あまつさえ、愛だとか。


湿った空気と梅雨空に紛れた太陽。
今の俺には、二階堂先輩がそんなふうに映ってしまっていて。



「だっ…だいじょうぶ、です」



一目その姿を捕らえ、また目をそらしてしまった。
上ずった声とあからさまなこの態度。
「しまった」と思ったときにはもう遅い。
その場にいた3人が、一斉に視線をこちらに向けた。
交わったところは一気に温度を上げていく。
それはまるでマグマのように、つま先から頭のてっぺんまでをどろりと上り詰めていくようで。



「ぁ…や、違っ…」


無言の重圧に耐えきれず、声を出したのが運の尽き。
全身の熱を自覚するとともに項垂れて、悟った。

…っもう、無理────




「こっち見て、“翔太”」



たった一声。
その一声で、俺は“翔太”になった。







「『雨、上がったな』」



(紫陽花に視線を落として、那月を背に呟く)



「『もうそろそろ梅雨も明けて、夏が来る。秋みたいに短いくせして、四季に入れてもらえないはぐれ者…それが梅雨。一種のイベントみたいなもんだよな』」



(翔太はその場で力なく笑い、目を瞑る)



『「…俺、嬉しかった。那月が俺を想ってくれてると知って、俺は、自分が思ってるより那月を想ってるって気づいたよ」』



『「っ!!なら───」』


『「っでも!…でも、怖いんだ。那月の気持ちも、梅雨みたいに過ぎ去っていったらって。それでまた、来年も誰かに同じ想いを向けてるかもしれないって考えたら…無性に怖くなった」』



(那月の告白の返事に対して迷う翔太は、自分の気持ちを打ち明ける)