僕と生徒会長の好きって書けない交換日記

《綺麗な絵だな。昨日はバルーンアートがメインに描かれてたけど、今日は広がる空の中に、色とりどりの風船が、何十個もあって、すっごく幻想的だな。
昔、お正月に凧揚げをして、手から紐がすり抜けたんだ。
空に高く〜高くのぼっていく凧をみて、残念だったけど、凧はそうしたかったのかな、って姉と話したのを思い出したよ》

《太郎君のエピソードはステキだね☆
もし僕が凧の紐を離してしまって、のぼっていく凧を見ていたら、妹は絶対、怒るよ。
「何、感傷に浸ってんの。ポイ捨てしてるのと同じよ」って言って。笑

太郎君のファンクラブ、ウチのクラスにも入った子がいるよ。
PS
明日の委員会で、チューリップの予算アップの申請書を提出するので何卒よろしくです。(チューリップの絵)》

《ファンクラブってなんだよ。本人非公認なんだけど。入った子に勧誘されたなら、冷静になれって言っといて。チューリップの予算、検討します。
追伸。
しずみ、最近クラスで楽しくできてるの?
伊達君はどう?》

《クラスでは、太郎君や小森先輩のお陰で、一目置かれるようになりました。ありがとう。
伊達君も、たまに普通に話してくれるよ。くらいとは呼んでくるけど…ムチャなことは言われてない。

太郎君は最近忙しい?返事が前より遅いから、そうなのかな?と思って。
もし、そうなら、交換日記、すぐに返事書かなくても大丈夫だよ。
負担になりたくないんだ》

《負担になんてなってない。
今日、放課後、会長室に来てほしい。》

放課後、僕は久しぶりにB棟4階へ行く。
以前、ここに来ていた頃は、太郎君はただの、七三メガネの会長だった。だけど今は、メガネも取って、髪型もおろして、爽やか笑顔で、アイドル級の人気だ。
ノックすると太郎君の声が聞こえた。
引き戸を開けると、ふらふらと太郎君が倒れてきた。
「しずみ〜まいったよ」
僕は太郎君を受け止める。
サラサラの髪が乱れている。
「どうしたの?」
「ストーカーがいる」
と背後から阿部先輩が出てきた。
「あっ、ビックリした!いつの間にいたんですか」
「この学校に都野のストーカーがいる…あっ今、俺は探偵モードだから」
と阿部先輩は役に入りきる。
「太郎君…いや会長」
「待った」
探偵モードの阿部先輩は、僕と太郎君の間に立ち
「しずみ、太郎君、しずみ、太郎君、しずみ、太郎君、えっ兄弟?」
「違うよ」
と即座に太郎君が否定する。
「じゃあ、いとこ」
「なんで、そうなる。
友達。しずみとは、会長になる前からの友達」
「なんだぁ、教えてくれたら良かったのに」
「別に、俺、お前の交友関係、何も知らないけど」
「そっか」
僕はそれた話を元に戻す。
「あの、さっき話していたストーカーって?」
「つけられたり、待ち伏せされたりするんだって」
「やたら話しかけられたり」
と、太郎君が付け足す。
「それはいいだろ、生徒の意見は会長として沢山聞いてやれ」
「やだよ」
「はい、あの、犯人というか、
ストーカーは誰かわかってるんですか」
「いや、誰かというより、全校生徒ストーカー疑惑ってところだな」
と阿部先輩言いながら、窓から外をみた。
「ほら、この部屋が会長室とバレているから、下から見上げてる生徒がいるだろ」
僕も窓際まで行き、確認する。
確かに、4人くらいの女子の集団がいくつかあり、上を見上げている、ような気もする。
「あの、つまり、人気者ということですよね」
「人気者だからといって、プライベートを侵されていいわけじゃない、俺も経験あるけど」
と、阿部先輩。
「そうですけど、1階から4階を見上げていることが、プライベートを侵しているというんでしょうか」
と、疑問をぶつけ、僕はもう一度、下をのぞいた。
もうさっきより生徒数は減っている。
「しずみ〜擦り減るんだよ、気持ちが。この部屋を出た瞬間からずっと見張られてる気がして、気持ちが落ち着かない」
見たことの無い、弱気な太郎君だ。
「そっかぁ、えっと…わかった!僕になにか出来ることはある?
あっ、伊達君たちにボディガードお願いするとか。やりたくない!って怒られそうだけど笑」
「しずみ。
伊達にはお願いしなくていい。
しずみが伊達と関わらない方が、俺は安心だし」
「うん」
阿部先輩は僕らを交互に見て
「はい、これ」
と僕に小さな鍵を渡した。
「交換日記してるんでしょ?この状況で鍵が無い、川本君の下駄箱を使い続けるのはマズイでしょう。
だから、俺の将棋部の個人ロッカー貸してあげるよ」
阿部先輩がどこまで知ってるのか?
僕は困惑している。
「知らないよ」
僕の表情をよんで、阿部先輩は話す。
「何も知らない、都野からは何も聞いてない。
だけど同じノートが行き来してたら、それを交換日記と呼ぶんじゃないの。なっ都野」
と阿部先輩はずっと黙っている太郎君をみた。
僕は、2人の秘密の交換日記を、第三者に認識されているこの状況を、照れくさく感じて、嬉しいような、変な気分になった。
太郎君は僕をみて少し頷いて
「まっ、そう呼ぶだろうな。助かるよ、阿部。」
「いいって、俺マジで応援してるから、羨ましいんだよ。交換日記。
俺も小学生の頃、幼なじみと交換日記してて、楽しかったぁ。またしたいなぁ」
「仲間に入れてやらないよ」
と太郎君
「俺もヤダよ、お前ら2人と交換日記しても意味ないもん。やっぱ好きな子じゃないと」
「阿部先輩、好きな子と交換日記をしてたんですか」
「まぁな、中学になって自然消滅しちゃったけど。ってこんな話はよくて、とにかく川本君に出来ることは、交換日記を続けること。伊達と喋らないこと」
「えっ?」
「まあまあ、交換日記は都野の唯一の癒しらしいから、よろしく」
「あっはい、こちらこそ、よろしくお願いします」
阿部先輩のロッカーの鍵をポケットにしまった。
 
「しぃ~」校門を出るとケンちゃんが自転車にまたがり待っていてくれた。
「待たせた?」
「いつものことだろ」
と2人で歩き出す。

「そっかぁ、会長は、みんなの会長になっちゃったのか。寂しい?」
「うん、かなり」
「まぁそうだよな」
「でも、仕方ない様な気もして、わからないだ」
「寂しいなら、寂しいでいいし。好きなら好きでいいし」
「す好き…いや、分からない、分からない。憧れだけかもだし」
「でも、かなり動揺してるじゃん」
「してないよ〜、はいもうケンちゃん、帰るよ。遅いし、自転車乗るよ」
「遅くなったの、し〜のせいだろ笑」
 
《返事が遅かったのは、下駄箱に入れるタイミングが無かったからなんだね。この交換日記が少しでも太郎君の役に立ってるなら嬉しいです。(広い空に小さな凧が泳いでる絵)》 

《心配かけてごめん、阿部には感謝だな。だけど、将棋部の部室に初めて入ったけど、個人ロッカー…あれいる?
今後の予算削減案で上がってきそうだな。どう必要性をアピールするか阿部に考えるように言っとくよ》

《阿部先輩にだけ言うのは…僕も微力ながら考えとくよ。もうすぐ期末テストだね。あっ、太郎君って勉強しないって本当なの?しないってどこまで?何をしないの?》

《どこまでもなにも、テスト勉強ってことなら、何もしない。だけど授業は出てるし、期末テスト範囲の勉強は授業でしてるだろ、みんな。
だから、みんなと一緒だよ。
それより、緑化委員に卒業式の壇上の花をお願いしようと思っている。それと合わせてチューリップの予算も出せばアップは可能かな。あの額は無理だけど》

《申請書の額はきっと、減らされてちょうどよくなる額にしてるから、大丈夫だよ。
勉強、太郎君は、みんなと一緒じゃないから。みんなテスト勉強はするし、授業は出ているだけじゃ分からないから笑》

《申請書の額、減らされてちょうどよくなる額って何?小細工無しでお願いしま〜す笑
 授業で聞いて分からないなら、みんなどうしてるんだ?
 今日は絶対100人からは話しかけられた。疲れる》

《モテエピソードありがと。
僕なんて、話しかけられたのは阿部先輩くらいだよ。個人ロッカー確保の為に、部員各自がマイ将棋盤を買おうとしてたよ。高い物だし、止めておいた。
授業は聞いて分からないところはみんな、どうもしてません、困ってます》

《そりゃ、困るな。モテエピソードじゃなくて、被害者の訴えだから。こんな事なら、文化祭で小森の挑発に乗らなきゃよかった。》