だから、返したいと思う。
今すぐ全部というのは難しいけれど、それでもいい。
俺が今…いや、今まで先輩にもらったものを、少しずつ。
この人がなにをされたらいちばん嬉しいのかを、見つけたいと思う。
優しさはいつか、自分に返ってくる。
そんなことをよく言う人がいるけど、たしかにそうなんだ。
誰かにされて嬉しかったことを、またその誰かに返したいって思う気持ちのことだろ?
それならその“誰か”は…二階堂先輩がいい。
「…だから、少し、怖いんだ。戸張くんは俺を知りたいと思ってくれてるけれど、俺は君が思うほどの人間ではないし。…むしろその逆だから」
「…逆?そんなことありません!」
びくりと先輩の肩が跳ね、目を見開く。
自分でも驚くくらいには、大きな声が出た。
…俺、こんなに大きい声出せたんだ。
そんな気づきを身体の中に流し込んで、すぅ、と息を吸った。
「俺は、あなたの作品に憧れて、今ここにいる。二階堂先輩の綴る言葉に、映す景色に、どうしようもなく惹かれた。それは、紛れもない事実でしょう?」
いつになく言葉を選んだ。
二階堂先輩がどんな思いで「怖い」と、初めて本音に近いものを差し出してくれたのか。
俺は今日、それを知るために一歩踏み込んだ。
先輩のことを知りたいという、その一心だけだったのに。
…っ、なんでだろう?おかしいな。


