次の日の掲示板。
新聞部の訂正記事は出ていなかった。やっぱり昨日の今日は無理だったんだろう。
次の次の日の掲示板、まだ新聞部の訂正記事は出ていない。石川先輩のイライラした顔が目に浮かぶ。
きっと明日には出るだろう…
そう思っていたけど、掲示板に新聞部の訂正記事は、でなかった。
自分の席で1人お弁当を食べていると急に校内放送が流れ出した。
 
「こんにちは、放送部の平田です。金曜のランチタイム、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
週に1度の校内放送、今日のスペシャルゲストは生徒会からお越しいただいてます。皆さんからの質問、疑問に全て答えてもらいます。生徒会に関しての質問、疑問を放送室ポストに入れに来てください。時間の許す限り、答えてもらいます。ではスペシャルゲストの都野会長と会計の石川さんです」
「は〜い、こんにちは、会計の2年4組石川です。そして」
「都野です。」
「はい、会長の都野君が来てくれてます。僕は実は都野君と同じクラスなんですが、全く話したことがないので、今日はどんなお話が聞けるか楽しみです。
石川さんもよろしくお願いします。
ではさっそく、
実は新聞部の記事についての質問が多いのですが、大丈夫でしょうか」
「大丈夫で〜す。なんでもお答えします、ねっ、都野会長」
「はい」
声だけで、石川先輩の張り切ってる顔と、太郎君の不機嫌な顔が目に浮かぶ。
新聞部が何かの理由で無理だったから、放送部にお願いしたのだろう。

「では、まず、こちらから。
文化祭の看板。私も描きたかったです。どうして1年の男子にお願いしたんですか?
ということですが、」
「はい、石川がお答えします!
看板は毎年同じものを使っていて、去年もそのつもりでした。ですが直前に、壊れてしまって。
美術部にお願いしても、自分たちの文化祭の作品で忙しいと門前払いされてしまって、ほんとに困っていたんです。直前だから、全校生徒に公募する時間も無いし。もう私たちの友達から当たるしかなくて、今回描いてくれた彼は、会長の知り合いでした。
それで、時間がない中、快く大変な仕事を受けてくれました」
「なるほど、そういう事情があったんですね。では次は
次年度の予算について、なぜ緑化委員だけアップなんですか?」
「はい、それも会計の石川がお答えします!
他の委員会から予算見直しの申請が無かったからです。
必要があれば、申請書を提出してください。
私たちは責任をもってきちんと判断します。」
「そもそも申請書が出しづらい、どうせ却下されるだろうという話もありますが」
「放送委員会もそれが理由で、出さなかったと?」
「いえ、うちは、今の予算で、まにあってますから。ただ他の部活や委員会からそういう噂を耳にしまして」
「一度も申請書を提出しないで、噂に流されるのは、もとから必要ない予算ということだと思います。だいたい」
「石川。…次の質問お願いします」
とヒートアップする石川先輩を落ち着いたトーンで太郎君が止めた、クラスから笑いが起こった。
「では、次は、
球技大会のお姫様抱っこは狙いですか?
とあります。そんな場面があったんですか?」
「それは、会長が捻挫した生徒を助けただけです。」
「そうなんですか?都野会長、助ける為にお姫様抱っこをした。ということですか?」
「そうです。たまたま近くにいたので」
「そうですか、たまたま、文化祭の看板をお願いした生徒の近くにいて、たまたまその生徒が捻挫をした。そういうことですか?」
「そんな質問ないじゃん平田君。」
「石川さん、俺もインタビュアーとして聞きたいことは、聞くつもりだから。いいですよね、都野会長」
「…あぁもちろん。」
「ではもう一度お聞きしますが、球技大会では、たまたま、文化祭の看板をお願いした生徒の近くにいて、たまたまその生徒が捻挫をし、保健室に運んだ。そういうことですか?」
「そうです」
「その生徒は緑化委員ということで合っていますか」
「…はい」
「都野会長はその生徒さんに縁があるんですね」
「そうですか?」
「平田く〜ん。こんなに沢山ポストに入ってましたよ」
「ありがと、では、この中からひとつ。え〜公約であった駐輪場の拡張工事はいつから始まりますか?ということですが」
「駐輪場の拡張は延期しました」
「それは公約違反ということですか?」
「はい」
「駐輪場の拡張延期は花壇を壊すことに反対した緑化委員がいるからだと噂がありますが、そうなんですか」
「いえ、総合的判断です」
「その噂の緑化委員は看板を描き、お姫様抱っこで運ばれた生徒さんと同一人物ですか?」
「平田君、総合的判断って言ってるじゃない」
「みんなが一番気になってることだと思うけど。
看板とお姫様抱っこと花壇延期の噂の緑化委員は同一人物か?」
「はい、そうです。妙な噂がたち彼には申し訳ないと思ってます」
「その彼と交換日記をしてるんですか?」
「はい?」
「今どき、携帯もあるのに、交換日記なんて誰もしないいよね、平田君だってしないでしょ」
「もちろん俺はしたことないけど、都野君はしてたのかなと思って」
放送室の会話で3人の表情はイメージできた。
クラスのみんなは、黙って放送に耳を傾けている。
「どうして?都野君は絶対交換日記をするタイプじゃないじゃん。効率重視って感じで。ねっ?」
「あぁ」
「本当ですか?放送室のポストにノートが入ってたんですが、あれはなんでしょ?」
「都野君、もうすぐ放送が終わる時間だからハッキリ言ってよ」
珍しく、石川先輩が取り乱してるように聞こえる
「…してないよ。交換日記なんて。そんな子供じみたことをする高校生がこの学校にいるとは思えない。
平田君の見たノートはなんなのか分からないけど、交換日記の可能性は低いんじゃないかな」
太郎君は、すごく早口になっている。
「ノートの中身まで見たと言ったら、話は変わりますか?」
「…鍵があるので、中を見ているはずが無い。下手なかまを掛けるのは、止めたほうがいい。
一応、答えとしては、
変わらない、俺には一切関係の無いことだから。
交換日記みたいな非効率的なことをするのは正直恥ずかしいね、そんな風にコミニュケーションを取らないといけない相手は俺の周りには居ない」
早口で言い切った太郎君の顔を想像する、きっと苛立ちを隠せてはいないだろう。
「そうそう、平田君の周りにだってそんな子いないでしょ」
「そうですね、あっお時間となりました。」

太郎君が本心で話しているわけではない。そんなことは分かりきっている。太郎君が1番頑張ったんだ。そんなの、分かっているのに、だけど、涙が溢れて止まらない。
クラスメイトの話し声が聞こえる
 
「交換日記は無いよね」
「頭も良くてダンスが上手でクールで完璧な都野先輩が交換日記してたら、かなり引く笑」

僕は教室を飛び出した。
とにかく、人けのない所に行きたい。
体育館裏でしゃがみ込んだ、もう駄目だ。
僕は強くなったはずなのに、交換日記を否定されたくらいで気持ちがズタズタになるなんて。
太郎君の友達でいい、太郎君を応援出来る自分になりたい。
そう思ってたのに、結局、太郎君の足を引っ張ってるのは僕だ。
僕が太郎君の周りにいなかったら、こんな放送をしなくてよかったのに。