僕は夏休みの学校で、花壇に腰掛け絵を描いていた。
炎天下ではあるが、この花壇だけは今、陰になっている。
この花壇にはもう1人、反対側で腰掛け本をよんでいる生徒がいる。
水やりは彼がいなくなってからにしよう。
そう思い絵を描き始めて20分。
どうしよう、こんなに暑いのにまだいるの?
水やりを始めたら移動してくれるかも、とりあえずこっち側だけでも始めよう、と蛇口を捻りに行く。
「あっあ〜」
ホースが暴れて、僕は焦って間抜けな声を出した。
蛇口を回すが止まらない。
逆?余計にホースは暴れて水を撒き散らす。
反対側の生徒に、これでもかと言うほど、水が掛かっている。
「ごめん、あ〜ごめん、ごめん」
怒られる!そう思った。
水を浴びた彼は、お手本の様な笑顔をみせた。
自分もビチョビチョになりながら、なんとか水を止め、彼に駆け寄り頭を下げる。
「本当にごめん」
彼の足元をみながら、言葉を待つ。
「気持ちいい〜俺は1組。君は」
僕は恐る恐る顔を上げ、
「5組。本当にごめん」
もう一度頭を下げる。
「別にいいよ、どうせこの天気なら、すぐ乾くし」
と犬の様に頭を振る。
そして眩しそうに空を見上げた。
僕も見上げる。
真夏の太陽より、さっきの彼の笑顔は眩しかったな。
そう思いながら、彼の横顔をみた。
「緑化委員?」
彼に見られ目を逸らす。
完全に、みとれていた!
そのことがバレないように、ホースを触りながら、
「うん、だから夏休みも水やりに」
と答えた。
「そっか〜大変?」
そう聞きながら、彼は蛇口の方に歩き出す。
「水やりもそうだけど、草引きが地味に大変かな」
僕はそう答えながら、ホースを巻き取り、片付け始める。
「うわぁ~」
いきなりホースから水が飛び出した、
僕はまた間抜けな声を出した。
僕はホースから出る水を下に向ける。
「はっはっはっ」
蛇口を持ちながら、彼が笑っている。
水が滴る彼を綺麗だと、思った。
僕は、水が出続けているホースの口を彼に向けた。
走って逃げる彼を追いかける。こんな映画のワンシーンの様な時間が僕なんかに巡ってくるなんて。
ずぶ濡れなのに2人の笑顔が止まらない。
2人で、炎天下の芝生で日光浴
「日焼け半端なさそう」
という彼。
「気にしてるの?」
「してない」
と言う彼と視線が合って笑い合う。
「名前は?」
「川本しずみ」
「しずみ…」
「名前と見た目がリンクしてるでしょ、沈んでるって感じで」
「そんなことないよ、しずみ。いい名前じゃん。俺なんて太郎だよ」
「太郎、いい名前だよ」
彼は仰向けだった体を僕の方に倒し、
「思ってないだろう」
と言いながら、腰をくすぐってきた。
「マジでヤバい、ムリムリ〜」
ゴロゴロ転がりながら逃げた。そして息を切らしながら、
「太郎くん、呼びやすくていい名前だよ」
と立ち上がりながら彼に伝えた。
彼は、座ったまま、僕を見上げて
「しずみもな」
と微笑んだ。
その日から、ハッキリとは約束してなくても、僕の担当の日は太郎君も花壇に来てくれた。
水を掛け合ったり、何気ない話をして、別れる。
1時間も無い、だけどその時間が僕には、とても輝いている大切で幸せな時間だった。
「水やり、今日で最後?」
夏休みがもうすぐ終わる。僕らはいつもの花壇に並んで腰掛けていた。
「しずみ?聞いてる?」
「あっ、うん、最後」
寂しい気持ちで、今の楽しい気持ちが、かき消されるのが悲しい
「しずみ?どうした?」
太郎君が、俯く僕の顔をのぞき込む。
僕は笑顔を作って、
「何でもない…何でもないよ、それより、何読んでるの?」
と話を変えた。太郎君は本の表紙をこちらに向けながら
「ユーグリッドの原論」
と言った。僕は頭の?をそのまま聞く。
「ざっくり言うと、何系の本?」
「ざっくり言うと算数系の本」
「あっバカだなと思ったでしょ」
「思ったよ、だけどバカが悪いとは思わない」
と、いつもの様に、歯に衣着せぬ言葉を無邪気に放つ。
嘘の無い太郎君の言葉が、好きだ
「しずみは?水やりする前、何か書いてたじゃん、それは、何系?」
「…う〜ん、絵だけど、美術系とは言えないかな。ただの落書き」
「貸して」
と、花壇に置いていたノートをパラパラとめくる。
僕は、誰かに絵を見られるのが初めてで、恥ずかしくて、俯き、足をぶらぶらさせた。
「上手いじゃん」
「ありがと。でも、上手くは無いよ。全然ダメ」
「ふ〜ん、だから美術部入らなかったの?自信無くて」
「うん、入学して部活か委員会、どちらかは入らないといけない、って知って。焦った。僕なんて美術部は無理だし、だからといって他に出来る事もなくて、困って、とりあえず、これ」
と花壇をみた
「別に出来る事じゃなくてもいいんだよ、部活は。他に興味のあることは?」
「無いかなぁ、絵だけ。だけどその絵も上手じゃない」
「上手じゃなくてもいいんだよ、好きなだけで十分なんだよ。しずみは理想が高いんだな。」
「そんなことないよ、僕なんて。」
「また言った。"僕なんて"って。理想が高すぎて、自分が小さく見えてるんだな。」
太郎君は僕の目をみて、
「だから、本当のしずみは、"僕なんて"って言葉が、似合うヤツじゃない」
僕は耳が熱くなるのを感じた。
恥ずかしさを隠すように、俯いて
「ありがと」
と言葉を絞り出した。太郎君は
「それに、俺がこれを描こうと思うだけで、肩こるもん」と肩を回した。
「僕もこるよ」
「そう?だけど描くんでしょ?」
と尋ねる太郎君に、僕は頷く
「それが好きってことじゃん、俺は肩がコリだしたら、速攻で、読むの止めるもん」
とユーグリッドの原論をみせた。
僕は、自分がいつもするストレッチを太郎君に教えた。
「手首を回すと肩コリにも効くんだよ」
「こう?」
と太郎君は、手首を回しながら、
「ありがとう、しずみ。…俺ら友達だな」
炎天下ではあるが、この花壇だけは今、陰になっている。
この花壇にはもう1人、反対側で腰掛け本をよんでいる生徒がいる。
水やりは彼がいなくなってからにしよう。
そう思い絵を描き始めて20分。
どうしよう、こんなに暑いのにまだいるの?
水やりを始めたら移動してくれるかも、とりあえずこっち側だけでも始めよう、と蛇口を捻りに行く。
「あっあ〜」
ホースが暴れて、僕は焦って間抜けな声を出した。
蛇口を回すが止まらない。
逆?余計にホースは暴れて水を撒き散らす。
反対側の生徒に、これでもかと言うほど、水が掛かっている。
「ごめん、あ〜ごめん、ごめん」
怒られる!そう思った。
水を浴びた彼は、お手本の様な笑顔をみせた。
自分もビチョビチョになりながら、なんとか水を止め、彼に駆け寄り頭を下げる。
「本当にごめん」
彼の足元をみながら、言葉を待つ。
「気持ちいい〜俺は1組。君は」
僕は恐る恐る顔を上げ、
「5組。本当にごめん」
もう一度頭を下げる。
「別にいいよ、どうせこの天気なら、すぐ乾くし」
と犬の様に頭を振る。
そして眩しそうに空を見上げた。
僕も見上げる。
真夏の太陽より、さっきの彼の笑顔は眩しかったな。
そう思いながら、彼の横顔をみた。
「緑化委員?」
彼に見られ目を逸らす。
完全に、みとれていた!
そのことがバレないように、ホースを触りながら、
「うん、だから夏休みも水やりに」
と答えた。
「そっか〜大変?」
そう聞きながら、彼は蛇口の方に歩き出す。
「水やりもそうだけど、草引きが地味に大変かな」
僕はそう答えながら、ホースを巻き取り、片付け始める。
「うわぁ~」
いきなりホースから水が飛び出した、
僕はまた間抜けな声を出した。
僕はホースから出る水を下に向ける。
「はっはっはっ」
蛇口を持ちながら、彼が笑っている。
水が滴る彼を綺麗だと、思った。
僕は、水が出続けているホースの口を彼に向けた。
走って逃げる彼を追いかける。こんな映画のワンシーンの様な時間が僕なんかに巡ってくるなんて。
ずぶ濡れなのに2人の笑顔が止まらない。
2人で、炎天下の芝生で日光浴
「日焼け半端なさそう」
という彼。
「気にしてるの?」
「してない」
と言う彼と視線が合って笑い合う。
「名前は?」
「川本しずみ」
「しずみ…」
「名前と見た目がリンクしてるでしょ、沈んでるって感じで」
「そんなことないよ、しずみ。いい名前じゃん。俺なんて太郎だよ」
「太郎、いい名前だよ」
彼は仰向けだった体を僕の方に倒し、
「思ってないだろう」
と言いながら、腰をくすぐってきた。
「マジでヤバい、ムリムリ〜」
ゴロゴロ転がりながら逃げた。そして息を切らしながら、
「太郎くん、呼びやすくていい名前だよ」
と立ち上がりながら彼に伝えた。
彼は、座ったまま、僕を見上げて
「しずみもな」
と微笑んだ。
その日から、ハッキリとは約束してなくても、僕の担当の日は太郎君も花壇に来てくれた。
水を掛け合ったり、何気ない話をして、別れる。
1時間も無い、だけどその時間が僕には、とても輝いている大切で幸せな時間だった。
「水やり、今日で最後?」
夏休みがもうすぐ終わる。僕らはいつもの花壇に並んで腰掛けていた。
「しずみ?聞いてる?」
「あっ、うん、最後」
寂しい気持ちで、今の楽しい気持ちが、かき消されるのが悲しい
「しずみ?どうした?」
太郎君が、俯く僕の顔をのぞき込む。
僕は笑顔を作って、
「何でもない…何でもないよ、それより、何読んでるの?」
と話を変えた。太郎君は本の表紙をこちらに向けながら
「ユーグリッドの原論」
と言った。僕は頭の?をそのまま聞く。
「ざっくり言うと、何系の本?」
「ざっくり言うと算数系の本」
「あっバカだなと思ったでしょ」
「思ったよ、だけどバカが悪いとは思わない」
と、いつもの様に、歯に衣着せぬ言葉を無邪気に放つ。
嘘の無い太郎君の言葉が、好きだ
「しずみは?水やりする前、何か書いてたじゃん、それは、何系?」
「…う〜ん、絵だけど、美術系とは言えないかな。ただの落書き」
「貸して」
と、花壇に置いていたノートをパラパラとめくる。
僕は、誰かに絵を見られるのが初めてで、恥ずかしくて、俯き、足をぶらぶらさせた。
「上手いじゃん」
「ありがと。でも、上手くは無いよ。全然ダメ」
「ふ〜ん、だから美術部入らなかったの?自信無くて」
「うん、入学して部活か委員会、どちらかは入らないといけない、って知って。焦った。僕なんて美術部は無理だし、だからといって他に出来る事もなくて、困って、とりあえず、これ」
と花壇をみた
「別に出来る事じゃなくてもいいんだよ、部活は。他に興味のあることは?」
「無いかなぁ、絵だけ。だけどその絵も上手じゃない」
「上手じゃなくてもいいんだよ、好きなだけで十分なんだよ。しずみは理想が高いんだな。」
「そんなことないよ、僕なんて。」
「また言った。"僕なんて"って。理想が高すぎて、自分が小さく見えてるんだな。」
太郎君は僕の目をみて、
「だから、本当のしずみは、"僕なんて"って言葉が、似合うヤツじゃない」
僕は耳が熱くなるのを感じた。
恥ずかしさを隠すように、俯いて
「ありがと」
と言葉を絞り出した。太郎君は
「それに、俺がこれを描こうと思うだけで、肩こるもん」と肩を回した。
「僕もこるよ」
「そう?だけど描くんでしょ?」
と尋ねる太郎君に、僕は頷く
「それが好きってことじゃん、俺は肩がコリだしたら、速攻で、読むの止めるもん」
とユーグリッドの原論をみせた。
僕は、自分がいつもするストレッチを太郎君に教えた。
「手首を回すと肩コリにも効くんだよ」
「こう?」
と太郎君は、手首を回しながら、
「ありがとう、しずみ。…俺ら友達だな」
