「…俺ね、びっくりしたんだよ」
「びっくり、ですか…?」
未だに冷めぬ頬の熱を冷やしたくて、顔に手を当てながら聞き返す。
この人の言葉の紡ぎ方に未だ慣れなくて、何がびっくりしたんだよ、と思ってしまう。
平然とあんな真似をしておいて…驚いてるのはこっちだってこと、ちゃんとわかってんのかな。
ふつふつと湧いてきた思いを抱えながらも、先輩の言葉に耳を傾けた。
「あの時あの雨が降りしきる部室で、本当に、とても久しぶりに台詞を口にしたけど…あれはね、俺の思いと役がごっちゃになってて出てきたものだったから」
あの、とき。あの部室で…って…もしか、しなくても…“あの”台詞のこと…?
『でも…そんなところがたまらなく好きなんだ』
「っ…!!」
熱い、なんてものじゃない。
体の芯から燃え上がるように、全身を蝕んでいく。
口を開いては閉じてを繰り返すうちに、自然と視線が下がっていった。
「やっぱり芝居好きなんだなぁって…思えたんだよね。…昔の俺ごと、戸張くんが救いあげてくれた」
「好き」という言葉にぴくりと肩が跳ねる。
っ違う、今のは“芝居が”好きってだけで、俺のこととは一言も…いや、でも、思いと役とがごっちゃにって…。
…最悪、だ。
ちゃんと話を聞きたいのに、さっきの言葉が気になって仕方がない。
先輩の話よりも、自分の高鳴る鼓動の意味を求めることに気を取られるだなんて。


